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ニューラルネットワークを利用した動物毛の種類判別
食品工業技術センター 保蔵包装技術室

記事更新日.22.03

あいち産業科学技術総合センター 

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〒451-0083 名古屋市西区新福寺町2-1-1
TEL 052-325-8094  FAX 052-532-5791

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1.はじめに

 人工知能(Artificial Intelligence, AI)は、生産現場での検査作業などに活用されており、中でも近年はニューラルネットワークが注目されています。ニューラルネットワークとは「入力−出力」の単位を神経細胞であるニューロンに見立て、これを積み重ねてネットワーク状に接続することで出力結果を得る仕組みです。これを活用することで画像情報から目的とした条件の部分を特定するなど有効な知的能力を実現しています。このニューラルネットワークを活用すれば、食品中への異物混入において問題となる動物毛(以下毛)の画像情報から種類判別ができると期待されます。毛の種類判別は熟練者でも苦慮するため、実現すれば当センターでの迅速な種類判別、さらには中小企業の現場での問題解決に寄与できると考えられます。そこで異なる7種類の毛を対象に、毛の種類判別が可能なニューラルネットワークの構築を目指しました。

2.各顕微鏡画像による毛種類判別

 食品に混入する毛のモデルとして、原材料などから混入するブタ、ホルスタイン、和牛 (黒毛和種)、人為的な要素で混入するヒト、イヌ、ネコ、毛の形態に特徴があるヤギの7種の毛を用いました。これらの画像をデジタルマイクロスコープ及び生物顕微鏡を用いて撮影しました(写真1)。デジタルマイクロスコープでは、上から光を当てた実体顕微鏡モード及び下からの光で透かした透過顕微鏡モードの2モードで撮影しました。それぞれの画像のうち、1本の毛の画像を評価データに、残りを学習データに使用し、56×56ピクセルに縮小したRGB画像でデータセットを作成しました(写真2)。ニューラルネットワーク用のソフトウェアとしてNeural Network Console (以下NNC)、ニューラルネットワークには手書き文字の認識ネットワークであるLeNetを使用しました。NNCでの学習回数は100回とし、学習と同時に学習時間を計測しました。学習後に評価データの判別を行い、全正答率、Precision*1、Recall*2を求めました。
 100回の学習により学習データでの自己評価エラーは0に近く、学習効果は十分と考えられました。しかし、実体顕微鏡画像では評価データでの自己評価エラーが非常に高く、その結果全正答率は0.398と低くなりました。これに対して、透過顕微鏡画像では全正答率が0.650、毛種類ごとの種類判別結果もヤギのRecallを除きすべて実体顕微鏡画像を上回りました(図1)。表面構造は実体顕微鏡画像の方が鮮明です(写真2)。これより、判別には表面構造などの細部よりも、毛部分と背景との色差による毛部分全体の違いが認識できることが重要と考えられました。生物顕微鏡は透過像を観察する点において透過顕微鏡画像と等価と考えられます。しかし、生物顕微鏡画像を用いて判別を行った結果、全正答率が0.494と透過顕微鏡画像と比べて低くなりました。これは画像撮影時の光学条件の違いによる画像の色合いの違いが影響していると考えられ、顕微鏡間のデータ統合のためには正答率が高くなる光学条件の検証が必要です。

3.ネットワークの改良

 NNCのネットワーク自動探索機能では既存のネットワーク構造をもとに新たなネットワーク構造を作り出すことが可能です。そこで、透過顕微鏡画像のデータセットを用いてLeNetのネットワーク構造を出発点として NNC上で自動探索を行い、全正答率の上昇するネットワークを探しました。その結果、学習時間がLeNetの半分程度で、全正答率も0.716に上昇したネットワークが見つかりました。このネットワークによる種類判別では、Precisionはすべて上昇、Recallも5種類の毛で上昇しました (図2)。このように、ネットワークの改良を進めることで全正答率のさらなる向上が期待されます。

4.おわりに

 この種類判別ネットワークでは、毛画像を適切に分類することで毛種類の追加、削除は容易であり、また毛以外の繊維などの画像を使用することも可能です。今回使用した画像データ数はまだまだ少なく、データ数増加やネットワークの改良により最低限求められる全正答率80%に到達できると考えられます。画像データのさらなる蓄積及び正答率が高くなる光学条件の検証が今後の検討課題です。

5.用語解説

*1 Precision:1つの項目に出力された判別結果の正答率(例:AIがブタと判別した画像が 正答だった率)
*2 Recall:1つの種類の入力画像が正答に判別された率(例:ブタの画像が正しくブタと判 別された率)

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