2.3Dスキャナを用いた3D形状データの作成
使用した3Dスキャナは3本の赤色レーザークロスを用いる非接触型の形状測定装置(HandySCAN 300, Creaform社)です(図1)。本機では、測定対象物にレーザー光を照射すると同時に装置のカメラが反射光を捉え、三角測量方式により距離を計算することで対象物の3D形状を測定します。スキャナ本体をPCとケーブルでつなぐ必要はありますが、本体を測定対象物の周囲で動かして読み取る方式のため、手のひらに載る程度のサイズのものから、動かせないような数mの大きなものまで、幅広い対象物の形状データを得ることが可能です。
本機で3Dスキャンを行うには測定準備として、位置情報を取得するためのポジショニングターゲットと呼ばれる小さな丸いシールを測定物または背景に貼り付けていく作業が必要です。スキャン作業では、レーザーを対象物に照射して測定を開始すると同時に、PCモニタ上に点群データが反映されていくため、進捗状況を確認しながら測定を進めることができます(図2)。このように、3Dスキャナを用いると比較的簡単に対象物の形状データを取得することができますが、対象物の材質や形状によっては測定に注意が必要です。
測定対象物に黒い部分(光を吸収する)、ガラスなどの透明な部分(光を透過する)、金属のような光沢部分(光を正反射する)が存在する場合、うまく測定できない、あるいはその部分だけデータが「抜けた」状態になります。このような場合、装置のパラメータの設定変更で対処が可能であればよいですが、それが難しい場合は対象物にパウダー塗布や塗装を施すことで測定を可能にする方法があります(図3)。また、PCでのデータ処理によりその部分を埋めてしまうという方法もあります。例えば、タブレット端末を対象物とする場合、ディスプレイ部分は透明なためスキャンによるデータ取得は難しいですが、多くは簡易な平面形状のため、スキャンでのデータ取得の工夫に時間をかけるよりも、PCでのデータ処理によりディスプレイ部分を作成してしまったほうが早いことがあります。
材質の他に、対象物の形状も測定の可否や難度に影響します。本方式では測定にレーザー光を用いますので、もちろんレーザー光の当たらない陰の部分はデータの取得ができません。そのため、何らかの方法で対象物を宙に浮かした状態で、スキャナ本体を回り込ませて測定することが有効です。また、対象物の配置方向を変化させ、それぞれの配置で取得した複数の形状データを合成することもできます。図4では対象物の配置方向を変更し、それぞれで取得したデータを編集ソフトウェア(Geomagic XOS, 3DSystems社)を用いて合成することで底面を含む全方向データを取得しています。
スキャン作業が終わると、次はデータ編集ソフトウェアによりデータのチェックや修正を行います。修正内容として具体的には、不要箇所の除去、穴埋め、面の平滑化などを必要に応じて行います。ただし、修正を行う場合は、作業者の主観が入る可能性があることに留意しておく必要があります。修正したデータに問題がないことを確認できると、完成となります。
このように測定した形状データはSTLと呼ばれる、積層造形装置(3Dプリンタ)の標準形式で出力することができるため、それらの装置によりモデルの造形を行うことができます(図5)。デジタルデータとして取得しているため、一部の形状を修正したモデルや、大きさを変えたモデルの試作なども容易に行うことができます。
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