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  トップ > 経営相談Q&A 環境対策Q&A > 省エネルギー法の規制強化はコスト削減の絶好のチャンス!
省エネルギー法の規制強化はコスト削減の絶好のチャンス!
古川 智美 記事更新日.09.06.00
株式会社フルハシ環境総合研究所 国際事業室 欧州・北米担当 
■PROFILE
ブリティッシュコロンビア大学大学院(School of Community and Regional Planning, University of British Columbia, Vancouver, Canada) 学術修士(持続可能な地域計画専攻)、名古屋大学大学院国際開発研究科博士前期過程 学術修士(国際環境協力専攻)。
2005年フルハシ環境総合研究所入社。ドイツNRW州効率化エージェンシー(EFA)により開発された資源生産性診断プログラム「PIUS-Check」の日本での展開の推進力となる。欧米での先進的環境政策やプログラムの調査・研究、日本の先進事例を世界へ発信するなど、「環境」で世界と日本を繋ぐ活動に従事。持続可能な社会実現のための政策提言、Think Globally Act Locally!をモットーとした地域での取り組み推進にも力を入れる。
他に資源生産性向上、省エネルギー、環境活動に関する各種企画・調査等、環境経営全般の活動をコンサルティング・支援している。

【連絡先】
株式会社フルハシ環境総合研究所
名古屋市中区金山1-12-14 金山総合ビル7F
〒460-0022 TEL:052-324-5351 FAX:052-324-5352
ウエブサイト: http://www.fuluhashi.jp  

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Q:
「省エネ法改正」という言葉を最近耳にします。当社は、食品加工業を営んでいます。「省エネ法改正」は、当社と関係するのでしょうか?エネルギーの使用量は、本社・第一工場で、重油500kl/年、電気80万kWH/年、第二工場で重油700kl/年、電気100万kWH/年です。
A:
ご質問ありがとうございます。省エネルギー法は、2006年の改正に続いて、近年2度目の改正となります。改正のたびに規制強化されるため、事業者は注意しなければなりません。今回の変更内容は温暖化対策として事業者の出すCO2排出量を減らすことを大きな目的にしています。これまではエネルギー使用量が大きい工場・事業場が対象でしたが、改正後は企業単位の管理となり、全ての事業所を合算したエネルギー使用量が対象となるため、多くの企業が新たに規制対象となるのです。
新しい省エネ法ではエネルギー使用量が企業全体で1,500kl(原油換算)であれば行政への届出等が必要となります。その測定期間は2009年4月〜2010年3月となっており、対象となる企業では今からエネルギー使用量を測定・記録する必要があります。

さて、ではご質問いただいた企業様が改正省エネ法の新基準で対象となるか、確認してみましょう。電気使用量、重油使用量を原油換算し、全ての拠点を合計します。次の表の通り計算をすると、合計1,673klとなりエネルギー使用量の合計が1,500kl/年を超えるため改正省エネ法の対象となります。

重油
(原油換算)
電気
(原油換算)
重油・電気合算
(原油換算値)
全拠点合算
(原油換算値)
第一工場 500kl 80万kWH 710kl 1,673kl
  (504kl) (206kl)  
第ニ工場 700kl 100万kWH 963kl
  (706kl) (257kl)  
※この計算は省エネルギーセンターのホームページから、計算フォーマット(エクセル)を使用しました(http://www.eccj.or.jp/law06/xls/07_01.xls)。


他の企業様でも次のフロー図や先の計算フォーマットをもとに、一度チェックしてみてください。

今回改正される省エネ法を簡単にまとめると次の通りです。
 改正省エネルギー法は2010年4月に施行されます。国への報告は2009年4月〜2010年3月のエネルギー使用量が対象となります。

 規制対象:
  企業全体で年間1500kl以上のエネルギー(原油換算)を使用する事業者。

 対象企業は以下の取組み義務を課せられます。
  (1)エネルギー使用量を企業単位で国へ届け出て、特定事業者の指定を受ける
  (2)エネルギー管理統括者とエネルギー管理企画推進者を選任する
  (3)エネルギーの使用状況などの定期報告書や中長期計画書の提出する
  (4)企業全体としてのエネルギー管理体制を推進する
 
※詳しくはこちらをご覧ください
資源エネルギー庁ホームページ 平成20年度 省エネ法改正の概要
法令遵守(コンプライアンス)ですから、うっかり忘れていた、知らなかったでは済まされません。今から体制づくりや準備が必要です。

この様な規制のタイミングでは、2つの対応のパターンが見られます。一つは最低限の対応で規制をやり過ごそうとする後ろ向きな対応。もう一つはこれを良い機会と捉えて、会社を改善・発展させる取組みにしてしまおうとする前向きな対応です。

