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「東海地域における最近の倒産動向と産業界の行方について」
中森 貴和 記事更新日.10.08.02
株式会社 帝国データバンク名古屋支店 情報部長
■PROFILE
帝国データバンク名古屋支店情報部部長。 本社情報部情報取材課長を経て、2009年4月から 現職。
企業分析から金融、不動産、流通、ベンチ ャーなどの経済分野、金融犯罪をフィールドにす る。

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■連絡先
株式会社 帝国データバンク名古屋支店 
〒450-8691 名古屋市中村区名駅五丁目17番10号
TEL:052-561-4846 FAX:052-586-5774
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東海経済は、政策効果や新興国向け需要の拡大によってようやく景気回復のすそ野が広がりつつある。一方で、「最悪期は脱したものの、回復は限定的」「中小の2極化が顕著」など厳しい声も根強い。たしかに、依然としてデフレと雇用不安が重しとなり、大手メーカーの回復が設備投資や所得、消費の回復へ波及しにくい構造はより鮮明になっている。自動車メーカーの生産拠点の海外シフトの加速や円高、原材料価格の上昇、9月末のエコカー支援の打ち切りなど、基幹産業である製造業の不安材料は解消されてはいない。東海地区では、リーマン・ショックに端を発した不況とデフレの深化の影響は製造、下請けメーカーと比べて、意外にも卸・小売、飲食チェーンなどのサービス・消費関連の方が大きいという地域特性が見て取れる。前年実績割れが続く名古屋市内の主要百貨店を見るまでもなく消費者の購買意欲は弱く、他の都市圏と比較しても回復テンポは明らかに鈍い。企業業績の回復が家計に波及していないのが実態なのだ。

たとえば東海地区、とくに愛知県の実状を象徴しているのが不動産セクターである。国税庁公表の2010年分の全国路線価をみると、「名古屋圏」は7.6%の下落。都道府県県庁所在地の最高路線価の下落率では、「名古屋市中村区名駅1丁目」(名駅通り)が東海地区最大となる20.2%の下落で、東京に次いで2番目。「名古屋市中区栄3」の大津通りは22.5%のダウン、「東京都中央区銀座」に次いでこちらも全国で2番目となった。不動産ミニバブルの崩壊に加えて、2008年秋以降の景気悪化による企業のリストラによって全国のオフィス賃貸料は下落が続き、名古屋でもオフィスを縮小・撤退する企業が相次いだ。オフィス需要の減少が賃料下落と物件の収益低下をもたらし、地価の押し下げ要因となった。  振り返れば、カネ余りや超低金利を背景として2005年頃から、外資系の不動産ファンドが都心超一等地を舞台に局地的なバブルを演出。ところがリーマン・ショックによってファンドが撤退、金融の急速な引き締めも相まって首都圏では不動産流動化ビジネスを主業とする新興デベロッパーの空前の大型倒産ラッシュが巻き起こった。ところが名古屋に目を向けると、当時の「不動産ファンドバブル」はあくまでも限定的であり、不動産関連の大型破綻も東新住建(負債430億円)、中央コーポレーション(同340億円)、セントラルホームズ(同129億円)程度にとどまっている。 実は、東海地区の不動産業界にとって大きな打撃となったのが"トヨタ・ショック"である。雇用・所得環境の急速な悪化による消費不況がテナントの収益を圧迫、ブランドショップの撤退が相次いだ。飲食店の売り上げ激減による収益性の低下で地価の下落圧力が増し、不動産の需給バランスは大きく崩れることになる。この地区は、"トヨタ・バブル"を存分に享受してきただけに、その反動は甚大だった。まさに、「トヨタ自動車」の存在感と消費マインドへのインパクトの大きさを如実に物語っている。

