創業サクセスマニュアル~専門家による創業取扱い説明書~

公益財団法人あいち産業振興機構


創業の形態【法人格の選択について】創業にあたって法人格を取得した方がいいのかについて

事業を行うにあたって最低限必要なものに「人格」があります。「優れた人間性」とか「人間としての在り方」という意味の「人格」ではありません。「法律行為の主体」としての「人格」です。
この場合の「人格」には2種類あります。「自然人」と「法人」です。「自然人」とはその言葉の通り、生物学的な「ヒト」であり、生まれながらに(一部の権利能力は胎児にも認められます。)権利義務の主体である存在を指します。「法人」とは、法律により権利能力が認められ、目的の範囲の中で行為能力を認められた存在です。
「法律により認められた」存在ですから、様々な法律により、様々な法人格が存在します。その中で事業を行う場合に選ばれる法人格(有限責任事業組合は法人ではなく組合ですが登記できます)にはおよそ次のようなものがあげられます。
・ 株式会社
・ 合同会社(LLC)
・ 合名会社
・ 合資会社
・ 一般社団法人
・ 一般財団法人
・ 特定非営利活動法人(NPO)
・ 有限責任事業組合(LLP)
尚、有限会社は2006年に有限会社法が廃止され、現在は設立出来ません。
事業は個人で(要するに自然人のままで)行うことができます。ではなぜわざわざ面倒な手続を行って、法人格を取得するのでしょうか?それには一般的に次のような理由があげられます。
・ 節税(個人事業より法人事業の税率の方が安い)
・ 法人としか取引をしない企業がある
・ 信用力向上のため
・ 決算時期を自由に設定できる
・ 法人格がないと許可を受けられない事業がある
・ 許可等を受けている事業の承継がスムーズに出来る(個人で許可を受けている場合は、許可をとり直す必要があり、新たに許可が取れない場合がある)
等が考えられます。他にインターネットのショッピングモールに出展するために法人格が欲しいとか、女性が起業する場合、安全性の観点から必要性を感じられる方もいるようです。
これらが、法人格取得の理由でありメリットです。デメリットとしては、決算手続が複雑になり、利益が出ていなくても7万円は税金を払わなくてはいけない、廃業する場合の手続が面倒、等が考えられます。
以上が法人全体について言えることですが、ではいくつもある法人格の中からどの法人格を選べばよいのでしょうか?現在合名・合資は以下に記載してある理由からほとんど選択されていません。他の法人格についてはそれぞれ長所短所がありどの法人が一番良い、ということはありません。特徴を記載しますので、選択する際の参考にしていただければと思います。
営利事業を行う場合は、通常会社法により規定されている法人を選択します。株式会社、合同会社(LLC)、合名会社、合資会社です。株式会社は設立費用もある程度かかり、設立後も役員の任期に関する手続きや決算の公告義務がありますが、営利事業を行う組織としての信用度は高いといえます。LLC、合名会社、合資会社は設立費用が安く済み、決算公告が不要である、役員の任期がない等これから事業を起そうという方にはありがたい法人です。しかし合名・合資会社には出資者の「無限責任」という大きなデメリットがあります。そのため、LLCの制度がもうけられてから、合名・合資会社の設立件数は大きく減っています。LLCは設立費用が安く、有限責任であり役員の任期もなく創業者には大変使いやすい制度であると言えます。但し、知名度が低く、「代表取締社長」と名乗れない(代表社員という肩書きになります。なお社員とは出資者という意味です。)という欠点があります。また、株式会社とLLCは資本金1円から設立できますが、資本金は登記事項であり、誰でも見ることができます。事業内容に見合った資本がないと信用を損なうことになります。
その他の選択肢として一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人(NPO)が考えられます。これらはともに非営利活動を行う法人ではありますが、収益事業を行うことに問題はありません。営利法人ではないということは、社員や設立者に剰余金や残余財産を受ける権利はない、ということです。一般財団法人は300万円の財産を拠出する必要がありますが、一般社団法人は財産要件がなく、人さえいれば設立が可能です。
NPOの社会的な信用度は一般的に高いと言えますが、活動の範囲が特定非営利活動促進法に定められている17分野に限定されています。また、設立にあたって認可が必要であり、毎年事業報告を行わなければならず、決算書がインターネット等で公開されます。
法人格はありませんが、組合として法人のように活動できる有限責任事業組合という制度も他社と共同で事業を行う場合には有効です。有限責任であり、設立がしやすく、構成員に課税される(組合そのものには課税されないパス・スル―課税)ということがメリットとしてあげられます。デメリットは、法人ではないため、許認可の主体とはなれないということです。
以下に各法人の特徴を簡単に整理します。簡素化しているためアウトラインを把握する程度の資料とお考えください。


  株式会社 合同会社(LLC) 合資会社 合名会社
法人の種類 営利 営利 営利 営利
出来る業務 制限なし 制限なし 制限なし 制限なし
出資の種類 金銭&その他の財産
(信用・労務の出資不可)
金銭&その他の財産
(信用・労務の出資不可)
金銭&その他の財産に加え、
信用・労務の出資も可
金銭&その他の財産に加え、
信用・労務の出資も可
出資者責任 有限責任 有限責任 有限責任/無限責任 無限責任
財産 1円以上 1円以上
持分の譲渡 譲渡制限可 社員総会の承認 社員の承諾
認可 不要 不要 不要 不要
役員の定め 取締役会を置く場合
3人以上
取締役会を置かない場合
1人以上
全社員又は
業務執行社員
無限責任社員1名以上
有限責任社員1名以上
無限責任社員1名以上
事業報告 不要 不要 不要 不要
役員の任期 最長10年 制限なし 制限なし 制限なし
定款の認証 必要 不要 不要 不要
登録免許税 15万円※ 6万円※ 6万円 6万円
決算公告 必要 不要 不要 不要
認知度 高い 低い 低い 低い
手続期間 2~3週間程度 2~3週間程度 2~3週間程度 2~3週間程度
税金 一般企業 一般企業 一般企業 一般企業
※株式会社・合同会社の登録免許税は資本金の額の7/1000です。上記は株式会社・合同会社の最低税額です。

  社団法人 財団法人 特定非営利活動法人(NPO) 有限責任事業組合(LLP)
法人の種類 非営利 非営利 非営利 組合
出来る業務 制限なし 制限なし 特定非営利活動促進法
17分野限定
制限なし
出資の種類 金銭&その他の財産 金銭&その他の財産
(信用・労務の出資不可)
出資者責任 有限責任
財産 300万円以上 2円以上
持分の譲渡 社員の承諾
認可 不要 不要 必要 不要
役員の定め 社員2名以上 設立者以外に
理事3名以上
監事1名以上
評議員3名以上
理事3名
監事1名
役員の内報酬を
受けられるのは1/3以下
社員10名以上
構成員2名以上
事業報告 不要 不要 必要 不要
役員の任期 理事2年
監事4年
理事2年
監事4年
2年 制限なし
定款の認証 必要 必要 不要 不要
登録免許税 6万円 6万円 6万円
決算公告 必要 必要 必要 不要
認知度 高い 高い 高い 低い
手続期間 2~3週間程度 2~3週間程度 半年程度 2~3週間程度
税金 非営利型でない場合は
一般企業と同じ
非営利型でない場合は
一般企業と同じ
収益事業にのみ課税
優遇措置あり
構成員課税

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