3分で分かる、人と組織の活かし方
(1)セルフイメージを高めるには・・・)
(2)部下の報・連・相を増やすには・・・)
宇井克己 記事更新日.08.07.01
株式会社ナレッジ・プラクティス・コンサルティング 代表取締役 
名古屋コーチングラボラトリー協同組合 代表理事 
中小企業診断士
■PROFILE
1965年7月29日生まれ。製造業での営業、コンサルティングファームでの企画営業などを経験したのち、2002年に宇井経営コンサルティング事務所を設立し、独立。
経済産業省が認定する中小企業診断士の資格を活かし、さまざまな業種・規模の企業に、「いかに会議を活性化するか」、「いかに管理職を育てるか」、「いかに売上・利益を上げるか」などのコンサルティングを行っている。
また、「会議活性化研修」「管理職のためのビジネスコーチング研修」「営業マン研修」など、受講者とともに作り上げるライブ感溢れる研修も好評を得ている。
研修・講演回数 100回以上/年、コンサルティング実績73社
メルマガ「芸能・スポーツで学ぶ、人材育成の裏ワザ」も発行している。

連絡先
株式会社ナレッジ・プラクティス・コンサルティング
(旧:宇井経営コンサルティング事務所)
〒486-0913   愛知県春日井市柏原町4丁目96番1
TEL/FAX0568−70−3850
http://www.ui-consultant.com
Q1:
こんにちは。電機機器メーカーで社長をしております。女性です。実は先代の父が急逝し、2代目の社長の座を引き継ぎました。営業の経験もなく、ましてや経営の経験もなく、右も左も分からない状況で経営を行っております。会社の業績はまずまず順調なのですが、どうしても自分に自信が持てずにいます。自信がないことを社員にも見透かされているようで、なかなか思い通りに行動ができません。どんなアドバイスでも構いません、自信が持てるようなアドバイスをいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
A1:
こんにちは。ご依頼の内容、承りました。お父様が急逝され、突然の社長就任、本当に大変なことが多いと思います。その中でなかなか自分自身に自信が持てず、思うような行動もとれていない、何とかもう少し自信が持てるようにしたいということですね。

社長という立場上、自分に自信を持たなければいけないと考えられているようですね。いきなり自信が増すようなアドバイスとは言えないと思いますが、 自分自身を悲観的に見ない、そんな発想法をお伝えしたいと思います。

実は、私がお付き合いをしている会社の社長さんにも同じような悩みを抱えている方がいます。その社長さんと二人で話をしていると、こんな発言が出てくることがあります。

「私、営業の経験がないんですよね。だから営業会議で、思うことがあってもなかなか営業マンに強く言えないんですよね」。
「私、ずっと理系できていますから、論理的な話は得意なんですが、なかなか人の感情が理解できないところがあるんですよね。で、人間関係を悪くしてしまうことがあるんです」。

分かりますか?
自信のない方の発言の典型的なパターンに思えます。
どんなパターンかといえば、簡単にいえば、
「〜だから、〜できない」
です。

「営業経験がないから、強く言えない」、
「理系出身だから、人の気持ちがくみ取れない」。

ある意味、「営業経験がない」とか「理系出身」というのは変えられない事実です。その変えられない事実をできない理由にしていたら、自信が持てるはずもありません。
もし、ご相談者のあなたが、「女性だから、〜できない」とか「経験がないから、〜できない」という思いを持っているのなら、 少々厳しい言い方になってしまいますが、自信が高まらないのは当然と言えます。

自分の心に、「〜だから、〜できない」という思いが浮かんでしまったら、そのときは、次の法則を思い出してください。

「〜だから、できない」、それを、
「〜だからこそ、できることはなにか?」に変換する。
もしくは、
「〜のなかでも、最低限できることはなにか?」に変換する。

「営業経験がないから、強く言えない」ではなく、
「営業経験がないからこそ、言えることはないか?」
「営業経験がない中でも、最低限営業マンに言えることはなにか?」です。

女性だからこそ、経営で強みを発揮できることは何ですか?
営業の経験がないからこそ、営業マンに気づかせられることは何ですか?

これらに答えられれば、少なくとも自分のイメージを落として、自信をなくしていくことは少なくなるのではないでしょうか?

まるっきりの余談ですが、自信がないというのは自分に対するイメージが低いという言い方ができます。セルフイメージが低いと、他の人との比較の中で負けている部分が強調されて意識されてしまいますので、なかなかチャレンジングな行動を起こしていくことができなくなってしまいます。

やはりセルフイメージは低いよりは高く持っていたほうが行動力は高まるといえるでしょう。

唐突ですが、プロゴルファーのタイガー・ウッズは、ゴルフを始めた時から、父親に徹底的にこう言われてきたそうです。「理想の自分を追い求めろ!」と。

2005年世界ゴルフ選手権、タイガー・ウッズとジョン・デイリーが激しく争って最後までもつれた時がありました。プレーオフ第3ホール目、ジョン・デイリーが1mほどのパットを外せば、タイガー・ウッズの優勝という状況の中で、タイガー・ウッズは心の中でこう考えていたそうです。
「入れてくれ!」と。

普通に考えたら、外せば自分の優勝が決まるのですから、「頼む、外してくれ!」ですよね。でも、タイガー・ウッズにしてみたら、こんな場面でパットを外す相手に勝って優勝するような低いイメージの自分ではないということらしいのです。
タイガーの自分に対するイメージは、極度の緊張の場面でもパットを決めてくれる、そんな相手に勝つ自分だというのです。

結果は、ジョン・デイリーがパットをはずしてタイガー・ウッズが優勝しました。しかし、タイガーの顔は優勝の喜びでいっぱいというわけではなく、なぜそこで外すんだ、というさみしさがにじみ出た表情をしていました。

プロの最高のレベルで戦うアスリートって、やっぱり違うよなぁと思うのではなく、そこから学ぶべきことはあると思います。

セルフ・イメージを高めることの大切さ、お互いに意識をしていきましょう。なんたってプロの経営者なんですから!

