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  トップ > 経営戦略レポート 技術の広場 > 自己組織化単分子膜(SAM)形成技術による織物のはっ水加工について
自己組織化単分子膜(SAM)形成技術による織物のはっ水加工について
あいち産業科学技術総合センター 記事更新日.12.09.03
尾張繊維技術センター
■問合せ先
TEL 0586-45-7871 FAX 0586-45-0509
印刷用ページ
■はじめに
織物にはっ水性を付与する機能加工は衣料分野で幅広く行われており、ユーザーから求められる加工となっています。はっ水加工は、水をはじく機能とともに、しみ・よごれの付着防止を目的として、例えば、スーツ、学生服、ウインドブレーカー、ユニホーム、婦人服などに用いられています。加工方法としては、一般的に樹脂加工が行われていますが、原料・水・エネルギーを大量消費する環境負荷が大きいプロセス(図1)であるため、環境負荷の小さい代替加工の開発が求められています。  
当センターでは名古屋大学の技術シーズ「自己組織化単分子膜(SAM)形成技術」を利用することにより、水を使わない環境負荷の小さいプロセス(図2)での織物のはっ水加工の技術開発を行っており、その取り組みについて紹介します。

■SAM形成技術による織物のはっ水加工
まず、織物にSAMを形成できる表面状態にするため、前処理として真空紫外光を照射し、表面に水酸基(−OH)やカルボキシル基(−COOH)などの官能基を形成して活性化させます。次に、真空紫外光を照射した織物とデシルトリメトキシシランといわれる液体のSAM形成原料を密閉空間の中に入れて加熱します。デシルトリメトキシシランは揮発して気体となり、気体となったデシルトリメトキシシランの分子は空気中の水分と加水分解反応をします。さらに加水分解反応した分子は、活性化させた織物表面と脱水縮合反応して、織物表面上にSAMを形成します(図3)。こうして形成されたSAMは、織物との密着性が高く、膜の厚さは、樹脂加工と比較して1000分の1から10000分の1の約2〜3ナノメートル(ナノは10億分の1)であるため、非常に薄くて織物本来の風合いが変わらないといった特長をもっています。

■SAM形成織物のはっ水性の評価

このようにしてSAMを形成させると、その膜によって水をはじきます。このはっ水性については、水滴接触角を測定することにより評価します。この水滴接触角は、一定量の水滴を滴下して図4に示す角度を測定することによって得られ、大きい値ほどはっ水性が高くなります。今回、研究開発でSAM加工したポリエステル織物の水滴接触角は128°、未加工の織物では106°であり、測定時に取得した画像を図5に示します。

■摩擦と洗濯におけるSAMの耐久性の評価

ポリエステル織物にSAM形成した試料について、摩擦と洗濯の耐久性試験を行い、試験後のはっ水性の評価として水滴接触角を測定しました(図6)。摩擦試験は、同じポリエステル織物を摩擦子として用い、最大1000回往復を行いました。また洗濯試験は、「5分洗濯して脱水後すすぎ洗いと脱水を2回繰り返し、日かげつり干し」を1回の洗濯工程として最大10回行いました。その結果、摩擦試験、洗濯試験どちらとも回数とともに少しずつ水滴接触角は下がってはいるものの、ほぼはっ水性を維持し、SAM形成加工によるはっ水織物は比較的耐久性の高いことがわかりました。また少しずつ水滴接触角が下がりはっ水性を失う原因として、試験前後で織物に付着しているSAM の形成量を評価しても全く変わらなかったことから、SAMは脱落したのではなく、SAM形成加工では表面上の繊維のみにSAM形成しているため、耐久性試験時に繊維が動いてSAM形成されていない部分が表面に露出したと考えられます(図7)。

■最後に

本研究開発は、当地域が文部科学省の採択を得て実施する「知的クラスター創成事業」の成果を地域の中小企業の方々へ積極的に技術移転する取り組み「愛知ナノテクものづくりクラスター成果活用促進事業」の中で実施しており、当センターでは、SAM形成技術を織物に限らず各種材料への応用展開を技術支援しています。

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