では、多能工の育成には時間がかかるという課題は、どう解決しているのか。
育成以前に採用に苦しむ昨今であるが、数年前から始めた新人の採用活動はご多分に漏れず当初空振り続きだった。しかし、合同説明会などに参加することで他社の条件より見劣りすることを知ることで、『世間並み』の会社にしようとノー残業デーを設けたり休日を増やしたりするなど働きやすい環境づくりに努めた結果、採用を実現させた。
「昨春現場に初めて女性が入社したのですが、彼女は1年足らずで0.01mm精度が出せるようになっています。彼女の入社の決め手は『現場の雰囲気が良かった』でした。昔は職人気質の人が多く『自分の仕事には専念するが他の人のことは干渉しない』という雰囲気でしたが、今はベテランも教える風土になって新人の成長に一役も二役も買ってくれています。彼女の場合、高精度加工だけでなく3Dモデルを社内イチ速く作る技術者となり、一年目にして貴重な戦力になってくれています。今春もさらに一人女性が入社しますのでとても楽しみです」。
個人レベルの技術の向上に加え、品質や生産性を向上させる全社的な取り組みも行っている。
「以前は加工技術を過信しすぎ検査体制が充分でなく、コンスタントに月4〜5件の不良があっても、作り直しては再出荷を繰り返しているだけでした。しかし2010年から品質管理会議を開き、工場内で発生した不良の全てについて原因を検証し共有するようにしています。こうして現在では年に1件あるかないかというレベルにまでなりました。また、昨年の7月よりIoTを活用した効率化向上の取り組みを始め、主要な設備の稼働率を見える化できる装置を導入、稼働状況を把握できるようにしました。いざ見える化をしてみると自分で考えていたよりも遥かに稼働率は悪く、これをきっかけとして工程の見直しに挑戦中です。内製化率100%ですので、多くの条件をコントロールできることから高い効果をあげられるのではないかと試行錯誤中です」。
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