Q2:
こんにちは、自動車部品メーカーで営業課長をしているものです。ご相談したいのは、部下の報告・連絡・相談の悪さについてです。報告・連絡・相談をなかなか私が思うようなレベルで行ってもらえません。報・連・相の仕方というよりも、そもそも行ってくれないという悩みです。部下はいま、4名います。みんながみんな悪いというわけでもありませんが、どうしても思うように行ってもらえない部下が1名います。どう対応したらいいか、ぜひアドバイスをいただきたくよろしくお願いいたします。
A2:
なるほど、なるほど、4名の部下のうち1名の人が思うように報告・連絡・相談をしてくれないということですね。

このような悩みをお持ちの上司の方は結構いるのではないでしょうか?

単刀直入に申し上げます。まず、報告・連絡に関しては、まず上司であるあなたから率先して行うようにしていただけるといいでしょう。

これは私が研修を行っている時にもよくいうことなのですが、上司の方が研修を受けたら、絶対にしなければいけないことは、その研修の報告を部下の人たちにすることです。

部下にしてみたら上司が一日仕事を空けて研修を受けに行っていることは知っています。ですから、その研修から帰ってきたのであれば、その研修についての報告をぜひ部下の人たちに行ってほしいのです。自分の上司に受講報告をしたなら、ぜひ部下の方にも行ってください。
そうすれば、報告・連絡の文化が少しずつ根付いてくるでしょう。

「部下に報告・連絡を徹底させたければ、自分が部下への報告・連絡を徹底する」です!

あと、相談については、次の3つを心がけてください。もしこの3つを破ると部下からの相談の数は少なくなっていってしまいますよ!

一、 まずは徹底的に聴くことに徹し、アドバイスを与えることを急がない
一、 部下の話の内容を絶対に否定しない
一、 部下を責めない。

少しだけ解説をしましょう。
一つ目の「まずは徹底的に聴くことに徹し、アドバイスを与えることを急がない」についてです。
多くの上司の方が、部下から相談されると、すぐにアドバイスや答えを与えてしまっています。アドバイスをするな、と言っているのではありません。アドバイスを与えるタイミングが早すぎるのです。部下の話をしっかりと聴く前に、しかも相談して いる内容の背後に隠れた部下の感情や思いを理解しようとする前に、アドバイスや答えを与えすぎています。
確かに、部下に答えを与えれば、悩んでいる部下から尊敬のまなざしで見られるようになるのではないかという気持ちも分かります。しかし、相談されてすぐに答えを与えるようだと、ときに逆効果になってしまいます。部下の想いとしては、「人の話もろくに聞かないで、アドバイスされてもなぁ」というところでしょう。
まずは、部下の話の内容をしっかりと聴き、現状確認の質問を投げかけ、また聴き、部下の感情までも理解できたうえで、アドバイスをしていただければと思います。
ちなみに、部下の感情を分かってあげるというのはなかなか難しいところはあるでしょう。せめて、部下の感じているつらい思いを代弁してあげてみてください。「それは、つらいよなぁ」とか「そんな状況 のなかでもどかしさを感じているのかな」というように。

二つ目の「部下の相談の内容を否定しない」。これはそのままご理解いただけることでしょう。相談した内容を否定されてしまっては部下としても立つ瀬がありません。

ただ、問題は、上司としては否定しているつもりがないのに、部下にしてみると否定されていると感じることがあるということです。

まずはぜひ、自分自身が部下の話を聞いた時、最初にどんな言葉で返しているのかをチェックしてみてください。

「いやっ・・・」もしくは「でも・・・」で最初の言葉を返しているようでしたら、どんなに自分が部下の話は否定して聞いていないといっても、部下は否定されている気分になっています。

もし、「いやっ・・・」、「でも・・・」で返しているのに気付いたら、それを「なるほど・・・」に変えてみてください。

三つ目の「部下を責めない」。これは、非常に大切なことです。ですが、意外にできていない上司の方が多いような気がします。
次のようなことを相談してきた部下に言っていませんでしょうか?
「で、そうなったのはお前の言い方がまずかったからなんじゃないか?」とか、
「そうなったのは、お前の努力が不足しているからなんじゃないか?もっと熱意を持ってぶつかれば、その熱意や誠意は伝わるはずだぞ」。

こんな風に相談してきた部下を責めてしまっては、部下は、こう思います。
「相談したおれがバカだった・・・」と。
そう思われたら、間違いなく相談数は減っていきますよね。客観的にとらえればよく分かることです。

部下から相談を受けた時には、相談を聞くモードにスイッチをオンにするイメージを持ってみてください。

「おぉ、部下からの相談だな。よし、絶対に部下の話を否定しないぞ、気持ちを分かってやるぞ、それまでは徹底的に聞くぞ、それと、えぇ〜っと、絶対に責めないぞ!スイッチ、オン!」てな感じで。

ぜひ、こんなことを頭においてみてください。それでも部下からの報告・連絡・相談が増えなかったら、またご相談をください。