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中小企業の海外における模倣品被害への対応
松吉恭裕 記事更新日.08.10.01
名城大学 学術研究支援センター
■PROFILE
S48年3月   茨城大学 工学部 卒業
S48年4月   伊奈製陶株式会社(現 INAX)入社 特許課配属 【発明発掘、出願】
S61年1月   技術管理本部 開発管理部 特許課 【課長 訴訟、契約】  
          (知的財産協会 東海地区幹事、関西部会幹事)
          (知的財産協会 意匠・商標初級コース 講師)
H6年1月    空間技術研究所 空間試作開発室 【室長、新規事業、工房長、Pj.リーダー】
          (実験工房長 兼務、通産省ハウスジャパンPj.リーダー兼務)
H11年7月   財団法人 科学技術交流財団 出向 【参事 産学官連携JSTコーディネータ】
          (RSP研究成果活用型コーディネータ)
H16年3月   株式会社 INAX 退社
H16年4月   名城大学 学術研究支援センター 【知財・産官学連携】  

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■はじめに
海外での模倣品被害が、テレビ・新聞などで報じられることが多くなり、否応なしに商標への関心が高まっています。特にこの地域においては、「矢場とん」の商標が図形と共に韓国で登録されており、さらにその関心が高まっています。

また、模倣事例は中国、タイ、インドネシアなど多くの国で発生しており、その対策は国レベルでの対策が必要となっています。

このような状況の中で、企業名や商品名である商標さらには地方自治体の名前まで商標登録され、あたかも日本製であるかのごとき粗悪品が流通する事態となっています。

知的財産部門を有する企業はその対策要員を配置し対応していますが、中小企業においては事業の確保でいっぱいの状態であり、その対応については放置するか、その事実はないものの不安の中で時間が経過するのみとなっています。

費用対効果を考えた、より効果的な対策を打ちつつ事業の確保をどのようにすればよいかについて以下に説明いたします。

■「本物もどき」と「模倣品もどき」について
模倣品とはなにか? またその被害者は?
まず、模倣品とはなにかについて整理してみたいと思います。
模倣品には次のように分類することができます。
     模倣品⇒@外観が類似若しくは同一のもの(意匠法)    
               ⇒A呼び名が類似若しくは同一のもの(商標法)      
               ⇒B本や音楽CDなどのコピーで海賊版とよばれるもの(著作権法)      
               ⇒C本物もどきの商品(意匠法、商標法、著作権法など)
以上のように、デザインや商標、さらには音楽CDなどのコピー品があります。

また、本物もどき(模倣品もどきと言うかもしれない)とも呼べるような明らかに模倣品であるが誰が見ても粗悪品であり、本物ではないことが一目瞭然のものもあります。

模倣品により誰が困るのかを考えてみると、ルイ・ヴィトンのバックのように外観がそっくりのものやSONYのテレビというように商標が同一の場合、購入者は本物と思い購入することとなるため、購入後の不具合や満足度を害されることとなり、購入者の損出は多大です。また、このことは「買ったほうが悪い」との認識がある場合は個人の損害のみで済まされるが、不具合についての所謂クレームが本物を製造販売しているところに来ると「わが社の製品ではありません。」との説明で納得してもらえることは極めて少ない。このことにより、正規の製造・販売メーカーは商品の不具合による信用の失墜は、被害が大きいばかりでなくその後事業活動への影響も大きく重大事項となります。
従って、上記@とAの場合は購入者と製造・販売の会社に大きな損失となります。

また、上記BとCのように購入者は最初から価格と商品との関係や、販売者から模倣品や海賊版であることを教えられて購入する場合の被害者は会社のみとなります。

■本家本元なのに、なぜ訴えられるのか? 」について
「日本でかなり前から使用している」、「日本で登録になっている」や「これは日本語だろう(現地で登録?)」など納得のいかないことが起こるのが海外市場です。安全・安心のイメージの良い日本製であることは市場で受け入れられる証です。  

