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レーザーで点火!?エンジンの革命がはじまる!
平等拓範 記事更新日.06.08.17
自然科学研究機構分子科学研究所 助教授 
■PROFILE
自然科学研究機構分子科学研究所 分子制御レーザー開発研究センター助教授
1983年福井大学卒 
1985年福井大学大学院修士課程修了    
     三菱電機(株)LSI研究所研究員 
1989年福井大学工学部助手 
1998年2月より現職 東北大学博士(工学) 
1993年〜1994年 文部省長期在外研究員(スタンフォード大学応用物理学科) 
1999年〜現在 理化学研究所客員研究員 
2001年〜2006年 物質・材料研究機構客員研究員
2005年〜2006年 パリ第6大学客員教授

<専門分野>
分子科学応用を目指したマイクロ固体レーザー,非線形波長変換法の研究

連絡先
自然科学研究機構分子科学研究所
〒444-8585 岡崎市明大寺町字西郷中38番地
TEL: 0564-55-7246   FAX: 0564-55-7246

印刷用ページ
自動車のエンジンは、プラグの火花でガソリンの混合気に点火、燃焼させてパワーを得ている。今、プラグの代わりに、レーザー光を使ってエンジンに火を点そうという開発プロジェクトが進んでいる。今回は、このプロジェクトをすすめる 自然科学研究機構 分子科学研究所 平等(たいら)拓範 助教授を訪問した。(取材は(財)科学技術交流財団  出口和光、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)松山豊が担当)。
■レーザー光でエンジンを点火!?
― 先生はたくさんの分野でレーザーに関連する研究をされていますが・・・・
平等 最初は環境計測を、最近は分子科学への応用を意識し固体レーザーのマイクロ化と高性能化を進めてきました。今日は、愛知県さんの関連として、マイクロレーザーで内燃機関を点火・燃焼させるプロジェクトについて紹介しましょう。
― どのような研究でしょうか?
平等 この「光波反応制御内燃機関をめざしたマイクロレーザーの研究開発」プロジェクトは、平成17年度に「研究成果活用プラザ」の課題として採択され、今春より(株)日本自動車部品総合研究所、(株)豊田中央研究所、(株)デンソーと共同で始めたものです。
― メンバー企業の顔ぶれがすごいですね
平等 従来の自動車のエンジンは、スパークプラグの火花でガソリンの混合気を着火しています。この場合、着火する位置は、シリンダーの中の1か所、それも混合気の上端の方での着火なので、そもそもガソリンをムラなく、ムダなく、効率的に燃焼させることが難しいのです。
― なるほど
■レーザー光で狙った最適の着火を実現
平等 そこで、レーザーの登場です。レーザー光は容易に集光位置を制御できるので、狙った場所に、また、1か所ではなく、瞬間的に複数箇所に着火する ことも可能です。これで、燃焼効率が高くなり、CO2の削減(省燃費)、出力向上に効果を示します。

― なるほど、レーザーでエンジンに点火とは、すごい着想ですね
平等 この発想自体は、以前からあったのですが、問題は、レーザー光の発生装置が大きいことでした。電力は3相交流200ボルト、発熱を抑える水冷装置が必要・・・・といったように、とても自動車に載るほどの大きさでは無いため、未来技術としての基礎研究が進められていました。一方で、我々が1990年より進めてきたマイクロ(チップ)レーザーの高出力化・高性能化が進み、今回のような共同研究提案に至りました。
― 手のひらサイズのマイクロレーザーがカギなのですね
平等 そうです。すでに、金属の切断、溶接から微細加工もできる強力精密レーザーが、工場に導入されていますが、我々は小さくてもそれ以上にパワーが集中できる、手のひらサイズのレーザーを実証しました。バッテリーで駆動も可能な省電力です。また、点火させる位置を自由に設定することで、燃焼効率を上げたり、クリーンな排気にする燃焼を実現することが望めます。
■レーザーの小型化・高性能化がLSIのように大変革をもたらす
― これはすごいですね
平等 そうですね。大きさが小さくなるだけでなく高性能化も図れるということでは、ちょうど、エレクトロニクス分野と同じ展開が可能と思っています。真空管で作った初期のコンピュータは体育館ぐらいの大きさで様々な 制約があった為、一部の科学者だけの道具でした。電子回路が、固体化・集積化によるLSIチップ化されコンピュータが急激に普及し、我々のライフスタイルも変えました。固体レーザーもマイクロ化、チップ化により変革を起こせると期待しています。
― レーザーのマイクロ化、チップ化を可能にしたのは、どんな発見からですか?
平等 当時の常識について疑ってみたことから始まりました。一般に固体レーザーは、種々の制御装置を内部に組み込み高性能化するものとされていました。そのため、装置はどんどん複雑で大きな物になってしまいました。我々は、逆にそれらを取り除くことを考えました。新しいレーザー材料の提案もあり、そんなことも可能では無いかと考えました。しかし皮肉なことに新材料の特性を調べて行く内に、既存材料について報告されている値が実験と合わないことが判り、物性値も使い方も基礎に立ち返って研究し直すべきだったと いうことになり、現在に至りました。
― そうなのですか
平等 これまでは、レーザーの技術者が、正確ではない性能数値を利用して、レーザー装置を設計・開発していましたから、小さくできないだけでなく、効率や性能もある種、限界とされ、エンジンを点火できるような高出力レーザーを車に搭載する事は不可能と考えられてきました。
― レーザー点火のエンジンへの期待?
平等 限りある石油資源の節約とモビリティ分野でのCO2排出低減の見地から、低燃費のエンジンに対する要求が益々高まっています。また、天然ガスを使ったコージェネレーションシステム用のエンジンの場合には、メンテナンスコスト低減の観点から、電極磨耗が少ない点火系が要求されております。小型のレーザー点火装置が開発できれば低エネルギで点火でき、しかも点火位置や着火数自由度が高いので燃焼効率の向上に有効です。また、電極がないので、スパークプラグのような電極消耗にともなう着火能力の低下が無い、電極での火炎冷却が無いので火炎核成長速度が早いといったメリットがあります。  
このプロジェクトでは、エンジン開発者の皆さんが熱望している小型のレーザーを早く開発して、地球環境の改善に役立てたいと考えています。
― 先生のそのほかの研究や今後の研究などをお教えください
平等 福井県の地域結集事業のメンバーとして参画した開発では、このマイクロチップレーザーを光造形システムに利用しようということで取り組みました。これは、携帯電話などモデルチェンジが激しい製品の型を作る時間を減らすものです。製品の形状のデータから、金属粉末をこのレーザーで溶着させて短時間で型を作るフォトマシニングセンターというものです。写真(a)にありますYb:YAGセラミックレーザーでは、わずか300µmのチップから連続波で340Wを出すことができます。パワー密度にして57kW/cm3ですので、まだまだ高出力化が期待できます。

