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資源効率の高い生産
〜マテリアルフロー分析という環境経営手法について〜
浅井豊司 記事更新日.08.06.03
株式会社フルハシ環境総合研究所 東京事務所所長 
■PROFILE
1999年 フルハシ工業株式会社入社
2001年 株式会社フルハシ環境総合研究所入社
専門分野は環境コミュニケーション、環境教育、廃棄物リサイクル・ゼロエミッション、環境ビジネス構築等。他に資源生産性向上、省エネルギー、環境活動に関する各種企画・調査等、環境経営全般の活動をコンサルティング・支援している。

連絡先
株式会社フルハシ環境総合研究所
【東京事務所】
東京都渋谷区恵比寿西2-8-5 エビス・S&S・ウエスト3F 
〒150-0021 TEL:03-5728-3413 FAX:03-5728-3414
【名古屋本社】
名古屋市中区金山1-12-14 金山総合ビル7F
〒460-0022 TEL:052-324-5351 FAX:052-324-5352
ウエブサイト: http://www.fuluhashi.jp  

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Q:
中小企業、製造業です。環境活動として、経営にもメリットがある取組みをしたいと思っています。 省エネルギー活動はコスト削減につながるため、これまで積極的に取組んできました。 ボイラーの運転条件の調整など、「ネットあいち産業情報 省エネQ&A」を見て、やれる取組みはやってきたつもりです。今後は、省資源の取組みを進めたいと思っています。何か、ヒントがあれば教えてください。
A:
ご質問ありがとうございます。経営にもメリットのある環境活動というのは、目の付け所が素晴らしいですね。省エネルギーに取組んできたことは、燃料代が高騰しているため、経営面でも大きなメリットがあったことでしょう。

エネルギー価格、資源価格が高騰している今だからこそ、省資源の取組みは環境対策の面でも、経営面でも非常に重要になっています。

そもそも「資源」という言葉の定義ですが、ここでは「事業活動において使用する原材料・燃料・用水等」ということで定義しておきます。すなわち金属等の鉱物資源や、燃料・プラスチック等の化石資源、木材等の生物資源、および水資源を指すこととします。

石油や金属材料等の資源は、このところ価格が上昇しています。その理由には資源の枯渇が危惧されていることや、BRICSに代表される新興国の需要が増え続けていることが挙げられます。これらの原因は根本的に解決が難しく、むしろさらに資源不足は加速する方向にあります。したがって、資源の価格は常に上げ下げの変動があるものの、傾向としては上昇し続けると考えられます。

「省資源への取組み」は購入する資源コストを抑えることに貢献します。簡単にたとえれば、省資源10%は原材料費を10%削減することと同じです。今後、資源の価格が高いまま維持、またはさらに上昇する場合、省資源の取組みは企業競争力の向上に大きく作用することになるのではないでしょうか。いわば、高騰資源対応型生産とも言えるような、環境対応型の生産方法なのです。

ところで、御社ではこの「資源」を事業活動のなかで、どこに、どれだけ、投入しているのか、資源の流れを把握していますか? またその資源の費用はどれだけか、を把握していますか?

この資源の流れがわからなければ、省資源のターゲットとなる「ムダ」を把握することができません。まずは、省資源の入り口として、廃棄物について考えてみましょう。廃棄物は生産工程の上流では、資源だったものです。したがって、廃棄物を減らせば、資源を減らすことにつながるはずです。

廃棄物のコストといえば、まっさきに思い浮かべるのは「処理費用」です。どの企業でも廃棄物処理費用は把握していることと思います。それでは、その廃棄物が出るに至るまで生産工程の上流でどれだけの資源・燃料・エネルギーを投入したのか、またその費用がいくらだったのか、見えているでしょうか? 省資源のポイントは、まずはこの資源の流れ(マテリアルフローと言います)をつかむところからはじまります。例えば、マテリアルフローは図1のように描画できます。資源・エネルギーの投入量・費用を投入側に記入します。さらに製品、排水処理、廃棄物処理等は排出側に記入します。
このフロー図を見れば、製造プロセス全体のなかで、どこに多くの資源・エネルギーを投入しているか、視覚的に理解することができます。しかし、この程度の情報はすでに把握していると思われる方も多いことと思います。

