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  トップ > 経営戦略レポート 特集 > 電子商取引トラブル事例:その特徴と対処法
安心・安全な電子商取引市場を目指して
その2:電子商取引トラブル事例:その特徴と対処法
沢田登志子 記事更新日.07.03.01
有限責任中間法人ECネットワーク  理事 
■PROFILE
1984年から2003年の間、経済産業省に在籍。1998年から2000年に電子商取引の消費者保護政策を担当。2003年4月から2006年3月に次世代電子商取引推進協議会(ECOM)主席研究員を務め、インターネット関連ADR実証実験「ネットショッピング紛争相談室」を運営する。2006年4月から有限責任中間法人ECネットワークを設立。電子商取引のトラブル事例、解決ノウハウを、ネット販売を行う事業者に還元している。

連絡先
〒101-0042 東京都千代田区神田東松下町45番地 神田金子ビル4F    
http://www.ecnetwork.jp/index.html  

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■電子商取引トラブルの特徴
前編では、電子商取引市場の現状と、事業者として知ってお くべき基本的ルールについて述べました。後編では、電子商取引に内在するリスクとして、電子商取引トラブルの特徴と実際の事例をご紹介します。対処法や心構えといったことにも触れてみたいと思います。
1.詐欺
電子商取引トラブルの特徴としてまず挙げられるのは、残念ながら「詐欺」が入り込みやすいということでしょう。電子商取引には、「取引相手の顔が見えない」という大きな特性があります。サイトには、それを補うだけの十分な情報が載っていないこともあり、載っていたとしても、事実かどうか確認するのは難しいのが実態です。また、他人への「なりすまし」も容易にできてしまい、匿名性の蔭に隠れた「詐欺」が行われてしまいます。

以前は、詐欺被害に遭うのは主に消費者でした。代金を払ったのに商品が送られて来ない、売り手と連絡がつかなくなる、というのが典型的なケースです。前編で述べた通り、オークションを利用した(個人間)取引で、このようなケースが増えています。しかし最近は、クレジットカードの不正使用等、事業者側が詐欺被害に悩む話を耳にすることが多くなりました。カード番号と有効期限だけで認証される仕組みを一歩進め、技術的な対策が普及することを期待するとともに、事業者側でも、何らかのリスク回避策が必要とされます。

2.法律解釈が不明確
インターネットの世界には、次々と新しい技術やサービスが生まれてきます。前編で、電子商取引に関連する法律をご紹介しましたが、全てのことが法律に書き込まれている訳ではなく、また既存の法律はインターネットを前提に作成されているものではないので、細かい適用や解釈に関して、関係者が判断に迷ったり、当事者間で判断が分かれてしまったりすることがあります。

典型的な例は、「契約成立時点」に関する見解の相違です。電子商取引では、ほとんどの場合、書面を取り交わすことなくオンラインのやり取りで取引を行うので、どの時点で契約が成立したかがはっきりしないことがよくあります。問題なく取引が終了すれば何も支障はないのですが、どちらか一方が、何らかの理由で、途中で取引を取りやめたいと思った場合、それが契約成立前か後かで、責任の度合いが大きく変わってきます。詳しくは、後述する「価格誤表示」事例でご説明します。

3.関係者が多数・・・責任の所在が不明確
電子商取引には、売り手と買い手だけではなく、取引に関係する事業者がたくさん登場するのも特徴の1つです。例えば、取引の場を提供するショッピングモールやオークションサイト、決済関連、物流、広告等、様々な関連サービスが、消費者に利便性を提供するとともに信用補完の役割も担うなど、関係が複雑化しています。

新しいビジネスモデルがどんどん生まれることによって電子商取引市場が活性化する半面、関係する事業者間で、役割分担に応じた合理的な責任分担がなされているかどうか、検証が必要なケースもあると思われます。また、消費者から見ると、自分の取引に関し、「誰がどこまで何の責任を負っているか」が明確になっていることが必要です。これについては、直接、消費者との契約関係に立つ事業者が、 消費者に対し、きちんと説明する必要があります。

個人ブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)1) の流行を背景に、「クチコミ機能」を利用した集客手段として、アフィリエイト2) やドロップ・シッピング3) が注目されています。無用のトラブルを防ぐためには、「販売責任を負うのは誰か」「物流リスクを負うのは誰か」といった点が、利用規約等で明確になっていることが重要です。

4.不特定多数が相手・・・ちょっとしたことで大きなトラブルに
今日、事業を行う上で、インターネットは貴重な情報源であるとともに、ネット上の「情報流通」をリスクの1つとして考えておくことが不可欠です。特に電子商取引においては、消費者は、様々な比較サイトで商品や価格を吟味し、「ネット上の評判」を十分見極めた上で購入店舗を決める傾向が あるので、掲示板などで「悪評」が立つと、事業はかなりの打撃を受けてしまいます。1人の顧客に対する対応が瞬く間に話題になり、良くも悪くも、その店への「評判」を左右してしまうこともあるのです。

