株式会社MRTは、現社長の村田直喜氏の父親である村田明朗氏が名古屋市中川区で個人事業として1970年に創業したのが始まり。当初は前職の関係の木工機械部品を製造していたが、加工技術が評価され、自動車ライン用専用機メーカーからの特殊部品の受注が増えていく。
村田社長が入社したのは1995年。
「機械関連の部品製造を行う企業でアルミ加工を担当していました。就職してから3年ほど経った頃、父から帰ってこないかと言われ、いずれ後を継ぐのであればと考え入社しました。すると、学んできた技術を活かせるようにと自分専用のマシニングセンターを用意してくれていました。そこで、自分が得意としているアルミ素材の仕事を受注し始めることになります」と振り返る村田社長。
しかし、その直後バブル経済後の不景気に突入、仕事が急激に減少していく。
「そんな時、アルミ材料の仕入先からお声がけをいただき、車椅子の部品加工の仕事を始めました。最初は単なるアルミ加工だけでしたが、次第に社内の旋盤加工機などを活用した後工程の仕事へ幅広く対応することで受注量を増やし、程なく鉄素材の受注とアルミ素材の受注はほぼ同額となるまでになりました」。
アルミ加工の受注が増えるにつれ、対応するための独自の加工技術も積み重なる。
「アルミ加工は自分だけの工程でしたので、いろいろなチャレンジをすることができました。チャレンジがうまくいかなくとも、夜中や土日までかけて納期に間に合わせればよく、自分のことだけを考えて仕事が回すことができたので、技術を磨くのには恵まれた環境でした。増えゆく受注に対して、どうすれば品質を保ったまま加工時間を短くできるのかというタイムトライアルのようなこともしていました。鉄の加工は多くのライバルがいますが、アルミ専業はライバルもまだまだ少なく、付加価値も高かったので夢中になって仕事をしていました」。
成果が出始めた頃には、品質とコストのバランスがよいと評判となり、さらにアルミ加工の受注量は増加した。現在では売上の90%が、チップマウンター向けをはじめとする工作機械や航空機向けのアルミ部品である。
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