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プログラミングで子どもたちに「発想力と論理思考」という翼を

伊藤 恵

記事更新日.2022.02

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〒470-0125 日進市赤池2丁目606番地 川村ビル301号室

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 2020年度から小学校ではプログラミング教育の必修化が開始された。順次中学校・高校にも導入が拡がる。プログラムの命令を使いながら自分が意図する動作をさせるための論理的思考力を養うことが目的とされる。これを受け、多くの学習塾ではプログラミング教室開設が進んでいる。 これに先駆けること5年前、プログラミング教室が県内でまだ3軒しかない2015年に子供向けのプログラミング専門塾「子どもプログラミング教室ユアスタイル」を日進市の地下鉄赤池駅前で開設したのが伊藤恵代表である。

文系出身・専門知識なし、関心の高さでソフトウエア会社へ就職

 代表の伊藤氏の大学での専攻はロシア語だったが、パソコンには興味があったとのこと。
 「コンピュータを専門に勉強したことは一度もなかったのですが、当時急速に普及しだしたパソコンには強い関心がありました。8時間画面に向かっていても苦痛にならなかったことから向いていると感じ、ソフトウエア会社を中心に就活をしました。しかし、当時は就職氷河期と言われる時期で、専門知識がない私に縁があったのはたった1社だけでしたが何とか希望する業界に就職することができました」。
 最初に担当したのは工場の搬送制御システム。
 「新人で何もわからないのに滋賀県の半導体メーカーの搬送制御システムを担当することになり、最寄りの駅前のビジネスホテルに滞在し、その工場のことをイチから勉強しました。働き始める前は、ウェブなどの『キラキラした』仕事を想像していたのに、地味な作業着を着て、初めて見る半導体工場で搬送ロボットを相手にし続ける毎日にやめたくなった日もありました」。
 その後、在庫管理や給与システム、病院の予約管理、市町村合併に伴う水道料金の徴収システムの改変、ウェブシステムやカーナビの地図、ミシンの刺繍システムの開発など多様なシステム構築に携わってきた。
 8年間勤務の後、多角経営をする美容室へ転職、システム部門の運営全般とPC運用のサポートを担うなど責任者としての経験も重ねた。

「子どもにプログラミングを教えて」、知人の依頼がビジネスチャンスに

 こうした職歴の後、2014年10月に独立を考え退職。
 「小さな頃からどの業種という具体性はなかったものの、自分の会社を作り、やりたいことがやれる『社長』をしてみたいと思っていました。美容室時代には副業が許されており、海外に日本のいいものを販売する事業を行っていたことから、これに本腰を入れようと考えていました」。
 このころ偶然Webで見つけたのが、あいち産業振興機構の創業道場。
 「安価で長い期間勉強できるし、退職のタイミングとちょうど合っていた」とのこと。
自分のビジネスプランを考える中で、安定的な仕入れを継続できるか、今後の商品開拓をどうするかなどの課題も見えてきた。
 同じ頃、知り合いの保険の外交をしている人から「時間があるなら自分の子供にプログラミングを教えてほしい」という要望を受け、そんな形で自分自身のキャリアが活用できることを知ることになる。
 「今後成長が期待できるIT業界で自分の強みを活かす仕事になるかもしれない」と、子供向けプログラミング教室の開校を検討したところ、当時は愛知県に3軒ほどしか競合がなかった。ビジネスチャンスを感じ、アドバイスを受けながら事業計画を練り上げた。

 教室を開校したのは2015年7月。
 開校時には初級・中級・上級の3コースを用意し生徒を募集した。
 初級は「Scratch」という日本語で書かれた命令文のブロックを組み合わせて作るプログラム。年配の方には電子ブロックで回路を作るイメージといえばわかりやすいかもしれない。主にマウスを使用するため、キーボード操作に不慣れな小学生でも利用することができる。

 

 中級コースは「JAVA」。IT市場を牽引するGoogleが開発に用いる三大言語(Java、C++、Python)の一つとしても知られる。Javaでプログラムを作ると、Windows、Mac、Linuxなどの高い汎用性を得られ、Webサイト、デスクトップアプリやゲーム、ガラケーやAndroidのアプリの他Blu-rayプレイヤー内の組み込みソフトとしても使われる。
 上級コースは開校当初はゲームアプリづくりを設定していたが、現在は将来の可能性を考え「Python」を学ぶ。Instagram、YouTube、Evernoteなど数多くのWebアプリケーションの開発に活用される他、機械学習を用いたAIの開発の分野で広く活用されている言語である。

新聞掲載で応募殺到、独自のマンツーマンスタイルが業界の親から支持

 開業直後は昼間にパソコンのヘルプデスクのアルバイトをし、夕方から塾という時期もあったが、プログラミング教室が目新しかったこともあり中日新聞へ掲載されたことをきっかけに、問い合わせが殺到。創業まもなく30名ほどの生徒を確保できた。

