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硬くて割れないプラスチックレンズ
−無機・有機複合体耐衝撃性ハードコートの開発−
愛知県産業技術研究所  記事更新日.07.03.01
■問合せ先
愛知県産業技術研究所 
TEL0566(24)1841  FAX0566(22)8033   
http://www.aichi-inst.jp/
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主に眼鏡用レンズとして用いられているプラスチックレンズは、ガラスレンズと比較して軽く、成形性に優れ、着色も容易といった多くの利点があります。そのため、生産性にも優れ、現在では眼鏡レンズの9割以上がプラスチックレンズです。

しかし、プラスチック自体は柔らかい素材であるため、表面に傷が付きやすいという欠点があります。それを克服するため、その表面には傷を付きにくくする膜、いわゆるハードコートが数ミクロンの厚さでコーティングされています。ハードコートの材質は当然硬いものが用いられますが、一般的に硬い材料ほど柔軟性に乏しくなる傾向があります。そのため、プラスチックレンズにハードコート処理を施すと、表面の傷つきにくさ(耐擦傷性)は向上するものの、それに伴って耐衝撃性は低下します。

このように一方を向上させるともう一方が低下してしまうことを、トレードオフの関係と呼んでいますが、耐擦傷性と耐衝撃性はまさにこの関係にあります。さらに、ハードコートとして用いられる物質は十分な硬さが求められるため、シリカ(二酸化ケイ素)などの無機物質が主となっていますが、それと有機物質であるプラスチックとの表面の化学的な状態は当然異なります。そのため、これら物質の相互密着性が十分でないことが多く、コーティングされた膜が剥がれやすくなるという事態も生ずることがあります。

このようなことから、現状のプラスチック眼鏡レンズにおいては、図の左のように耐衝撃性のある樹脂膜をレンズ表面に1層コートし、その上にハードコート処理を施します。これにより良好な密着性、耐擦傷性および耐衝撃性の実現を可能としています。

国内のプラスチック眼鏡レンズ業界においても、他の工業製品と同じように、中国、韓国からの安価な輸入品は脅威となっていて、価格面でかなりの苦戦を強いられています。国内生産品は性能面において海外品とは比較にならないほどの高性能、高信頼性があるため、生産合理化で価格を低減できれば、海外品に太刀打ちもしくは優位に立つことが可能となります。またさらなるメリットとしては、製造工程短縮に伴う生産性増大(歩留まりの向上)あるいは廃棄物の低減、乾燥等処理時間短縮に伴う使用エネルギーの低減など数多くあり、多大なる効果がもたらされることとなります。

当研究所では、分子レベルで材料を複合化させるナノテクノロジーを駆使し、無機材料と有機材料との複合化技術の開発に取り組んできました。その結果、図の右に示す1層で密着性、耐擦傷性、耐衝撃性すべてにおいて良好な性能を示す、プラスチック眼鏡レンズ用無機・有機ナノ複合体耐衝撃性ハードコートを開発しました。

複合化反応に際しては、無機物質には耐擦傷性に優れたシリカ(SiO2)あるいはチタニア(TiO2)を、有機物質には耐衝撃材料として自動車の合わせガラスの中間膜として広く使われているポリビニルブチラール(PVB)を用いました。複合化方法は、PVBをカップリング剤(アルコキシシラン)で架橋させた後、無機微粒子をそこへ分散させています。そのため、無機微粒子が良好に分散し、写真に示すように透明性に優れた膜を得ることができます。

 

次にこのハードコート試料の各種性能を、2層コートされた現状品とともに、表に示します。表より明らかなように、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性共に、現状品とほぼ同レベルの性能となっています。
表 現状品および現状開発品の各種性
項   目 現 状 品 (2層コート) 開 発 品(1層コート)
密着性(クロスカット法) 剥離無し 剥離無し
耐擦傷性(鉛筆法) 5H程度 5H程度
耐衝撃性
(高さ127pからの落球試験)
50〜150g程度
135g以上
しかし、性能的には同レベルであっても、本開発品は1層のみのコーティングで現状の2層コーティング品の性能の実現を可能にした点で優れています。本開発技術を用いれば、プラスチック眼鏡レンズのハードコートに関し、重要な業界ニーズのひとつである製造工程の合理化を実現できることとなり、前述のような数多くのメリットをもたらすことができると思われます。

今回、プラスチックレンズ用のハードコートに特化した無機・有機複合体の研究開発を行ってきましたが、ポリマー、カップリング剤、無機微粒子の組成比あるいは種類を変えることで、様々な性質の膜を作製することが可能です。従って、膜の密着性、膨張率などに関して基板に適応した設計を行えば、金属材料やガラス、セラミックスへのコーティングも十分に可能で、防食膜や耐衝撃膜等、各方面へのさらなる用途展開が期待できます。

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