マシナブルセラミックスは登場して80年ほどの歴史が有り、この間にさまざまな特性を持つ多くの種類のものが開発され、市場に登場しました。しかし、価格が高いことから何れもアルミナセラミックスほどの大きな支持を獲得できずにいます。逆にマシナブルセラミックスが開拓した、セラミックスでも加工ができるというイメージから産み出された市場を、加工技術の進歩もあってアルミナセラミックスに譲ってきたように思われます。今日では少量で高価ではあるが寸法精度が必要、高価ではあるがすぐに手元に欲しいというニッチな市場がマシナブルセラミックスの市場となっています。今後、マシナブルセラミックスがアルミナセラミックスのように普及して、誰もが普通に材木でも切るようにとはいかないまでも、金属を加工するようにセラミックスを自分で加工する市場が形成されるためには、今よりも低価格化されなければいけません。 また、加工性という優れた特性はありますが、その他の特性が一般的にセラミックスに期待される特性値を満たしていないものも多く、たとえば、酸化物系多孔質セラミックスは比較的安価なマシナブルセラミックスですが、強度が弱いのが欠点です。耐熱性、耐摩耗性、強度、耐薬品性などアルミナセラミックスに近い特性を実現するものは無いようです。
当研究所では従来のマシナブルセラミックスの設計方針とは異なる方向で構造用酸化物セラミックスのマシナブル化に取り組んでいます。アルミナセラミックスなどなじみの深い構造用酸化物セラミックスに、マシナブル化剤となるセラミックスを添加して固相反応で焼結させます。この方法でできた複合セラミックス(たとえばアルミナ−マシナブル化剤系複合セラミックス:マシナブルアルミナ)は構造用酸化物セラミックス粒子(アルミナ)とマシナブル化剤セラミックス粒子の界面で亀裂が進行する組織を持つマシナブルセラミックスになります(図2)。 |