次の段階は、多くの資源・エネルギーを投入しているプロセスの詳細分析を行います。具体的に、ある金属製建材メーカーA社の事例を簡単にご紹介します(マテリアルフロー:図2)。A社では塗装工程の廃棄物が年間14.5トン発生し、処理費用は33万円かかっています。普通に廃棄物の処理費用を見ていると、この33万円までしか認識できません。

ところが、図2マテリアルフローからこの塗料廃棄物の上流で投入されている資源量と費用を眺めると(マテリアルフロー分析を行うと)、塗料が30トン、7,800万円投入されていることがわかります。投入材料のデータを分析すると、年間に購入する塗料・その他の添加剤のうち、38.8%を捨てていることがわかりました。これは原材料の購入費用から金額換算すると売上の1.5%にものぼります。
この塗装工程では2コートの塗装を行っており、1コート目の塗料を2コート目と同じ色を使用しており、1日に13色を調合・塗装するために、その都度段取り替えが発生していました。段取り替えのたびに作りすぎて余ってしまった塗料の廃棄物が発生します。このため1コート目の同系統の色は同じ塗料を使用することで塗料の種類を減らし、高価な塗料を減らすとともに段取り替えを減らすことで1,000万円相当の塗料削減効果が見込めることがわかりました。

このように、マテリアルフローを描画することからムダを探し出し、改善を行えば資源の効率向上が図れます。

中小企業であろうと大企業であろうと、原材料を購入し、製品を作っているならば、このマテリアルフローを作ることができるはずです。ところが、このマテリアルフローを把握している企業はほとんど見られません。

このマテリアルフロー分析を導入する前に、多くの会社に共通に見られる課題を5つ取り上げてみました。御社ではいくつ該当しますか? 多く該当する企業ほど、マテリアルフロー分析を実施する価値がある(潜在的な改善の可能性が高い)と考えられます。

◆ マテリアルフロー分析 課題例

1.エネルギー使用量の全体把握は行っているが、どの工程でどれだけ使われているか、という把握はできていない
2.材料の調達・製造には品質・コストに気を配っているが、廃棄・廃熱のコスト(ムダ)には意識がまわっていない(水はタダ同然と思っていませんか? 排水処理コストを考えると大きなコストがかかっています)
3.全体・工程ごとのマテリアルフロー、エネルギーフローがない。
4.目に見える問題に対しての改善までしか、改善活動を行っていない(上流からの改善を行っていない)
5.ムダが発生している工程であると認識していても、その状態が慢性的に改善されていない

マテリアルフロー分析を行う場合の重要なポイントを次の通り、箇条書きしました。実施する際には、参考にしてください。

◆ マテリアルフロー分析 重要ポイント

1. エネルギー・資源の流れを見えるように図にする
2. 数量・金額を数値で表す
3. (できれば第三者の視点を入れて)改善のポイントを絞り、具体的な改善策をたてる
4. 改善するプロセスのエネルギー・資源の流れを再び図にする
5. マテリアルフローをもとに、関係者、決済者と情報共有する(投資決済をする)
6. 改善策を実施する
7. 実施結果を図にして、効果を確認する

最後にマテリアルフロー分析を実施した企業の感想を以下に挙げました。
●マテリアルフローをつくることで、今まで見えなかったムダが見えるようになった
●費用対効果が見えて、対策がとりやすくなった
●コストと環境という両面から意識をもって、今後の改善活動につなげていけるきっかけとなった

このマテリアルフロー分析という手法は、経済産業省がマテリアルフローコスト会計(MFCA)として推進しています。本稿で解説した手法と類似しています ので参考にしてください。ただし、中小企業ではガイドラインを忠実に実施する必要はないと考えます。企業ごとにねらいに応じたやり方で良いと思います。くれぐれも注意していただきたいのは、目的は資源効率を上げるために、ムダを探し出し、改善することです。データをとり、分析することはそのための手段です。多少のデータの穴があったとしても、目的を達成できればそれでいいのです。省資源活動を考えていらっしゃる方々は、このマテリアルフロー分析を試してみてはいかがでしょうか?
参考文献
古川智美、小竹暢隆「PIUS−Checkの中部地域におけるパイロットプロジェクト―マテリアルフロー分析手法を使った中小製造業における生産効率改善を通した環境負荷低減プログラム―」『地域問題研究』 No.74:38−47(2007.12)

関連WEBサイト
マテリアルフローコスト会計導入のためのホームページ(社会生産性本部)
http://www.j-management.com/mfca/
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