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「技・時・値」の三つが光る三光製作所を目指して

代表取締役社長 川合 隆介

記事更新日.2020.8

株式会社 三光製作所

■問い合せ先
株式会社 三光製作所
〒448-0847 刈谷市宝町3丁目4番地5

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 製造業の設備投資のきっかけは、老朽化や技術革新による設備更新、新たな受注に対応するための追加投資、必要な加工が得意なメーカーへの乗り換えなど様々。そんな中、80年代半ばから主要設備のマシニングセンター機を同一機種で統一し、刃具・治具・加工用プログラムの共通化や特殊刃具の内製化、自社開発の生産管理システムの導入などにより、顧客からの多種少量発注や緊急設計変更等、さまざまな要求に即応できる仕組みを構築したのが刈谷市の株式会社三光製作所である。
 戦略的設備投資を実施した結果、技術面・納期面・価格面のバランスを取ることに成功、同業他社との差別化を実現した。今では、大手自動車部品メーカーのアルミニウム製エンジン回りの機関部品を中心に、カバーオイルポンプ、ボディウォーターポンプ、カバーシリンダーヘッドなどの試作部品加工を引き受けている。



易きに流れるのを嫌う創業者、着実に業績拡大

 1957年、創業者の川合勝義氏は個人事業として鉄工業を始める。
 「先代は学校を出てから自動車部品工場に就職しましたが、叔父が鉄工所を経営していることもあってか独立志向が非常に強かったようです。入社1年目から積極的に先輩に教えを乞いながら技術を学んだようです。1年で独立をしようとしたようですが『気持ちはわかるが、さすがに1年では技術は身につかない』と諭され断念したものの結局2年で退社、九州から来た集団就職の学生2名を雇用し鉄工所を創業しました。当時はネジやボルトをはじめとして小さな部品を作っていたそうです」と当時のことを話す川合隆介社長。
  日本の高度成長の後押しもあり業績は伸び、1966年には現在地に工場を新設、設備投資も積極的に行い、旋盤やフライス機の他、独自の加工ができるようにと当時の価格で自由が丘400坪の土地が買える額の投資をして精密な穴あけができるジグボーラーも購入した。
 1970年には株式会社への改組や複数の工場開設をするなど業容を拡げる一方で「経営の舵取り」ということも強く意識していた。
 1972年に愛知県の中小企業合理化優良企業表彰を受けており、これは受注量が増えるに任せて設備投資をする「膨張」ではなく、収益管理なども見据えた「拡大」路線を着実に歩んでいる姿である。
 1985年頃のマシニングセンター導入に際しても「この設備を導入してどのように経営を展開していくか」を意識し、NC旋盤とマシニングセンターという選択肢から扱いがより難しいマシニングセンターを選択した。
 「先代は厳しい人で『同じ結果が得られるなら難しい方を選べ。簡単にできるのであれば、誰にでもできる。難しいことをやる方が社会の役に立つ』と易き方に流れるのを嫌う人でした」。誰にでもできるのではせっかく設備投資をしても他社との差別化にならない、そんな思いがにじむ。



マシニングセンターを同一メーカーで統一

 その後のマシニングセンターの追加導入では驚きの策に出る。マシニングを全て同一メーカーのマシンで統一したのである。
「メーカーを統一するメリットは、加工に必要な治具や刃具、加工プログラムの共通化を図ることができ、1台を覚えるだけで全てに対応できます。共通化によるコストメリットと同時に品質や技術の安定化にもつながります。機種や工具などを統一することにより、現場の製造工程で注意することや覚えることを減らすことができ、ものづくりに専念することにより、その分安定した品質を生みやすくなるのです。また、複数台を組み合わせることで段取り時間などを減らす事ができ納期短縮ともなります。こうした取り組みが評価され、この時期から大手エンジンメーカーからの試作加工が増えていきました。マシンを揃えるということは、加工物の大きさや加工方法を特化していくということでビジネスの的を絞るということです。また、あの仕事もしたい、この仕事もしたいとお客さんに合わせていくといろいろな加工が必要になり、複数のマシンメーカーを使う必要がでてきます。まずは『これから求められるであろうという姿』があり、その姿を実現するためのツールとしての設備投資だと考えています」と現社長の川合隆介氏の代になってもこの投資方針は受け継がれている。