みなさんには、この規制強化を絶好のチャンスと捉えて、前向きに対応して頂きたいと思います。私が中小企業様の工場や事業場の現場を拝見すると省エネができそうなポイントがいくつも見えてきます。省エネのポイントとは、つまりお金をドブに捨てているのと同じですから非常にもったいないと感じます。

省エネとコスト削減を実現するためには、省エネ診断や資源生産性診断(※)、マテリアルフローコスト会計など既に様々な手法があります。当然、社内での自助努力は必要ですが、それだけでは発見できないポイントがいくつも潜んでいます。そんな時には、外部の専門家(コンサルタント)を入れて、改善手法及びその費用対効果を明確にすることをお勧めします。多くの場合、費用対効果は充分に見込めます。

※「資源生産性」とは、事業活動において使用する原材料・燃料・用水等の資源についてその投入量(input)に対する生産性(実際に製品となる割合)のことです。資源生産性を高めることは、より少ない資源投入からより多くの製品を生み出すことになり、コスト削減、省エネや廃棄物発生抑制などに繋がります。詳しくはこちらの記事を参照ください。

「資源効率の高い生産〜マテリアルフロー分析という環境経営手法について〜」
(ネットあいち産業情報’08年6月号)


それでは、当社が手がけた、資源生産性診断の事例を2つ紹介します。  
【事例1】

<会社概要> 
・金属部品製造業
・年間電力使用量:4,600万kWH/年(約5億9,000万円/年)  

資源生産性診断の結果:
(1)コンプレッサーの効率化
切削機械などに使用しているコンプレッサーの配管の効率改善により、14台使用していたコンプレッサーのうち、3台を停止。

(2)廃熱の利用
焼鈍炉から600℃で取出される金属材料は、次工程に行く前に室温まで冷却しており、その廃熱は従来工場内に放熱していた。この廃熱を利用して焼鈍炉に投入する前の材料を予熱することにより、炉内での熱処理時間を短縮することができる。
年間費用削減額
(円/年)
投資額
(円)
償却年数
(年)
エネルギー削減量
(kWH/年)
(1)コンプレッサーの効率化 96万 10万 0.1 75,000
(2)廃熱利用 160万 100万 0.6 127,000
合計 256万 110万 - 202,000
(2)については、提案した改善が実施された場合の見込み。


この企業では、既に長年にわたってコスト削減や省エネ活動に取組んでいましたが、外部の目が入ることにより、社内では見落としていた観点に気づくことができたとのことです。社内では、当たり前だと思って見過ごしていた工程に実はムダが潜んでいることに気づいていただきました。また、廃熱を工場内に放熱していたことに対し、その熱量計算と対策にかかる費用対効果の計算を行ったことにより、どれだけのコストをかけて対策をとれば、どれだけの効果が期待できるかということを明確にすることでき、対策がとりやすくなったとの事です。

【事例2】
<会社概要> 
・食品加工業
・年間重油使用量:1,200kl/年(6,000万円)、年間電力使用量:313万kWH/年(3,600万円/年)

資源生産性診断の結果:
(1)廃熱利用
食品を茹でる工程で発生するオーバーフローの熱水を捨てていたが、これを熱交換器により廃熱を回収。この廃熱を使って新たに投入する水(17℃)を予熱することにより、茹で釜を加熱する重油の使用量を削減。

(2)段取り換えの間も茹で釜へ新たな水(17℃)が追加投入されていた。この追加水投入をバルブコントロールで自動化することにより、段取り換えの間の、水使用量を削減し釜を加熱する重油の使用量を削減。
年間費用削減額(円/年) 投資額(円) 償却年数(年) エネルギー削減量(kWH/年) 重油削減量(L/年) 水の削減量(t/年)
熱交換、バルブコントロール両方採用 250万 290万 1.15 584 48,000 4,000
※削減効果及び効果金額は提案した改善が実施された場合の見込み。

この工場では、日常の生産管理(納期と品質管理)に取組むことに手一杯で、それ以外の改善については、人手・時間不足などの理由からなかなか着手することができていない状況でした。外部の専門家のサポートで、生産のために使っている水や原材料、エネルギーの量を工程ごとに分析することにより、削減可能なムダが見つかりました。外部のサポートを借りることにより、自社内だけでは手がまわらない様な改善活動に着手することができました。

まとめ

経済状況が厳しい昨今に、省エネまではなかなか手がまわらないとおっしゃる経営者の方々も多いことでしょう。しかしながら、生産が忙しく、エネルギーの使用量が多い時ほど、省エネ等の新しい取組みに手がまわらないものです。この規制強化をきっかけに全社で使用しているエネルギー総量の把握と省エネ取組みに着手することをお勧めします。設備更新のための投資に対する補助金などの支援策も行政機関から各種用意されています。この機会に省エネ取組みの費用対効果を明確にすることにより、コスト削減のチャンスとして経営強化につなげてみてはいかがでしょうか。
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