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非鉄金属の鈑金・プレスの強みを活かせ
〜売上半減からの復活

取締役会長 近藤 和夫

記事更新日.2021.06

近藤金属工業 株式会社

■問い合せ先
近藤金属工業株式会社
〒490-1114 あま市下萱津新替998

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「扱いがきれい」と取引先から高評価の鈑金・プレス品

2020年4月に545.91円/kgであった銅の月間平均価格は、1年後の2021年4月には1017.66円/kgと高騰が続いている。従来よりも配線が必要になる電気自動車や太陽光発電、風力発電向け需要が伸びたためとされる。こうした高騰を背景に、銅を素材とする大物加工を受注する企業が減っているとされる。材料費が高く不良が発生すると自社持ちになってしまうリスクを考えると、技術に少しでも不安のある企業は断らざるを得ない。こうした状況を追い風に大物受注にも対応しているのが近藤金属工業株式会社である。70年近く大手電機メーカーの協力工場として、鉄だけでなく銅・アルミといった非鉄金属の鈑金・プレス・溶接加工に一貫生産体制を構築し携わってきた。銅などの柔らかい金属プレス品を納品すると「取り扱いがきれい」と高い評価を受けるなど、他社が扱いづらい銅などの加工に強みを持つ企業である。

お取引先との共存共栄とは

当社の創業は1953年。創業者の近藤三平氏が戦前より携わってきた鈑金・プレス加工の技術を活かし、大手電機メーカーの協力工場として事業を開始、4年後には近藤金属工業鰍設立。その後協力工場としての関係強化に努め、1967年には重点協力工場となる。高度成長の波にも乗り、事業拡張のため当時最新設備を導入した現在の第一工場へ移転。業容拡大を続け、1993年には現会長の近藤和夫氏が社長に就任、2017年に現社長の近藤隆史氏がバトンを受け継いでいる。
現在は、材料調達からNCデータ作成、プレス・鈑金加工、溶接・仕上げ、検査、さらには表面処理やサブ組立、梱包・出荷までの一貫生産体制を確立している。



聞き慣れない「サブ組立」という工程は、取引先のライン上にすぐ乗せられるように当社で出荷前にセッティング組立をする工程である。
「当社では、単に低コストや短納期で仕事をいただくということではなく、どうすればお客様と強固な関係を構築できるのかを考えます。これは経営理念である『お取引先との共存共栄を基本に』という考え方に基づくものです。発注いただいた複数の部品について、お取引先でライン上の組み付け作業がある場合には、当社で予め組み付けた状態にして納品する、あるいは絶縁処理が必要な部品には当社で絶縁チューブを施すなどすることで、お取引先のライン人員の削減や作業時間の短縮につながるなどのメリットが発生します。当社としてもサブ組立をする部品加工を全てセットで受注でき、社内にお取引先の仮想の生産ラインを持てることになります。こうしたことにより強固で安定的な関係構築を構築することを目指しているのです」と現社長の近藤隆史氏。

「当社では昔からの当たり前の技術なのですが・・」

創業時から電機関連メーカーからの受注が多く、鉄だけでなく、メッキ鋼板や「色物」と呼ばれる銅、真鍮、アルミのような柔らかい高級材についても取扱種類が多いことが特徴となっている。
鉄は3.2mmまで銅は10mmまでのプレス・曲げ加工に対応。
「鉄と銅などの非鉄金属を加工していますが、大きなトン数のプレスを銅に割り当てているように銅加工ができることを強みにしています。銅は加工が難しい素材といわれていますが、柔らかい素材なのでプレスや曲げ自体の難しさというのは感じません。銅板には圧延方向に素材の流れがあり、この流れに逆らって曲げ加工をすると、割れなどの原因になります。また、曲げ加工を行うと、曲げの内面が縮み、曲げの外面は伸びます。銅板がどの程度伸び縮みするかをあらかじめ計算してから曲げ加工を行わないと、加工後の寸法にズレが生じ、曲げ加工の角度が安定しないなどでやり直しが必要になってしまいます。また、銅の溶接は熱伝導率が高いため熱が逃げやすく、膨張率も高いので、溶接の熱による変化も大きくなります。そのため融合不良やスラグ巻き込みといった欠陥が発生しやすくなりますが、取り扱いになれている当社ではこうした技術はある種『昔から当たり前にやっている技術』の範囲といえます。プレスであれば、加工に影響のない範囲で跡がつかないようにバネを弱いものに替えて加工していますが、ノウハウといえばそうですが現場としてはこれも通常作業の範疇です。当社ではJIS規格のB級でというオーダーでもA級同等の加工を行うようにしています」と近藤社長。



