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顧客の高い要求に応え、高精度アルミ鋳物に特化

代表取締役 三島 岳人

記事更新日.2015.06

株式会社 マルサン木型製作所  http://www.marusank.com/

■問い合せ先
株式会社 マルサン木型製作所
〒447-0041 愛知県碧南市緑町1-111
Tel  0566-41-3381

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従来の木型メーカーの枠をはるかに超えた「アルミ鋳造品造形業」

鋳造は、金属の溶湯を砂型等に流し込み、冷やすことで目的の形状に固める加工方法である。「木型」はこの砂型を作る際に使用される型である。金属が固まる際に収縮することから、少し大きめに木型を作る。したがって、鋳造による造形物は少し大きめとなり、オーダーどおりの寸法にするためには、後工程の切削加工は不可欠となる。造形物がピタリのサイズになるような木型を作ることができれば、切削工程の大幅な削減が可能となる。

積み上げたノウハウにより「ピタリサイズの造形物」ができる木型を製造し、自らも公差±0.2ミリの精度や1.5ミリ肉厚の高精度鋳物を製造する、従来の木型メーカーの枠をはるかに超えた事業展開を行うのが株式会社マルサン木型製作所である。


常に先取り、他社と差別化

1965年、先代社長の三島明氏がマルサン木型製作所を創業、当時は高度成長下にあり、自動車も一般に浸透し始めた頃。鋳造業界は砂型やそれを作るのに必要な木型の需要も旺盛であった。業界の動向にも敏感で、1990年には3次元のCAD/CAMやマシニングセンターを導入。木型業界内ではかなり速い導入で、大きな差別化要因となった。エンジンやミッション系といった高度な技術が求められる仕事を手がけるようになり、某自動車メーカーのモータースポーツ部の認定工場にまでなる。認定を受けた企業は日本でたった2社であることからも当社の木型製作技術水準は当時からすでに高く評価されていた。

しかし、時代とともにCAD/CAMを導入する同業者が増え、その優位性を失いつつあった。
「だんだんとジリ貧になりつつあった状況でした。そこで『型は製品を作るための道具だ。』という発想で、製品作りを手がけることになりました」と現社長の三島岳人氏。
といっても、当初は鋳物製造業としてではなく、納入した型で想定どおりの鋳造品ができるかどうかを確認することで品質保証を図り差別化しようと考えたのである。

「当時、ヤマハ向けに、7〜10程に分かれる比較的複雑な形状の鋳造用木型を作っていました。ある時、できた砂型がかみ合わないという問い合わせをいただきました。結果的には木型の問題ではなかったのですが、場所も静岡の磐田で離れていましたし、今後、問題があるたびに現場へ行くということになると大変だ、それなら、当社で砂型をとってすべてかみ合うことを確認してから納品しよう、ということになりました。こうした保証をする木型メーカーはありませんでしたので、大きな差別化になりました。その後、社内では『せっかく砂型を作るのであれば、サンプルを鋳造し、バリの出方など研究し、木型作りに反映しよう』ということになり、取引先の親しい鋳造業者から、イロハを教えていただき、サンプル作りが始まりました。すると今度は『そこまでできるのなら、木型を納品するのではなく、鋳造品として納品してくれないか』というお話をいただき、本格的にアルミ鋳造事業を始めることになりました。」と当時を振り返る。



縮み代を綿密に検証、ピタリサイズの木型で鋳造後の切削加工を大幅に削減

一般的には木型は鋳造後の収縮を考え、9/1000〜12/1000程度大きく作る。自社でサンプル鋳造をする過程で、どのような形状がどれほどちぢむのか、という検証を徹底的に行い、形状に合わせ、縮み代を「この部分は9/1000、あの部分は10/1000の縮み代」と、製品から逆算した木型を作る技術を確立する。さらに、収縮率を下げて安定させるために鋳型に使う砂を工夫することで、鋳物造形時に最初から寸法精度の高い鋳造をすることに成功。ダイカストと同様の高精度鋳造技術を確立することで、鋳造後の切削加工を大幅削減、併せて鋳肌の面粗度も向上するなど、コスト面にも寄与している。



つまり、どうしたら「より精密な鋳造ができる木型を作るか」という木型メーカーの発想で鋳造をすることで、木型を作る技術が向上し、その結果、高精度な鋳造が可能になったのである。




高く評価される製造技術

現在では、本来の木型構想や鋳造方案の構想、木型製造に始まり、鋳造、その後の熱処理、三次元計測器による計測・品質保証までという一貫生産体制を持ち、公差±0.2ミリの精度や1.5ミリ肉厚など鋳型でダイカスト同等品を作る高精度造形技術を併せ持つ、従来の木型メーカーの枠をはるかに超えた「アルミ鋳造品造形業」となっている。

「鋳型でダイカスト同等品を作る高精度造形技術」という強みから、「高精度が必要だが、ダイカストで金型を作るとコスト高になる」という多品種少量・高精度が要求される自動車の試作部品製造がオーダーの中心である。

「主な製品は自動車の試作部品ですが、時には特殊な限定モデル車といった少量の量産部品オーダーを受けることもあります。共に少量多品種で精度を要することの他、機密性が高い製品群で、開発者は多くの人間の目に触れるのを恐れます。その点、当社は精度の高い鋳造ができることもさることながら、造形物の図面データをいただけば木型の設計に始まり、製造、測定まで社内で行うことができますので機密保持という点でも高く評価していただいているようです」。

こうした技術力は、トヨタ中央研究所からの推薦で「ダイカスト同等の鋳造技術の確立」について永井科学技術財団賞「技術賞」を受賞、また、ミッション、エンジン部品等の大手メーカーからは「最優秀試作賞」を受賞するなどユーザーから高い評価を受けている。


また、製造技術だけでなく、鋳造業としてはハイレベルに達している管理技術の向上にも余念がない。「見える化」をした上でどのようにPDCAサイクルに活用していくかということについて中部産業連盟から管理技術についてのアドバイスを受け、社内に定着させた結果「VM(ビジュアル・マネジメント)推進賞」を受賞するなど管理技術の向上に努めている。


今年の年末にはベトナム工場での生産開始を予定しており、新たな事業展開を視野に入れている。

「以前からベトナムから研修生を受け入れていた経緯があり、その卒業生に声を掛け現地工場の立ち上げをすることができました。これから成長する現地ニーズの取り込みを狙うということももちろんありますが、国内のお取引先にも、例えば『納期がここまでで可能であればベトナム工場を活用することで、これだけのコストでできますよ』など様々な提案が可能になります。グループ全体の生産力を活用して当社の提案力強化を図っていきたいと考えています」とこれからの展開を語る三島社長である。




取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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