質問、ありがとうございます。しかと承りました。
自律型の部下を育成する最も良い方法。それは、上司が、自らを律してその背中を見せることです。
それが一番です。それに尽きます。
って言ってしまっては、質問をいただいた方や読者の方々から、「おいおい」という突っ込みが聞こえてきそうなので、心構え的な部分だけではなく、もう少しテクニカルなお話もしてみたいと思います。
まずは、ひとつこちらから質問をさせてください。
「管理職のあなたは、仕事に対してどのような“こだわり”をお持ちですか?」
そう、“こだわり”です。
いきなり、こう質問をされるとなかなか答えられないかもしれません。しかし、きっとじっくり考えれば、いくつか仕事に対するこだわりというか、自分なりの信条のようなものがでてくるでしょう。普段は言葉にしていないので、なかなかそれを意識しきれていないだけで
す。
たとえば、私のことで恐縮ですが、例としてお伝えしますと、
1.仕事で「忙しい」という言葉は周りの人たちに言わない。
2.仕事上のコミュニケーションにおいては、相手の言ったことに対し、「いや」「でも」の接続詞を使って返さない。
3.いただいた電子メールは何らかの形で必ず返信する。
なんてのを、「仕事のこだわり」というか「自分なりの仕事上の信条」としています。
ちなみに、一つ目の「忙しい」と言わない、というのは、次のような思いからです。
「忙しい」と自分が言っていても、ひょっとすると全く同じ分量の仕事を同じ期間で違う人がやったら、その人にとっては全然忙しくないのかもしれません。
ですから、「忙しい、忙しい」と言っているのは、「自分に能力がないです」と言っているのと同義語だと思うのです。
二つ目の「いや」「でも」で返さないというのは、「〜ですよね」と言われて、違うなぁと思っても、「いや、そうじゃなくって〜」と否定的に返さないということです。
「〜といえますよね」と言われて、そうではないだろうと思っても、「でも〜」と返さないということです。
「いや」「でも」というのは相手の言っていることを否定する接続詞ですから、相手のことを否定しないためにもこの接続詞を言わないように気を付けています。
なぜ、このようなお話をしているのかというと、自分なりのこだわりを持ち、それを守っていこうとすることで、自分を律する心が醸成されるからです。
どんなに細かいことでも構いません。自分に課すべきものを作り、それを守る、そのことから自律心は生まれてくるのです。
で、上司であるあなたは、どんなこだわり、信条をお持ちでしょうか?
先ほどもお伝えしたとおり、言葉にしていないだけできっとお持ちだと思います。
それをまずは文章として書き出し、それを守ろうと意識をしていくのです。
そして、その背中を部下に見せていけばいいでしょう。
また、部下に「仕事に対するこだわり」「信条」を決めさせるとよいでしょう。
簡単に飲みながらでもいいので、「○○さんの仕事に対するこだわり、信条って何かある?」と聞いてみてはいいでしょうか。
ちなみに、私がお付き合いをさせていただいている会社で、「自分のこだわり・信条」を挙げて、それを顔写真付きでカードにし、掲示している会社があります。
ご参考までに、どのようなこだわりが出ているかというと、
「仕事中は走らない」
「会議には遅刻しない」
「営業先の駐車場では、一番遠くに車を停める」
「営業マンとして値引かない」
「あいさつは自分から」
などなどが出されています。
こういう難しくないけど、自分に課していくこだわり、信条を持つことは、「自律型社員」の育成につながると信じています。
なお、私の場合、こうした自分なりのこだわりを持って仕事に取り組もうとはしていますが、必ずしも完璧に守れているかといえば、恥ずかしながら、そうではありません。
しかし、意識はしています。ですから、たとえば、「でも」って言ってしまったときには、「あっ、言っちゃった」と自分で気づくことはできます。
気づければ、直していくことができます。
逆に、こだわって、意識していなければ、気づけないですし、気づけなければ、直していくことはできません。
こうして自分で自分を修正していく作業によっても「自律心」が芽生えていくのです。
自律型の部下を育成したければ、上司としてのこだわりを持って、それを貫く。もしくは、部下に仕事のこだわりを決めさせ、それを貫いていくようにさせる。
質問に対する答え、こんなんでいかがでしょう?
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