ネットのもう1つの怖さは、常に不特定多数の(潜在)顧客を相手にしていることだと思います。「価格誤表示」の事例では、些細なミスが大きな混乱につながり、一定期間、店舗を閉鎖せざるを得なくな りました。その他、最小限の人員で運営している小さな店舗においては、想定を越えて多くの注文が入って、仕入れが間に合わなかったり、店の対応能力(梱包・配送等)を超えてしまったり、ということで顧客の不満を呼 ぶケースも見られます。

5.「常識」の違い
電子商取引においては、個人でも容易に売り手になることができ、中小零細事業者も、大きなコストをかけずに全国規模のビジネスができます。前編でも触れましたが、これが電子商取引の最も大きなメリットだと思います。

その結果、従来は市場に出回らなかった商品も購入できるようになり、消費者の利便性は大きく向上しました。半面、従来の事業者であれば当然に期待される「常識」を十分に持っていない売り手の存在も目につくようになりました。

例えば、返品を要求したら事業者から罵詈雑言を浴びせられた、というクレームがあります。顧客対応そのものが、トラブルの原因になってしまうケースです。返品・返金については合意したのに、返品に伴う数百円の送料をどちらが負担するかを巡って延々揉めている、といったトラブルも珍しくありません。これらを見ていると、どちらに正当性があるかという問題とは別に、事業者が、顧客と同じ目線で感情的に争ってしまうこと自体に疑問を感じることがあります。これらは、従来の取引には見られなかった、ネット取引特有の現象かも知れません。

その一方で、消費者の側にも、オーダー商品の注文を簡単にキャンセルしたり、送られた商品が気に入らないという理由で一方的に返送し、返金を要求したり、という 、やや身勝手な行動が見られます。電子商取引における消費者の中には、ネットで情報を入手し、自分で発信する人も増えています。売り手との力関係が、従来型の取引とは少し変わってきているところがあるのです。だからこそ、「契約」という概念を、取引当事者お互いが十分に理解することが必要であり、市場全体としては、売り手と買い手に共通する「常識」、それぞれに期待される「マナー」をきちんと確立していく必要があると思います。

6.メールがトラブルに
顧客相手に「喧嘩状態」になってしまう背景には、売り手の多様化とともに、電子商取引ではメールだけでコミュニケーションすることが多い、という点も挙げられると思います。電話や対面でのやり取りであれば、声のトーンや表情も一緒に伝えることができますが、メールでは、自分が意図したよりも強く相手に伝わってしまうことがあります。メールをやり取りしているうちに、お互いについつい熱くなり、売り言葉に買い言葉で喧嘩状態になってしまう例を見ると、顧客対応をメールだけに頼る 場合は、相当慎重に、表現を工夫する必要があると感じています。
<参考>
1)
人と人とのつながりを促進するように設計された、コミュニティ型のウェブサイト。       
2)
個人が自分のブログ等で商品の紹介をし、ショッピング・サイトへのリンクを張る。消費者がそのリンクをたどって購入すると成果報酬が支払われる、という仕組み。     
3)
アフィリエイト同様、個人も含め、商品供給者とは異なる者が商品紹介を行って注文を受け、販売手数料を得る仕組み。在庫を持たない点は共通だが、価格決定権があるという点がアフィリエイトと異なる。実際の配送は商品供給者が行う。     
■電子商取引トラブル事例・・・価格誤表示
電子商取引のいくつかの特徴が典型的に表れたトラブルとして、2003年頃に頻発した「価格誤表示」の事例をご紹介します。

これは、サイト上で商品の価格を間違って表示してしまうという、事業者のミスに起因するものです。例えば、198,000円のパソコンを19,800円と一桁少なく表示してしまい、多くの人から注文が殺到するというケースが典型的です。

1.法解釈として
これらの注文に対し、売買契約は有効に成立しているか、事業者側から「錯誤による無効」の主張ができるか、という2点が法的な論点です。電子商取引においては、「承諾の通知」が申込者(この場合は注文者)に到達したときに契約が成立します 4) 。通常、注文があると、「ご注文ありがとうございました」という自動返信メールが送られますが、これが注文者に届いたことをもって契約成立といえるか、ということが問題になりました。注文者が「契約成立しているので(誤表示価格で)商品を引き渡せ」と主張するのに対し、定まった解釈がなかったのです。

複数の事例を通じて確立されつつある結論は、「ケースバイケース」、すなわち、自動返信メールや注文受付時に表示される画面が「承諾の通知」そのものであるケースもあれば、そうでないケースもあり、利用規約や自動返信メールの内容によって 個別に判断される、というものです5)  。また、契約が成立していた場合、過失のあった事業者側から、「錯誤による契約の無効」6) を主張することができるかという点についても、「基本的には難しいが、注文者が誤表示と認識していた場合は例外的に錯誤無効を主張できる」という解釈が示されています 7)