刃具を内製化、あらゆる加工ニーズに対応

 しかし、自分たちのビジネスフィールドを決め設備投資をしても、取引先の発注ニーズにピタリと合うとは限らない。メーカーを統一することで対応できる加工の幅が硬直化してしまうことも考えられる。そこで顧客の多様な加工ニーズに迅速に対応するため、当社では刃具の製造を内製化している。今まで作った刃具の数はゆうに1万本を超える。
「機械は買ってからが勝負です。性能由来だけの差別化ではいつか追いつかれる。その性能をどう活かすかということが問題。当社のビジネスは加工の大半が試作ですので、複雑形状のオーダーが多くなります。時には、1つの試作加工には100本の刃具が必要になる場合もあり、特殊な形状の加工も必要となり既存の刃具では対応できない場合もでてきます。そのために、専用の刃具を自社内で作る体制も整えています。以前は工場の温度に左右されていたこともあり、同じ径でも夏加工用と冬加工用の2つを用意することもありました。夏、暑い現場で穴を開けても計測の標準温度20度で測定すると縮んでしまいます。一般にはリーマと呼ばれる工具で穴を拡大するのですが、できあがりの穴の品質ではやはり刃具で開けたものにはかないません。このようにお客様のかゆいところに手が届く加工のために刃具の内製化を続けた結果、これほどの刃具の数となりました。こうしたことができたのもマシニングセンターを1メーカーに統一していたためです。もし複数メーカーを使用していた場合、そのメーカー分だけ刃具が2倍・3倍と必要になっていた可能性もあります。特殊刃具はいきなり作れませんし、外注に出しても時間がかかります。社内固有の技術として日頃から刃具の講習会にも参加し技術を磨き、ほとんどの加工ニーズに対応できるようにすることで、マシンメーカーを統一したことが活き、他社との大きな差別化に繋がっているのです」。




社会に価値のあるものづくりを

 こうした取り組みにより取引先からの信頼も厚くなり、エンジン試作の多くを任されることになる中、2012年に創業者は急死。その後を受け、現社長の川合隆介氏が社長に就任する。 現社長の手帳には、いつも一片の紙が入っている。そこに先代の自筆で書かれているのは『自作完結価値労売』の文字。生前、現社長が父親である先代に何か手帳に書いて欲しいいと頼んで得た言葉である。
「『責任あるものづくりをし、社会にとって価値ある働きをする』という意味だと解釈しています。では、当社ならでは提供できる価値は何か、と考えた時に『技(技術力)・時(納期)・値(価格)』のバランスの良さの中で『無理とは言わない、お客様の期待に応える』ことではないかと思っています」。

<技・時・値のバランスとは>

 「技術力や納期、価格について、それぞれの部分では競合となる企業はたくさんあります。技術力でいえば微細な加工ができるような設備と加工技術を持つ企業もあるかもしれない。そういう企業は精密加工技術を突出させることで差別化を図っていることになります。当社は主力設備のマシニングセンターを統一する戦略、それは機種や工具を揃えることでコストメリットと安定した品質を実現するバランスを意識したものですし、特殊刃具の内製化は納期の短縮と独自の加工技術の実現を狙ったものです。こうした取り組みを長年継続してきました。聞伝えになりますが、継続的に当社へ発注していただいていたオーダーについて、他社だとどういう見積もりになるか複数社に打診されたことがあったそうです。すると、ある会社は納期的に無理、別の会社はかなりのコスト高、他の会社からは『うちではそもそも無理』との回答があり、取引先からそのバランスの良さを再認識いただいたようです。このように、3つのバランスの良さを取ることで当社は成長してきましたし、今後もこの点でより大きな差別化をし、選ばれる企業になっていきたいと考えています。ただ不得手なオーダーをいただく場合にはこのバランスが崩れがちになります。試作加工は時代の先端であるケースも多く、バランスの修正力に磨きをかけることが今後の大きな課題だと考えています。技・時・値、3つのバランスを光らせることができる、『三光製作所』の社名に恥じない存在でありたいと思っています。」

<無理とは言わずお客様の期待に応えるとは>

 「試作加工は、昔は納期に1ヶ月いただけていました。しかし自動車業界の競争も激しくなるとともにこの期間が次第に短くなり、今では1週間と大きく短納期化しています。昔、先代は『2泊3日でできれば他も追従してこない』と冗談半分で言っていましたが現実になる日も来るかもしれず、短納期に向けての対応が必要になってきています。また、これも試作加工独自のものですが、納品後の追加加工などの緊急対応も重要です。無理なことを無理というのは普通、それをなんとかやれるようにするのが努力であり、社会に貢献できることになります」。
差別化戦略の中での設備投資を行ってきたが、設備はいつか劣化する。
「それだけに人材育成は重要だと考えています。人は成長できるからこそ、それを後押しし、挑戦し続けられる環境づくりが重要です。若い世代の社員向けのフライス盤や旋盤といった基本的なマシンの使い方を覚え直すなどの原点に立ち返ったり、指針発表会などを始めたりしています。ものづくりに自分たちがどう役立てるか、それが今まではたまたまアルミ加工だったのかもしれません。時代とともに求められるものが変わってきます。5年前のスマホは今となっては見向きされないのと同様、自分たちも常に最先端を意識し続けなければ取り残されていまいます。すでに創業から63年が過ぎました。難しいものに挑戦し続けることが100年企業につながるのではないかと思っています」と将来も顧客、社員、会社の三つが光り続け、社会に貢献できるものづくりの姿を模索する川合社長である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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