資材管理面では、原材料がどれくらいの滞留で劣化をするかを予め検討し、生産内示などの生産見込みを勘案したうえで調達しなければならないし、先入れ先出しの徹底を図る必要もある。さらに、材料ロットが変わるたびに成形物の計測を受け品質に差異がないことの評価を受けることが必要となる。
「少量作ること自体は難しいことではありません。しかし細かい材料納入や在庫管理、小回りが利くマシンを揃え最大限稼働させるノウハウや段取り時間の管理など独自の管理手法が必要で、量産が主力の大企業が当社のような多品種少量生産を始めようとしても意外と難しいのではないでしょうか」と大藪建治社長。
量産型の部品生産は、日々工程見直しなどで秒単位の工程短縮や数十銭のコストダウンに対応しながら1個あたり数円・数十円の利益を確保するビジネスである。一方、こうした少量・単発の仕事は安定的ではないものの1案件あたり数万円の利益になる案件も多い。
「経営的にどちらの仕事をすることが正解なのかはわかりません。しかし、少なくとも資本力も設備もある大手企業が得意な分野で競合しても勝てないことはわかっています。したがって、大手企業が不得手とする多品種少量生産で、付加価値が確保できる仕事の進め方や顧客獲得を目指すことが当社のような小さい会社にとって存在意義があるのではないでしょうか。そもそも、ものづくりとは、困っている人に狩りや農具の道具を作ったことが始まりだったと考えています。つまりものづくり企業の存在価値は『困った人にものづくりで貢献できること』だと。であれば、困っている人たちに自社の特徴でもある多品種少量生産で貢献することこそが当社の存在意義となります。実際、自分たちを必要としてくれる人たちはたくさんあることがわかってきています。他社は量を追ってくれているから、こうした多品種少量の領域を自分たちの独壇場にしていければと期待しています」。
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