企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業
経営戦略レポート
海外支援
中小企業支援等レポート
技術の広場
あいち技術ナビ
あいち産業振興機構中小企業支援
海外駐在員便り
時代の目
特集(トピックス)
企業ルポ
翔 魅力ある愛知の中小企業
あいちの製品ProductsAppeal
経営革新に挑戦する中小企業成功事例集
創業企業に聞く
支援企業に聞く
お店訪問 繁盛の秘訣
科学技術は今
ホームページ奮闘記
スペース
スペース
経営相談Q&A
労務管理Q&A
資金調達Q&A
組織活性化Q&A
環境対策Q&A
省エネQ&A
経営革新Q&A
窓口相談Q&A
IT活用マニュアル
IT特集
どんどん使ってみようWindows Vista
IT管理者お助けマニュアル
ネットワークお助けマニュアル
セキュリティお助けマニュアル
お助けBOX
補助金助成金一覧
施策ガイド
「ネットあいち産業情報」更新をお知らせします!
  トップ > 企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業 > タケダ歯車工業株式会社
歯車の「困った」を解決し「使用感の良さ」で勝負

代表取締役 武田 充弘

記事更新日.2018.04

タケダ歯車工業株式会社

■問い合せ先
タケダ歯車工業株式会社
〒454-0921  名古屋市中川区中郷五丁目45番地

印刷用ページ

歯車は、いくつもかみ合い回転することで、減速、加速、回転方向の変更など動力を多様に伝達する部品である。したがって材料強度、歪みのない材料取り、歯切りの正確性、歯車研削の精度、測定技術の確かさ、どれが欠けても思うように力が伝わらない。厳しい加工精度が要求されるのは当然であるが、精度通り加工しても発生する回転音の解析・解消などに悩まされることもしばしばである。こうした「歯車の『困った』を解決」するのが、タケダ歯車工業株式会社である。


工作機の重要部品、ウォームギアに強み

現社長の武田充弘氏の父である創業者の武田治利氏は、数学の計算が得意で1960年に「タケダ歯車製作所」を創業。食品機械の歯車の賃加工を手始めに、工作機械向けの部品加工へと事業を拡大し、1972年には地元の大手企業から直接オーダーを受注するまでになった。

現在は、一般的な「平歯車」や、歯のカット面を斜めにすることで歯車同士の接触面積を増やし強い力を伝えられる「はすば歯車」、速い軸回転を遅い円運動に変換する「ウォームギア」の他、オーダーメイドの特殊歯車などを1個〜200個の”多品種微量生産”している。



中でも当社が得意とするのはウォームギア。身近には、オルゴールのゼンマイの高速軸回転をゆっくりとした円筒状の鍵盤の回転に変換するのに使用されることで知られる。工作機械では、位置決めをする重要機構部分に使用され、非常に高い精度が要求される。

「ウォームギアは、市場全体が小さいことや加工が特殊であることから、専用機で加工している企業は少なく、当社の強みの一つになっています」と武田社長。


研磨加工の精度を切削加工で実現するスカイビング加工技術を確立

このような工作機械向けの歯車にはミクロン単位の加工が要求される。日本人の髪の毛が80μ程度とされることから、その10分の1以上の精度である。

「歯車にミクロン単位の精度が要求されるということは、それを研磨する砥石も同等の精度が要求されます。これを手作業で形状加工していますが、経験がモノを言う仕事です。以前はマニュアルも作成したのですが、最後のところは感覚でしか伝えられないものがあり、習得には10年以上かかってしまいます。また、数個単位の小ロットの場合ですと、砥石を作る時間やコストは受注面での大きな課題となります」。そこで、切削加工でも研磨並みの精度を出す『スカイビング加工』を確立している。

スカイビング加工とは、今から100年ほど前に理論確立した歯車を圧倒的に短時間で切削加工する工法であるが、加工マシンの剛性と加工ツールの耐摩耗性などが必要であったことから近年ようやく実現化され始め、注目を浴びている加工法である。