写真(a)

― なるほど、おもしろい技術ですね
平等 一方で、写真(b)のマイクロレーザーの特徴を活かして、 (独)通信総合研究所、浜松ホトニクス(株)と共同して、地球と人工衛星間の距離1500kmを15cmの精度で測ったり、 理化学研究所の川瀬グループ(現在、名古屋大学教授)と共同で、携帯型テラヘルツレーザー(例えば封筒の中にある、薬物の種類の判別等が可能)の開発等を展開しています。さらにはレーザーの中赤外、可視、紫外光領域への波長変換に関する研究も進めています。

写真(b)

■波長域の拡大 : レーザーディスプレイなど
― 波長変換、これは、また大きな応用分野ですね。
平等 そうですね。高彩色レーザーディスプレイや高品質印刷機器を目指した連続波発振高出力可視光発生(写真(c) など)、大容量情報記録を可能とするホログラムメモリのための高出力グルーンパルス発生なども民間の方と共同で検討しています。これらの提案も以前からあるのですが、装置が大掛かりで、不安定になるため現実の物としては考え難かった応用ですね。

写真(c)

平等 ここまで産学連携に関する話題が中心になりましたが、我々が進めている基礎研究と運良く目指す所が重なったことと御理解下さい。そもそも私の分子研での課題は波長域の拡大にあります。この目的のもとマイクロレーザーと波長変換法につき精力的に研究開発 を行ってきました。最近になり、図3にありますように、これまで紫外光から可視光、近赤外光、中赤外光から遠赤外光のテラヘルツ波領域までを手のひらサイズ光源でカバーすることに成功しました。物質と光の相互作用を追求する為にも、 より広い波長域において干渉計が組めるような単色光や物質加工が可能な高輝度光を出す装置を、利用者の観点からポケットサイズに納める。そんな努力を続けております。

図3 マイクロ固体フォトニクスにより手のひらサイズ光源で発振を確認した波長域

― 先生が、レーザーのマイクロ化に成功したカギは何でしょうか?
平等 良い仲間との出会い、そして新材料の研究成果というと、カッコいいの ですが、先ほどお話しましたように、結局の所あまり特殊な ことはしていません。しかし、身近にある材料でも、その基本特性をちゃんと理解し設計して いるのかとどうでしょう?まだまだわからないことが多々あるけれど、 取りあえずできるから造っているというのが実情なのではないでしょうか。すでに 存在する光学材料の評価やモデル化など、既知のものは先端研究でないとして敬遠され、商品に結びつかないため応用研究としても周囲の理解を得難いよう です。いつの間にか、両者の間に埋め難い溝ができていました。そこで我々はマイクロ化を念頭に置き、自分たちで実験し直すことから始めました。地味な 作業ですが結構色んな事が判りました。この先端研究と応用研究のギャップを埋める基礎研究に、成功のカギが有ったといえます。考えるに大学や研究所の 役割は、こういった手の出し難い隙間を埋める基礎研究にあるのではないでしょうか。だからこそ産業界と理想的な連携が可能と信じています。最後にこの 場を借りて、すぐには評価されないと判りながらも信じてくれた仲間達に感謝したいと思います。
― ありがとうございました
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