従って、現地の企業は日本での展示会や市場調査で「売れる」と思うものを現地でいち早く権利化(商標出願など)することとなります。この場合は、「先に出願したものが権利者」となるため、日本で権利を所有していても現地では権利者となれず、現地で販売などをすると侵害者となります。市場が見えてきたときには、現地(海外)出願することが重要となります。

模倣品被害を防ぐためには意匠権、商標権などの権利確保が必要です。これらは権利を主張する国ごとに、さらには商品ごとに権利を取ることが必要であり、商品が一つの場合は一件の出願で、対策が必要な国ごとに出願し、権利を確保することとなります。

日本での権利確保を先ずしておくことは、当然のことです。
また、出願をせずに「わが社は10年以上前からこの商標を使用している。」と言っても商標はいち早く出願した者が権利者となるため、まずは出願することが対策の第一歩です。   

また、このことからわかるように進出前には、出願することとは別に、先願(先に出願した事実がないかどうか)調査することが必要です。

■模倣品対策について
権利確保しているからこそ侵害と言える侵害の事実を確認した時の対策は、以下の通りとなります。
   ⇒侵害品を確認
   ⇒製造、販売業者を特定
   ⇒損害賠償の請求(在庫の廃棄、謝罪広告の請求なども同時におこなう。)   
と言うこととなりますが、ことは故意に模倣する相手であり、費用と手間をかけなければ解決しないケースがほとんどです。

また、次から次へと模倣品が発生することがあり、費用と手間をかけてでも会社の成長と信用を確保するためには必要な行為です。   

然しながら、中小企業にあってはなかなかこのような対応をすることは困難です。   
これらを考え段階ごとの対策を以下に示します。

                                   費用   
【第1段階】                        ・・・・10万円     
  必要な権利を日本で確保する。   
【第2段階】                        ・・・・20万円     
  海外でも事業進出の可能性が出てきた。     
  海外市場でも求められている商品であると思われる。      
   ⇒必要な国に出願し、権利を確保する。
【第3段階】                        ・・・・50万円
  進出予定・既進出国での模倣品をウォッチする。      
   ⇒調査会社を利用することも考える。
     (初期の段階で対応することが費用を最小にする。)   
【第4段階】                        ・・・100万円     
  模倣品に対して厳格な態度で臨み、これには現地の専門家とともに対応する。   
【第5段階】                        ・・・300万円     
  社内での模倣品対策を担当する者を決め、海外での情報収集をこまめに行う。   

以上、対策を段階的に示しましたが、これらには費用がかかるものであり、目安としての費用は、出願1件で国も一つの国での概算費用を示すと上記右欄となります。国が増えればその数を掛けた数字が費用となります。

上記【第4段階】や【第5段階】においては、早めの対応が被害や対策費を最小にするものであり、現地の担当者(社員や協力者)に権限の委譲しておくことも早期解決に役に立つこととなります。

被害である事実をいち早く確認することが重要であり、少なくとも1回/月は現地に行き情報収集を自分の目で確認するとともに「どこで、だれが、いくらで、どのように」して製造または販売しているかを確認することが必要です。

■まとめ
「中小企業の模倣品対策」について上述したが、中小企業であっても大企業であっても、会社の重大案件であり、海外進出を断念あるいは撤退するかのみでは片付かない場合が多く、何らかの対策が必要です。

中小企業にあっては、対応するために人・資金が潤沢ではない場合が多いため、@県や国の支援策を利用しながら、また支援策の中には専門家派遣などもあり、専門家の意見や指導を得ながら対応することが最も効果的です。またA意匠法や商標法については、「我社の知的財産はこの技術・この商品のこの部分である。」と言うように何が知的財産であるかを知り、確保することが競争社会での生き残りの最善策の一つであるため、これらB知的財産権についての知識と利用を常に考え、実行することが必要です。これらをスムースに行うために現地進出企業との連携や、デザインの一部に判別するための小さな突起(隠しマーク)などをあえて付加しておくことや、技術のブラックボックス化することも模倣を防ぐための対策となります。

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