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マウスウォッシュにもなるタブレット型歯磨き粉で口腔ケア革命を

代表取締役  森 健一

記事更新日.2020.10

TSUYOMI  株式会社

■問い合せ先
TSUYOMI株式会社
〒464-0858 名古屋市千種区千種2-22-8
名古屋医工連携インキュベータNALIC 417

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 日本歯科医師会の行った10代から70代の男女1万人への調査によると、口臭は全世代での悩みであり80.6%は自分の口臭が気になった経験を、41.5%が口臭を指摘された経験を持つ。
 こうした悩みを反映してか口臭ケアグッズはドラッグストアを賑わし、昼食後の会社のトイレで歯磨きをする人を見かけることも珍しくなくなった。
 しかし、外回りが多い営業職は歯磨きの場所がないこともしばしばで、そんな時は口臭を気にしながらの訪問となる。TSUYOMI株式会社の森健一社長もそんな一人だった。場所をあまり気にせず手軽に歯磨きができる製品ができないか、そんな思いで創業し「歯磨きタブレット」の商品化を実現させた。





世の中にない「固形歯磨き」アイデア実現に向け独立

 森社長の前職は大手医薬品卸の子会社の営業職。ルート営業が一般的な医薬品卸業界にあって、任されたのは従来にない販売チャネルを開拓し新製品を展開する部署の西日本責任者。来る日も来る日も飛び込み営業を続け、イオンやコンビニなどのルートを開拓していった。
 営業だけにとどまらず、消費者の動向を肌で感じる人間として自社ブランドのオーラルケア関連の商品企画にも関与していた。その頃から温めていた企画があった。それは自分の外回りの時の経験からヒントを得たもの。営業先への訪問前の歯磨きはエチケットとして欠かせないが、外出先では歯磨きができる場所があるとも限らない。また、濡れた歯ブラシを持ち歩くのは衛生面で不安、かといって液体のマウスウォッシュを持ち歩くと鞄の中を濡らし大切なプレゼン資料をダメにしてしまう心配もある。ならばタブレットで歯の汚れや不快感をすばやくクリアにする製品があれば喜ぶ人も多いのではないか、と考えた。これを何社ものメーカーに提案するも「世の中にない固形の歯磨き」にとまどい、思うような返事は得られなかった。その中でも1社、親しくしてくれていた医薬品メーカーの社長が興味を持ってくれたが、薬機法をクリアする生産体制がなく、結局思うように企画は進まなかった。
   森社長に転機が訪れたのは2016年10月。会社組織の統廃合により職場の環境が変わり、残留か退職かの選択を迫られていた。
 「自分が温めてきた『固形歯磨き』の事業をするなら独立するしかない、と考えるようになっていました。しかし、オーラルケア商品は研究開発や製造販売、また広告表現にいたるまで薬機法を遵守することが求められています。厳しい審査を受け、その審査に通過した商品だけが製造販売が許されるため、個人の力だけで商品化することは現実的ではありませんでした」。
 「この社長が協力を約束してくださったことは事業化に向けて大きな後押しとなりました。製造に必要な型は自分で先行投資する必要がありましたが、それ以外の設備投資は必要なコストを支払うことで利用でき、その後の試作改良から商品化まで大変お世話になることになります」。
 こうして、この企画を実現させようと2017年3月に独立をする。
「一人で始めたのですが、結局一人でしかない。営業のことはわかるのですが、経営のことはわからない。商品企画はできるのですが、パッケージデザインなど商品化までの知識は足らない。何より、会社の設立手続きがわからない。そんな時に知ったのがあいち産業振興機構でした。ここでは創業時の相談もできれば、系統的に学べる創業道場もあります。創業準備スペースへは提案資料を作るため毎日9時から5時まで通い、創業当初の自分の居場所ができたように感じていました。会社の設立手続きや商品化に向けたより具体的な課題であったパッケージデザインやPR方法については併設されているよろず支援拠点などにも何度も相談しに行きました」。

散々な評価の試作第1号

 商品コンセプトは「タブレットを噛み砕くと口の中に泡が広がり、そのまま口をすすぐと『マウスウォッシュ』、歯ブラシを使えば『歯磨き』として使用できる『タブレット型歯磨き』」。
ようやくできた試作第1号。
「これは、散々の評価でした。『まずい』『薬っぽさが残り後味が悪い』という声ばかりで『これでは売れない』とも言われました。そこで、味の改善のためフレイバーをミントからレモンに変えたり、薬効成分を見直し『薬臭さ』の少ない成分を増やしたりし、改良を重ねてはモニターしてもらっていました。ところが味を改善すると成分構成が変わったためか形状が不安定になりくずれやすくなってしまうなど、次々と新たな課題がでて毎月のように試行錯誤を重ねていました。結局、商品化までは8回の改良が必要でした」。

「噛む歯磨き」にバイヤー達が飛びついた

 2018年4月、商品名も「噛む歯磨き」をイメージさせる「KAMIGAKI」として1パック30個入りを1,000円で販売開始。



 契約1社目は東急ハンズ。サンプルを送付するとアンテナの高いバイヤーが飛びついた。すぐに「店に置きたい」との反応。タブレットという目新しさもあって反響は大きく、ロフト、スギ薬局、マツモトキヨシ、歯科医院から次々と声がかかった。大手通販のフェリシモでも人気商品となり1年目は24,000個を販売する。
 「大変な反響をいただき、マスコミなどにもご紹介いただきました。自分の経験から外回りが多い会社員をユーザーとして昼食後や接待前での使用、長時間のフライトでの使用などを想定していました。ところが、介護の場面ではタブレットならこぼれる心配もなく口腔ケアができる、キャンプでは水が手近になくとも吐き出すだけで歯磨きができるなど、いろいろな場面でご使用いただいているという声もいただくようになりました。そこで価格面や購入数などの面でももっと手頃にし、身近な口腔ケア商品としてもっとご利用していたこうと考えたのです」。



 こうして、2019年11月商品名を「CAMUGAKI」と改め20個入600円として手に取りやすい価格と個数にして世界展開を開始、台湾・シンガポールへの展開に続き2020年8月からは中国での販売も開始した。

宇宙での口腔ケアの可能性。新たなステージへ

 「口臭の原因の一つとされているのが唾液分泌量の少なさです。噛むことは唾液の分泌を促し、口臭防止につながります。名古屋大学と口臭防止効果のエビデンスについての検証もスタートしました。口腔ケアは口臭防止だけでなく感染症予防にもつながります。口腔ケア学会では『災害時には睡眠不足や栄養状態の悪化に口腔状態の悪化が加わると肺炎・インフルエンザなどの呼吸器疾患が起こりやすくなる』と警鐘を鳴らしており、避難袋などに当社の製品を準備しておいていただくことで、いざという時でも健康状態の維持に貢献できるのではないかと思っています。当社のモットーは『すべての人にお口の健康を通して笑顔で生きる喜びを』です。今後は、歯みがき剤の開発にとどまらず、歯周病や誤嚥性肺炎の防止に役立つ製品など、『お口から健康長寿』の実現に向けて、口腔ケア全体の分野にも視野を入れながら、より良い製品を開発していきたいと考えています」。
 さらに今、新たなビジネスチャンスを迎えようとしている。宇宙でのライフスタイル提案を考えるJAXAのTHINK SPACE LIFEプロジェクトでは「宇宙でのデンタルケアが手軽に使用できる」と注目を浴びる。今よりも飛び散らないようにする課題はあるものの、タブレット型歯磨きが宇宙へ飛び立つ日が近く来るかもしれない。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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