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様々な環境下での反応を調べる「その場測定」の技術
共同研究支援部

記事更新日.19.03

あいち産業科学技術総合センター 

■問合せ先
〒470-0356 豊田市八草町秋合1267-1
TEL 0561-76-8315 FAX 0561-76-8317

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1.はじめに 

温度、湿度やガス雰囲気など様々な環境下での物質の状態を調べることを「その場測定」といいます。物質の品質評価や検証、新規機能性物質の開発のために、物質の反応メカニズムや、そのときの状態そのままを計測できる「その場測定」の要求は高まっています。「その場測定」の条件として温度変化、湿度変化、雰囲気ガスとの反応、電池材料の充電、放電反応、フィルム、ゴムなどの高分子材料の延伸による変化など様々な環境下が考えられ、また測定技術も走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などの顕微鏡観察やX線吸収微細構造(XAFS)、赤外吸収分光(IR)やラマン分光法による物質の状態分析などその手法も多岐に渡ります。その中でも本稿では、物質の結晶状態を調べる手法として材料開発によく利用されているX線回折(XRD)測定による「その場測定」を行った事例について紹介します。


2.XRD測定の原理について 

結晶中では原子は規則正しく並んでいます。規則的に配列した原子にX線を入射するとX線が干渉し、ある角度において強め合う条件となり回折現象が観察されます。この角度は図1で示すようにブラッグ条件によって求めることができます。 このような回折現象が起きる角度は各物質の結晶を構成する原子の大きさや構造により固有であるため、XRD測定を行うことにより、各物質の結晶構造やその大きさなどがわかります。この結果を利用することで物質の同定・定量や、結晶構造の解析を行うことができます。



3.観察事例

(1)観察1:温度変化による結晶状態の変化
加熱XRD測定について図2に示します。測定サンプルを加熱装置の窒化アルミ製のステージに載せてヒーターにより加熱しながらXRD測定を行います。本装置では最大1100℃まで測定を行うことができます。図3に亜鉛(Zn)粉末を室温〜600℃まで加熱測定した結果を示します。亜鉛粉末の加熱温度が高くなるほど、亜鉛の回折ピーク位置が低角側にシフトしたことがわかります。これは熱膨張により結晶の格子が長くなったことを意味します。さらに亜鉛のそれぞれの回折ピーク位置のシフト量が異なることから、加熱により膨張しやすい方向があることもわかりました。また400〜500℃の間で回折ピーク位置に変化が見られ、回折ピーク位置による物質の特定を行ったところ、酸化亜鉛が徐々に生成されていることもわかりました。このように「その場測定」を行うことにより反応の途中経過を知ることができます。

(2)観察事例2:ガス雰囲気下における結晶構造の変化
ガス雰囲気下におけるXRD測定について図4に示します。図4(右)はガス反応装置の概略図になります。バルブを開放することでサンプルにガスを吸蔵、ポンプで排気することでガスを放出する仕組みです。このガス反応装置をXRD装置に組み付けることでガス雰囲気下におけるXRD測定を行います。本測定では入射光としてシンクロトロン光を使用しました。シンクロトロン光は、実験室で使用されるX線と同じく電磁波の一種ですが、極めて強度の高い光であるため、数秒という短い時間でも質の良いデータを得ることができます。この特徴は物質の変化の過程を追う、「その場測定」に適した光と言えます。今回の測定サンプルには金属パラジウム(Pd)微粉末を用いました。Pdは自動車排ガス用触媒や水素吸蔵合金などに多く利用される金属であり、水素ガスを流すと水素化パラジウム(PdH)として水素を吸蔵します。そのPdの水素吸蔵過程を捉えるために、Pdに水素ガスを流しながら起こる変化について1秒ごとにXRD測定しました。その結果のまとめが図5になります。水素を吸蔵させるとPdの回折ピークが徐々に減少することと、新たにPdHの回折ピークが成長していく水素吸蔵の過程が「同時」に起きていることがわかりました。また水素放出では吸蔵とは逆に脱水素化していく変化の過程も捉えることができました。

4.おわりに

このように短時間で起きる結晶構造の変化もX線やシンクロトロン光を活用した「その場測定」であれば、その変化の過程を観察でき、製品開発に有用な知見が得られます。ただし、「その場測定」にはそれに応じた冶具も必要になります。まずは測定の可能性も含め、お気軽にご相談下さい。

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