「切削加工のメリットは加工時間の短縮だけでなく、焼入れ後に固くなった状態でも加工が可能となることです。焼入れ後の研磨は研磨工具の摩耗が激しく、研磨時間もコストもかかっていましたが、切削のみでミクロン単位(1/1000ミリ単位)の加工精度が実現することにより、素材の高硬度化にも対応ができるようになりました」。セッティング技術が非常に重要なノウハウとなるため、マシン性能にたよらない他社への優位性を確保することができる。


歯車精度を「見える化」し、展示会で反響

現在は工作機械、ロボット、自動車部品生産用専用機など、産業設備向けの高精度歯車向けが主力であるが、1割程度は新規顧客からの受注が舞い込む。

「販路開拓を積極的に行っており、HP経由の相談・受注も多く、また展示会での成約もたびたびあります。あいち産業振興機構での『WEBによる販路開拓セミナー』や『展活セミナー』などを受講した成果がでてきています」。

展示会では、当社の加工精度や技術の高さを「見える化」するために「音のしない歯車模型」をデモ用に作成し、来場者の高い関心をよんでいる。それにより他の展示物にも関心が高まり、「これができるのなら、うちのこういう部品が作れるのでは」と、オファーにつながることもある。



精度だけではない「使用感の良さ」に自身

歯車が難しいのは「加工精度」という歯車単体だけの問題ではなく、組み合わせることで始めて機能するということである。

例えば、必要な回転比率を2:1(元の歯車が2回転すると組み合う歯車が1回転する)だとすると、それぞれの歯車の円周長は1:2となる。歯車が組み合って回るためにはそれぞれの歯の山と谷の大きさが同じで、かつ噛み合う形状でなければならない。当然、それぞれの円周長は噛み合う歯車の大きさの整数倍とならなければならない(なっていなければ大きさの揃わない歯が存在することになる)。

また、回転比率を維持しながら設計上の制約から歯車間の中心距離を変更する場合には、かみ合わせを調整するために歯の形状を変える必要が出てくるなど、制約条件下の歯型設計は非常に難しく、異音の発生や摩耗につながる。

「こうした原因の解析や解決するため、歯型誤差1μまでの測定が可能な検査機器や専用の歯型シミュレーションソフトを導入し、理想的な歯型形状の実現のための解析や提案を行っています。不具合がある場合はもちろんですが、歯車では設計面や加工面でも問題がないのに何故か音が発生する、ということすらあります。身近な案件から医療機器の案件まで、内容は多岐にわたっています。加工精度の高さと歯車ノウハウの蓄積で、歯車の『困った』を解決し『使用感の良さ』を提供することで、先代からの経営理念である『人の役に立つもの作り』を実現していきたいと考えています」。



当社の経営理念「人の役に立つもの作り」の実現に向け「社員の幸せを考える会社」を目指している。

「当社はまだ『ワークライフバランス』という言葉もない、平成の始まり頃から当時社長であった父が職場環境の改善に努めていました。『社員の幸せを考える企業に』という経営理念を掲げ、フレックスタイムを早くから導入するなど働きやすい職場づくりに腐心していたようです」。

高い定着率で技術は確実に受け継がれ、磨かれることで、『精度』だけでなく『使用感の良さ』という独自の強みができている。

「最近では業界でも超大手の企業様からのオーダーをいただく機会も増えてきました。新製品の試作部門様からであったり、従来の調達先が廃業見込みとなり『職人ワザ』がなくなってしまうので何とかならないか、という案件であったり様々です。技術を磨きながら、今後はEV(電気自動車)などの分野へも挑戦していきたいと考えています」。

 

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
あなたのご意見をお聞かせください
この記事を友人や同僚に紹介したいと思う
参考になった
参考にならなかった
 
Aichi Industry Promotion Organization
財団法人あいち産業振興機構