東海地区の厳しさは、倒産動向にも表れている。全国ベースでは2009年9月以降、倒産件数の減少傾向が加速しているにもかかわらず、東海地区は全国で唯一、依然として高止まり状態が続いているのだ。大型倒産ラッシュこそ鳴りを潜めているが、中小零細企業の消滅に歯止めがかからず、大手と中小零細の2極化が顕著になっている。 東海3県の2010年上半期(2010年1月〜6月)の倒産件数は520件、前年同期比5.3%増、前期比では0.8%増となり、半期ベースで2005年以降では最多、2006年上半期から8割近い増加となった。倒産は4月に1年8カ月ぶりに減少に転じたものの、5月、6月には再び、前年同月を上回った。緊急保証制度などの政府の中小企業支援策がそれなりの倒産の抑止力になっていることはたしかだが、その間も件数は増加基調を辿っている。業界・販売不振などを主因とする「不況型倒産」も86.9%と過去5年間で最高を記録。政府の中小企業支援にもかかわらず、倒産は依然として減少へ転じる兆しは見えない。

業種別では、公共事業の減少や個人消費の冷え込みによる住宅の販売不振が続く「建設」が前年同期比32.1%の大幅な増加。消費不振とデフレに苦しむ「小売」は100件、同8.7%増。2008年秋以降の大手メーカーの減速の煽りを受けて下請け業者の倒産が続発した「製造」も99件、同5.3%の増加となった。2010年上半期の「メーカー減産関連倒産」は36社、そのうち「自動車関連倒産」は26社発生している。東海地区の中小メーカーは、内部留保とともに好況時でも設備投資を控え、体力を超える借入金を抱えているところは比較的少ない。たしかに、外部環境や経営実態の厳しさと比べるといまのところ倒産は限定されているが、これとて緊急保証制度や中小企業金融円滑化法に依るところが大きい。 いうまでもなく、緊急保証制度やセーフティネット貸付などの公的支援は、あくまで一時的なつなぎ資金に過ぎず、これらによって売り上げ、収益が改善するわけではない。多くの中小零細企業の実態は好転していないだけに、水面下では信用収縮が燻り続けている。そもそも、返済猶予や借入金負担よりもビジネスモデルの再構築や収益回復のメドが立たないところに根本的な問題があるのだ。 今後の見通しとしては、倒産は零細規模への集中がさらに進み、水面下では下請けメーカーや建設、流通関連企業のリスケジュール要請が相次ぎ、倒産予備軍も増加を辿るだろう。中小企業金融円滑化法などの救済策によって倒産はある程度は抑制されそうだが、いまだ自律的な減少要因は見当たらず、当面は高止まりが続く公算が大きい。

東海経済では自動車産業への依存度が極めて高く、その縮小は下請けのみならず、先述のように消費マインドをも大きく後退させる。そもそも、自動車メーカーの業績回復は生産・在庫調整の一巡やリストラやエコカー減税や補助金などの政府の景気刺激策、そして新興国の回復に依るところが大きく、決して自律的なものではない。2009年の国内新車販売は31年ぶりの500万台割れ、5年連続で前年実績を下回り、ピークの90年と比べると4割も落ち込むなど国内市場の縮小、若年層のクルマ離れは深刻さを増す一方だ。2002年3月からの戦後最長の景気拡大は典型的な輸出主導であり、その象徴がまさしくトヨタ自動車だっただけに、その大減速のダメージは想像以上に大きいものがある。 もちろん東海地区のみならず、わが国の産業界にとっても自動車産業の存在は大きい。わが国の自動車産業は、完成品メーカーを頂点として部品メーカー、下請け、ディーラーまで含めるとその市場規模は2007年で70兆円、2008年では60兆円といわれ、10兆円の減少はGDP半期ベースで10%もの押し下げ効果になるという。さらに、自動車産業の全産業への経済波及係数はその約4倍ともいわれる。自動車産業の川上、川下に位置する鉄鋼、非鉄、石油化学、ガラス、塗料、電子部品、保険、金融などを含めるとなんとGDPの半分弱に達する。自動車産業の10兆円の減収が全体では40兆円にまで膨れ上がる計算になる。つまり、エコカー減税やエコカー補助金の経済効果を公共事業で賄おうとすれば10兆円規模の予算が必要となるわけだ。民主党政権が、需要の先食いに過ぎないとの批判があるもかかわらずエコカー補助金の継続に踏み切り、ここにきて10月以降の再延長論が浮上しているのも当然のことかもしれない。