2.トラブルの影響
この種の間違いは、通販サイトでは以前からたびたび起こっていました。意外な安値に惹かれて注文した顧客が1人だけであれば、相対交渉を行い、合意された価格で販売するといった対応も可能です。過去、そのように解決したケースもありました。しかし最近では、価格比較サイトでトップに表示され、さらに、掲示板などに書き立てられた結果、わずかな時間に、何千件もの注文が入ってしまうことも少なくありません。

事態に気づいて慌てた担当者が、お詫びとキャンセル依頼のメールを注文者全員に送ったところ、宛先をbccではなくccに入れてしまい、個人情報(メールアドレス)流出という二次クレームを引き起こしてしまったケースもあります。誤表示価格では売れない、と方針を決めたとしても、クレームのメールや電話に対応し、振り込まれてしまった代金を返金するといった作業は、マンパワーの限られているネットショップにとっては大きな負担です。数か月間、サイトを閉鎖せざるを得ないことも多く、最後まで納得しない注文者が、訴訟を提起した事例 8) もありました。

3.トラブルを未然に避けるには
このようなトラブルが起こらないようにするには、もちろん、表示ミスを起こさないことが第一です。全て目視確認というのは現実的ではないとしても、チェック体制をきちんと作るだけでも、ある程度はミスが防げるでしょう。

次に大事なのは、どんなに気をつけてもミスは起こってしまうという前提で、影響を最小限にするための措置です。例えば、1つの商品に対して一気に何千件もの注文が入ってしまうことがないよう、システム上、上限を設定したり、短時間に一定件数を超える注文が入った場合は警告が来るようにしたり、といった対策は採れないでしょうか。また、万が一間違いがあっても早期に発見できるよう、商品情報の更新を日中に行う、といったことも検討していただければと思います。

法的な面でのリスクヘッジも重要です。前述の通り、契約成立後に錯誤無効を主張するのは、いろいろな条件がそろわないと難しい面もあるのですが、そもそも契約が成立していなければキャンセルすることは可能です。誤表示のリスクを危惧するのであれば、利用規約等に契約成立時期を明記し、自動返信ではなく、改めて(在庫や納期を確認した上で)承諾通知を送るようなフローにしておくべきでしょう。もちろん、どの時点に設定するにせよ、契約成立プロセスを明確にしておくことは消費者にとっても良いことです。

ただし、契約成立時期を先に延ばすということは、それまでの間、消費者からの注文キャンセルも許容するということになります。それを避けたい場合は、自動返信で契約成立とすることも可能です。自社にとってのリスクの軽重・発生可能性等を勘案し、個別に判断してください。

4.起こってしまったら
できるだけ早くウェブ上にお詫びと対応方針を掲載し、さらに注文者1人1人に連絡を取ることをお奨めします。契約成立プロセスを明確にしておくことは重要ですが、たとえ規約上は契約成立前であることが明らかでも(裁判では勝てたとしても)、注文者が納得するかどうかは別の問題です。実損はないとはいえ、欲しかったものが安く買えるという期待感を裏切ってしまった点については、真摯にお詫びすべきだと思われます。こうした場合、お詫びと言いながら、「法的には何ら問題ない」という 事業者側の主張があまりにも前面に出ている説明文が時々ありますが、これによって余計にトラブルが長引いてしまうこともあります。

対応方針の中では、期せずして集まってしまった注文データをどう取り扱うべきか、という問題も重要です。販売されないことがわかると、自分の情報を削除するよう要求してくる注文者もありますが、その情報は「不正な手段で取得された」とは考えにくいので、個人情報保護法上、削除義務があるとは必ずしも言えません。しかし、間違って取得されたものであれば、一度、きれいに削除するということでも良いのではないかと思います 9)

<参考>
4)
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律第4条       
5)
次世代電子商取引推進協議会ネットショッピング紛争相談室「通販価格誤表示問題に関するネットショッピング紛争相談室の考え方」       
6)
民法第95条
7)
脚注5に同じ。経済産業省「電子商取引等に関する準則19年改訂版」においても同様の解釈が示される予定。      
8)
東京地判平成17年9月2日(レ)第135号      
9)
次世代電子商取引推進協議会ネットショッピング紛争相談室「事業者側から注文をキャンセルする場合の注文者の個人情報の取り扱いについて」     
■終わりに
電子商取引には、このようにトラブルもリスクもあるが、いずれもちょっと気をつけることで、コントロールが可能なものと考えられます。少しの工夫と顧客重視の心構えがあれば、電子商取引のメリットを最大限に活かし、楽しくビジネスの幅を広げていただくことができると信じています。

有限責任中間法人ECネットワークでは、こういった、電子商取引における顧客トラブルの問題に焦点を当て、事業者の皆様のお手伝いをしています。是非一度、ECネットワークのサイト を訪れてみてください。

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