“経営者の役割は?”と問われたら、皆さんは何とお答えになるだろう。私がまず大切だと思うことは、経営理念により、自社の存在意義を明確にし、さらに経営方針、経営計画を立案することで、企業の進むべき道を、社員をはじめとするステークスホルダーに示すことだと思う。こうして、ビジョンを明確にし、いかにしてそれぞれの社員のモチベーションアップを図っていくかが大切だと思う。
どんなにすばらしい自社の将来像を描いたところで、現場で働く社員のやる気を引き出せなければ、ただの絵に描いた餅になってしまう。言い換えれば、社員が心から自分の仕事に対して、やる気と必要性を感じることができるようになれば、多額の設備投資などしなくても、2割、3割の増収増益は意外と簡単に実現できるのではないだろうか。
経営者や管理職は、自らは黒子に徹し、部下が働きやすい環境を整えて、やる気を引き出し、能力を活かせる企業風土を作りあげることが役目なのだ。
では、具体的にはどうすれば良いのだろう。私は昨年、3S活動を通じて、社員の意識を向上させ、優れた企業風土作りに取り組んでみえる企業を見学する機会に恵まれ、自社の企業風土改革には、3S活動が良いきっかけになると教えていただいた。
今さらだが、3Sとは、「整理・整頓・清掃」のことを言い、これに「清潔・躾」を加えたものを5Sという。最近では、5Sに「作法」を加えた6Sを提唱される方も現れている。
3S活動の真の目的は、会社を綺麗にすることではなく、3S活動を通じて、社内に「守ることを決めて、決めたことを守る」風土作りをすることにあるのだ。決めたことが守れなかったり、やってもやらなくても一緒だと社員が感じるようではやる気は起こらない。決めたことを、PDCAのサイクルを回しながら、確実に実施し、ひとつずつ結果を出すことが大切だと考える。
こうして、3S活動を続けるうちに、徐々に皆の価値観が統一され、ベクトル合わせができることで、1+1は、2ではなく、10にも100にもなるである。
我々経営者が思っている以上に、社員は、会社のことを考えている。社員を信じ、任せることで、当たり前のことが当たり前にできる風土ができれば、それが企業革新につながると信じている。
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