ここ10年余りで大手企業と中小企業、中央と地方などの2極化構造は拡大・定着している。中小零細の多くはいざなぎ超えの好景気の恩恵をほとんど享受してはいない。急速な経済のグローバル化などによって、利益が川上から川下、つまりは大手から中小へと波及していく構造が崩れてしまったからだ。さらにリーマン・ショックを経て大手メーカーが発注先を半分に絞り込み、下請けの選別を強化した結果、勝ち組はごくひと握りという「中小企業の2極化」も進行している。自動車や電機メーカーは、価格競争と円高回避のためには生産拠点の海外シフトを加速せざるを得ないことから、産業の空洞化と雇用問題はさらに深刻さを増していく。 そして、未曾有の国内の空洞化がいよいよ現実味を帯びてきた。7月中旬、日産自動車がタイ製の新型「マーチ」の発売を発表、関係者に衝撃が走った。というのも、日本メーカーが国内で販売する主力の量産車を海外で生産、逆輸入するのは初めてのことだったからだ。もちろん日産だけでなく、今後はトヨタ、ホンダなども追随していくことはいうまでもない。世界の自動車メーカーは、10億人ともいわれる新興国の新中間層、いわゆるボリュームゾーンの取り込みにしのぎを削っている。新興国向けの主力は低価格車であることからも生産拠点の海外移管はさらに加速する。ハイブリッド車や電気自動車といった高付加価値製品の生産は国内に残るものの、国内生産の規模は否応なしに縮小していく。 トヨタ自動車の2010年3月期連結決算は1475億円の営業黒字、なかでもアジア市場の営業黒字は2035億円に達した。ところが、国内部門では2252億円もの営業赤字を強いられているのだ。因みに、日本の自動車メーカーの年間生産は世界の3分の1にあたる2000万台、そのうち半分が国内で製造している。そして、仮に国内生産が1割減少すると、その規模はマツダとスズキの年間売上高に匹敵する。それだけに、構造的な空洞化による国内の下請けメーカーへの打撃は計り知れないものがある。こうした「空洞化危機」は製造業に限ったことではない。人口が減少を辿って国内市場が縮小していくなか、ユニクロやヤマダ電機などの流通業者もゆくゆくは中国など新興国へ活路を求めるしかないだろう。

日本経済が抱える最大の問題は、「人口減少」と「需給ギャップ」に集約される。少子高齢化による地盤沈下によって、デフレ構造が慢性化しているわけだ。わが国はバブル崩壊後、先進国として初めてデフレに陥り、前回の景気拡大期でもエネルギー、食品価格の上昇のみでそこから抜け出せないまま再びデフレへ突入、経済成長がプラスであるにもかかわらずデフレが蔓延している。本来であれば、デフレとは経済の縮小現象であり成長率はマイナスであるはずだが、わが国では多くの企業は安売りによって量や売り上げを確保、量の確保のために値下げという悪循環に陥っている。その煽りを受けるのは、結局は体力に乏しい中小零細業者である。こうして、大手と中小の格差はさらに拡大していく。 菅政権は、「第3の道」として「強い経済、財政、社会保障」を掲げている。雇用と需要に重点を置いた財政支出によって、景気回復と成長を目指すものである。ただ、そのためには需要サイドの掘り起こし、供給サイドの構造改革が不可欠である。医療や介護などの分野は、規制緩和によって民間に委託するなどの大胆な規制改革が欠かせない。一方で、これまで欠落していた「競争を促す政策」と「セーフティネット」の両立にも取り組む必要がある。中小企業に対しては救済一辺倒ではなく、中小メーカーに対する起業・転業支援では現場に即した短期的、中長期的観点からの継続的なキメ細かい政策メニューが求められる。
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