また、銅や真鍮、アルミなどの柔らかい素材の加工品を納品すると「取り扱いがきれい」と言われる、とのこと。
「柔らかい素材は取り扱いを慎重にしないと擦り傷や加工時の傷がつきやすいのです。慎重に取り扱う技術というか習慣ができていないと、工程ごとの扱いによって擦り傷がついてしまいます。例えば、素材の縁を合わせてきっちり置かず、ズレていると角がその下の素材に当たることで傷の原因になってしまいます」。
当社のこうした「取り扱いのきれい」な加工品を後工程でメッキをすると差は歴然とし、他社のものよりはるかにきれいに仕上がるという評価を得ているとのこと。



不良撲滅へ現場を巻き込め

こうしたニッチな技術が「当たり前」な企業にあっても、10年前までは全数不良などが発生していた。
「これは技術の問題というよりは、それ以前のヒューマンエラーがほとんどでした。しかしそうなると『気をつける』というエラー防止策となってしまい、結局また同じようなことが起こってしまいます。似たような形状や寸法のものが過去にあり、それと同じだと思い込んで一部寸法変更があったことに気づかなかったり、これまで同じ形の部品は穴あけがなかったので新たな穴あけの指示があっても気づかなかったりすることを、どう仕組みとして防いでいけるかに頭を悩ませました。そこで社内の加工指示は顧客図面を使用し、そこに過去にあったエラーや似たような形状別のオーダーがあること、左右対称となるオーダーが別にあることなど間違いやすい事例を赤枠表示するなどしてアラームを発し、エラー防止に努めています。これに加えて、加工に責任を持たせるために、仕様書の裏へ加工に携わった人が記名し、どのマシンで何個の加工を行ったかなどの記録をすることも始めました。古くからの職人からは反発もありましたが、多くの従業員の理解を得て全社的に推進する雰囲気になり、意識が高まっていきました。不良が発生した場合に作成していた対策書についても、従来は品質管理や検査担当が作成をしていましたが、不良が発生した現場で作成するようにしたことで何故ミスが起こったのか、それを繰り返さないために何をするべきなのかを現場が考えるようになったことで不良はどんどん減っていきました」。
これと並行して技術の標準化・見える化による不良発生にも努めた。
技術に熟練した職人がいたとしても、長期的にはその人任せになってしまい技術の再現性がない。そこで、標準の加工作業がその手順ごとにモニターに表示され、それに従い加工をすることでわずかな訓練で安定的な加工ができる仕組みをサーボ式のブレーキプレスに導入、さらにプレスと同時に曲げ角度を瞬時に測定し不良を次の工程に回さない仕組みを構築した。



主力品の海外移管で大打撃、製品分野分散への挑戦

2012年当社を襲った大激震。
リーマンショックをきっかけとして当社の主力受注品であったインバータ関連のオーダーが中国へ移管されることとなった。これにより売上は半減、新たな受注を求めて走り回る状況となった。当時を振り返るのは当時の社長、近藤和夫会長。
「第三工場を第一・第二工場へ集約化せざるを得ない状況となりました。大手企業から安定して受注・生産できる製品に安住し、一つの製品分野に過度に売上が偏ってしまっていました。このことをきっかけに受注分野の分散を図る必要性を感じ、これ以来は1つの分野で3割を超えないように受注をコントロールしています」。
新規分野の受注には現社長の隆史氏が全国の商談会を駆け回った。
「他社があまり扱わない銅製品を中心に、変圧器や配電盤部品などの受注開拓を積極的に行うようになりました。あいち産業振興機構や商工会議所主催の商談会などには積極的に参加しています。商談会では面談企業のお困りごとを聞いて、とにかく見積をださせていただけるよう提案をしています。手の混んだ複雑な形状のものは、多様な加工方法の可能性があるということですから、従来と違ったこういう方法はどうでしょうと別の切り口の提案をしています。またメッキ工程のあるものは、メッキ鋼板を使用すれば材料単価は高くなる代わりにメッキ工程が不要になるため、コストメリットだけでなくリードタイムも短くできます、などという提案ができます。過去に面談させていただいたけれども空振りに終わった企業様でも、2〜3年経過していれば再度エントリーします。ご担当者が変わっていれば困りごとも変わっているケースがあるからです」。
現在ではインバータや変圧器・配電機器で3割、エレベータ関連、ACサーボ部品、建築金物がそれぞれ1割強などと事業分野の分散に成功。この他、医療機器部品や自動改札機関連部品など新規開拓にも力を入れている。
さらに昨年は銅の抗菌作用を活かした新型コロナ対策向けの商品開発を行ないBtoC市場へも参入した。
「銅の抗菌効果を活かし、非接触でドアノブなどを操作できる専用ツール『フレン銅』を商品化しました。接触部分は抗菌性能があり、数時間で大きく減少します。緊急事態宣言が出るたびに関心を持っていただけるようで反響をいただいています。こうしたBtoCビジネスへも、ものづくり技術が活かしていければと考えています」。



取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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