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高効率電動機と省エネ
野口昌介 記事更新日.07.12.05
野口技術士事務所所長
■PROFILE
1934年愛知県生まれ。
三菱電機(株)、フォスター電機(株)、日本電産(株)を経て、平成3年野口技術士事務所を設立、現在に至る。愛知県中小企業支援センター専門員、愛知県商工会連合会専門員。

<資格>
技術士(電気電子、経営工学、総合技術監理部門)、中小企業診断士、電気主任技術者第1種、エネルギー管理士、公害防止管理者、ISO9000審査員補

<著書>
現場の電動機技術、電気機器実務必携、絵とき電気機器マスターブック(オーム社)、不良低減(共著、日本規格協会)

<主な講演>
コストダウンの進め方、省電気エネルギー

<専門>
企業診断・指導、工場管理、品質管理、作業改善、不良低減、コストダウン、電気機器技術指導、省電気エネルギー、ISO9000認証取得の指導

連絡先
野口技術士事務所
〒463-0055 名古屋市守山区西新17-30
TEL/FAX 052-792-0172          
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Q:
どこでも三相誘導電動機が使われています。
既に効率の高い高効率電動機が市販されていますから、これを使えば一挙に省エネが進むように思いますが…。
A:
高効率電動機は、汎用電動機として使われている三相誘導電動機の損失を下げて高効率とした電動機です。
これを使えば効率がアップした分、一気に電力使用量が低減すると言いたいのですが、注意して欲しいことがあるのです。   
Q:
でも、高効率−効率が高いのでしょう。
A:
確かに高効率です。適用に注意を要するのです。
標準シリーズと高効率省エネシリーズの効率を比較すると図1(注1)の如くです。

但し、標準シリーズの特性算定は円線図法、高効率省エネシリーズの特性算定は動力計法(実測法)による事になっており、差異があります。
図1は比較する為に、共に円線図法(JIS-C-4207)により算定した値です。
この値は定格出力における値で、定格出力の小さい方で4%前後、中位のところで2%前後の差異といったところです。
ところで高効率とする為に諸損失を低減しています。二次抵抗を小さくして二次損失(回転子損失)も低減しています。
この関係から、滑り(同期速度からの遅れの比率です)が小さくなりまして回転数が増加しています。 回転数増ですから、その増加分に応じてトルク(回転力)が小さい値で同じ出力になります。
回転数について幾つかの例を挙げますと表1(注2)の如くです。
         表1(注2)            4極 60Hz 200V
定格出力
[KW]
標準シリーズ(円線図法)高効率省エネシリーズ(実測法)
回転数[rpm]  滑り[%]回転数[rpm] 滑り[%] 

1.5

2.2

3.7

5.5

7.5

11

15

22

37

45

1710

1710

1710

1720

1730

1720

1730

1750

1760

1760

5.0

5.0

5.0

4.44

3.89

4.44

3.89

2.78

2.22

2.22

1725

1725

1730

1750

1750

1760

1760

1770

1760

1770

4.17

4.17

3.89

2.78

2.78

2.22

2.22

1.67

2.22

1.67

回転数の値を表1に挙げましたが、算定法の差異の問題があります。
一般には、円線図法の方が回転数が高い値になるのですが、 回転数が10[rpm]飛びに区分されていますから、数値の丸め方の影響もあり、バラツキもあるでしょうから注意して扱う必要があるでしょう。
必要な時はメーカーに問い合わせるのが宜しいでしょう。
Q:
そうすると、適用への問題が…。
A:
少々堅苦しい説明になりますが、滑りと回転数との関係は次の如くです。
S =(Ns-N)
   Ns
S:滑り
Ns:同期速度[rpm](=120f/p)

N =

Ns(1-S) N:回転数[rpm]

=

120f
 p
(1-S) f:周波数[Hz]
p:極数

一方、機械系の所要動力は次式で表されます。
P'= ωT =

(

N
60

)

T  P':所要動力[W]  ω:角速度[rad/s]

 =

(

N
60

)

(1-S)

T 

T:トルク[N-m]

=

ω0 (1-S)T ω0 : 同期角速度[rad/s]

ω0 =

(

Ns
60

)

= 4πf
 p

ですから機械系のトルク一定の負荷の場合は、必要とするトルク−回転力、これが変わらないのですから、仮に滑りが1%減少−回転数がアップ−、1%所要動力増となりましても、効率差が3%あれば、2%の効率アップに成って特に問題はありません。加えて、1%の回転数アップによる生産量増の効果を期待するところです。
Q:
他の機械で何か問題が…。
A:
ファン・ポンプが問題です。
ファン・ポンプは共に流体機械で同じことがいえるのですが、ファンで説明しましょう。ファンの所要動力は次式にて表され、回転数・風圧・風量・所要動力には次の関係があります。
P" =   PQ
6120

P":所要動力[KW]
 P  ∝ N2 ∝(1-S)2
 Q  ∝ N ∝(1-S)
 P" ∝ N3 ∝(1-S)3
P:風圧[mmAq]
Q:風量[m3/min]

実際の電動機入力は、所要動力をファン効率及び電動機効率で割った値となります。
この関係から回転数の増加−滑りの減少−は、運転時の滑りがS1→S2に減じたとしますと、回転数増で所要動力は、

 P"=

(

1-S2
1-S1

)

3

 

となりますから、仮に4%の滑りのものが3%の滑りに減じたとしますと、

(

1-0.03
1-0.04

)

3

≒1.013≒1.03  

となりまして、1%の滑り減は、3%の所要動力増になります。
従って、3%の効率アップがありましても帳消しになって、何を使ったのか意味が無いことになります。
注意していただきたいのはこのことです。
前回の「ネットあいち産業情報」のファン特性で回転数増の影響を説明しますと図2のようになります。

本来は高効率で、所要動力減から入力減を狙っているのに、ウッカリ使用するとその特性から却って入力増になってしまうことがあるということです。 あるいは、期待した数値が得られないということです。
従って、特にファン・ポンプ負荷の場合には、簡単に考えて「効率は良いぞ、シメタ」と安易に行うのではなく、実際の負荷状況、電動機及び負荷の特性から数値を弾いて定量的に評価してから行ってください、ということです。安易に行うと逆効果で、こんなはずではなかったとほぞをかむ事になりかねません。
ファン・ポンプの電動機の定格出力の選定には余裕を見込むので、定格出力いっぱいに使用することはまずないでしょうから、実際にはどの程度の負荷が掛かっているかもチェックし回転数を確認した上、数値的に吟味する必要があります。 
<参考文献>
(注1) 三菱省エネ機器<総合カタログ>から作図致しました。
(注2) 三菱モータ<総合カタログ> 但し、滑りは回転数から算出致しました。
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