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当塾のスタイルはテキスト無しのマンツーマンが基本。
 「現在、必修化を受けて学習塾でもプログラミング教室が開設されています。そうした教室の多くは、所定のテキストにしたがって進めていくという座学を中心にしたスタイルのようです。当塾では開校以来、プライベートレッスン、多くても目が届く範囲の2人までに限定してレッスンを行っています。テキストはなく、自分で調べながらプログラミングを実践していくスタイルです。実践の中で試行錯誤を繰り返すことでプログラムを作るための論理的思考を高めていく方法で、ソフトウエア会社に勤めた経験から、遠回りのようでも一番身につくと考えています。当塾で特徴的なのは、プログラミングが動かなければ何がどうだめなのか、どうやったらなぜ動くようになったのか、さらに短くするにはどうしたらよいか、もっとスマートなプログラムにならないかなど、うまくいってもいかなくても『何故そうしたのか』を生徒に説明してもらうことです。自分で『どのような理由で、どのようなプロセスを経たのか』をアウトプットしてもらうことで、理解力や再現力を高めることができます。最初は断片的な説明に終始しますが、だんだんと説明のための文章構成力や表現力が向上し国語が得意になる子もいます。人数を限定しなければこうした時間をかけたお子さんごとの対応というのはむずかしいですね」。

 入塾者の親にITの現場の最前線でプログラマーをしている家庭も多いというのも特徴的だとのこと。
 「プログラミング教育には、せっかくプログラミングを覚えても10年後にはその言語がなくなっている可能性があるのでは、という懸念をする声があるのも事実です。しかし、1つの言語の基礎的なことをしっかり理解し『試行錯誤の中で論理思考を高める』ことができれば言語が変わっても対応が可能となります。こうした当塾の考え方が、多くの言語の変遷に対応しながら現場の最前線でプログラミングをされている方々の経験値ともマッチしているようです」。

「何を作るか」の発想力を大切に、コンテストで多数入賞

 現在は生徒40名で、開校時には小学生からスタートし高校まで月2回通い続けている人も多数。近隣の日進市内や名古屋市の天白区緑区からの来塾が大半であるが、親の送迎で遠方から通ったり30分以上電車に乗って通ったりする子もいる。
 「どの子もできなかったことができるようになる、昨日よりも難しいことがだんだんできるようになる、ということが楽しいようです。小学生の間はよそ事を始めてしまう子もいますが中学生になるとかなり集中してプログラミングを行うことができるようになります。そんな中でも向いている、と感じるのはこだわりが強い子ですね。そうした子はゲームを作る時でも『ここの動きはこうしたい』と譲りません。『こうしたほうが簡単にできるよ』といっても『先生、ゲームの動き方知らないでしょ』といって自分の思い通りに動かせるようになるまで一生懸命考えます。よりよいものを作りたい、という意欲がある子は自然と技術も上がっていきますね」。
 高校生以降も興味を持ち続け、大学も工業系や情報系の学部にはいるケースも多いとのこと。ただ、小学校の時はいい発想をして面白いものを作っていたのに、年を経るにしたがい自由な発想がなくなっていき普通の子になっていくと残念がる。
発想力を養うのに毎年コンテストへの参加は欠かせない。  「多くの子は、課題を与えられてそれを『どう作るか』ということは得意なのですが、『何を作るのか』を考えるのが不得手です。これを作って、というとすぐ手が動くのですが、何でもいいから作って、というととたんに何をやったらいいかわからなくなります。そこで、『何を作るか』を考えるのにコンテストへの応募はいいきっかけになります。毎年例えば『SDGs』や『算数』などの大枠での課題が与えられその中で何を作るかを考えるため、何のテーマも与えられないよりは考えるきっかけとなる糸口があり考えやすいようです。ただ、高校受験や大学受験でプログラミングに費やせる時間が減っていくと、発想力のしぼんでいってしまう人が多く、この点はとても残念に感じています」。
 試行錯誤や考えることが習慣となっていることも功を奏し、全国から百数十の応募の中から毎年のように入賞者を輩出している。

 「プライベート教室ということから発達障害の子も安心して入塾いただけるようです。他の子ができないことができるようになるとと喜びを感じるようですね。不登校の子もプログラミングができるようになり自信をつけることで次第に登校できるようなケースもあります。少しの自信で子どもたちはたくましく変わっていくものですね」。
 今後は海外の生徒を教え、日本の生徒と競わせるような機会を作りたいとのこと。お互いの言葉はわからなくともプログラム言語は共通語。プログラミングをきっかけに大きな翼を広げていってほしいと願っている伊藤代表である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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