愛知県でも同様な状況が発生しています。
ものづくり愛知の主要な産業である、一般機械や輸送機器などの分野では、NC:Numerical Control[数値制御]や、ECU:Electric Control Unit[電子制御部品](注1)などの特殊な機能を持ち出すまでもなく、あらゆる機能にソフトウェアの働きが必要となっています。これら機械や部品などに組み込まれたソフトウェアを組み込み系ソフトウェアといいますが、現在は、例えば自動車は以前の「エンジン」で走っていたクルマとは違い、ECU、つまりソフトウェアで制御され、走っているといわれています。ナビゲーションシステムなどの付属品に限らず、エンジンやブレーキ制御などの基幹部品までソフトウェアにより制御されています。また、家電や携帯電話などの身近な製品もソフトウェアの働きなしには考えられません。これら製品の機能の高度化、多様化に伴い、ソフトウェアの需要も拡大し、開発行程も複雑化し、最終的には製造業全体の技術者不足が拡大する結果となっています。
今後こうした人手不足を解消していくために、中国へ向けたオフショア開発を拡大していく上での課題は、次の2点が挙げられます。
まず、愛知県には中国のソフトウェア開発企業の事務所、支店等が少ないため、特に秘密保持やセキュリティ、結合検査等の点を考慮すると、日本企業側からオフショア発注をしにくいという点があります。
2番目としては、組み込み系ソフトはアプリケーション系と違い、組み込む製品によって開発条件が異なるので、製品に関する専門性が必要で、実践的な経験がないと開発できないという点があります。中国ではIT人材が豊富とはいえ、まだまだ経験者が少ないことも原因しています。
これらの対策として、近年、愛知県に拠点を設置する中国IT企業が出始めたり、日系のSIベンダー(注2)には、中国でのIT人材教育に乗り出す動きが出始めています。
やはり、日本の企業は相手の顔を見て仕事をする、あるいは取引きを決めることも多く、不具合が生じたときに国内に事務所が、それも東京ではなく、製造開発の現場に近い位置に事務所を構えられていると、安心できると
いう声を多く耳にします。中国IT企業が愛知県に拠点を設置するなどの動きは、対日オフショア開発をする際に、中国企業側にとって非常に有利に働いているものと考えられます。
今後も、愛知県企業の組み込み系ソフト開発の需要拡大などを意識しながら、日中のソフトウェア開発ビジネスの動向に注目してきたいです。
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