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生命現象をつかさどるタンパク質構造の解明
〜小型シンクロトロン光源で拓く、医療・産業応用の道〜
山根 隆 記事更新日.07.04.00
名古屋大学大学院工学研究科教授
■PROFILE
昭和21年11月26日生
昭和44年 3月 大阪大学工学部応用化学科卒業
昭和46年 3月 大阪大学大学院理学研究科無機及物理化学専攻修士課程修了
昭和47年 8月 大阪大学大学院理学研究科博士課程退学
昭和47年 9月 大阪大学助手(溶接工学研究所)
昭和49年 8月 名古屋大学助手(工学部)
昭和50年12月 理学博士
昭和54年11月 名古屋大学講師(工学部)
昭和61年 7月 名古屋大学助教授(工学部)
平成 8年 4月 名古屋大学教授(工学部)
平成 9年 4月 名古屋大学教授(大学院工学研究科)       
平成18年 4月 名古屋大学総長補佐(労働安全担当)      
<専門分野> 構造生物学、無機生物化学、構造化学
<所属学会> 日本化学会、日本生化学会、日本結晶学会、日本放射光学会、日本ウイルス学会
<研究テーマ> 大阪大学時代からタンパク質の結晶構造解析に従事、現在はタンパク質の結晶構造を基にした構造生物学的研究やab initio構造解析法の開発を進めている。
 <関連する研究テーマ>
1. 糖分解酵素やアミノ酸代謝に関係する酵素の分子構造と機能の解析
2. 特異的認識によりタンパク質分解を制御するユビキチンリガーゼの構造と機能の解析
3. ユビキチン系以外の細胞内タンパク質分解酵素系の構造と機能の解析
4.タンパク質構造解析の方法論、タンパク質の結晶化

連絡先:名古屋大学大学院工学研究科
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
TEL 052-789-3339/FAX 052-789-3218
印刷用ページ
遺伝子情報が解明されれば、病気や生命現象が解明できるわけではない。遺伝子情報は設計図であり、そこから作られる約5万種類ともいわれるタンパク質が、実際にはわれわれの体を作り、生命現象を引き起こしている。 今回は、このタンパク質の構造を明らかにし、細胞での働きの解明にチャレンジする 名古屋大学大学院工学研究科 山根 隆教授の研究室を訪問した。(取材は(財)科学技術交流財団 出口和光、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)松山豊が担当)。
■タンパク質は数千〜数十万個の部品からなる精密機械?
― まず、先生がどのようなご研究をされているのかについてご紹介ください
山根 それでは、まず、タンパク質についてご説明しましょう。遺伝子の配列(遺伝情報)が解明されれば、病気や生命現象が解明できるような話がありましたが、実際は、遺伝情報に基づいて作られるタンパク質が、複雑な構造や機能を持っていて、これを明らかにしないとわからないことが多いのです。
― ヒトゲノム解析とか話題になりましたが、実際はタンパク質が重要であると・・・
山根 そうです。そのタンパク質の種類は、人間で5万種類あると言われます。そのうち基本的な形である3,000種類を解析しようという、「タンパク3,000」という文部科学省プロジェクトにもわれわれは参加しています。
― タンパク質分子1つはどの程度の大きさなのでしょうか
山根 一つのタンパク質は、数千〜数十万個もの原子から構成されています。タンパク質が、時期・場所を含めて、正しく働くことによって生命は維持されています。タンパク質は、いわば、数千〜数十万個もの、原子という部品から構成される精密な機械といってもいいでしょう。
― 自動車の部品が約2万点といわれますから、相当複雑なものですね
■タンパク質の構造を決める
山根 私の研究のテーマは、大きく3つの分野に分かれます。一つが、タンパク質の構造を決める方法の開発、2番目がタンパク質の構造を基にその機能との関連を調べる研究、および、タンパク質・核酸などの1分子のダイナミックなイメージをとらえる研究です。2番目の研究では、細胞で不要なタンパク質の分解がどのようにおきているのかという病気に関係するタンパク質、それに糖・アミノ酸の生産に関連する酵素が主な対象です。
― まずはタンパク質の構造を決める研究についてお教えください
山根 タンパク質は、さきほど申しましたように、数千〜数十万個もの原子からなりますが、構造を調べるためには、まず結晶にすることが必要です。いかに結晶を作るかの工夫と、作った結晶から、X線でいかに構造を解明するかが、研究のポイントとなります。
― タンパク質の結晶というとあまりイメージがわかないのですが・・
山根 結晶は、工業的にシリコンを作るときと同じように、タンパク質が溶けている溶液の中で、タネとなる小さな核から成長させます。この結晶を成長させるのが難しいのです。溶液の純度や温度だけではなく、重力による対流の影響も懸念されるので、宇宙での実験にも取組みました。この実験は、スペースシャトルの事故で残念な結果になってしまいましたが。

山根 こうして結晶を100ミクロンくらいまでに成長させてから、X線を透過させると、結晶中の原子の位置等によって結晶を通った後のX線の強さにパターンができます。このパターンから、計算機のシミュレーションによってタンパク質の原子の構造を決めていくのです。
― なるほど
■不要なタンパクが分解されないと細胞にダメージ
山根 それでは次に、細胞でタンパク質の分解がどのようにおきているのか、についてお話しましょう。生命は、タンパク質を吸収・分解し、生命維持に役立てていますが、その一方で不用となったタンパク質を分解することも大変重要な機能を担っています。
― どういったことでしょうか
山根 正常な細胞の内部では、細胞にとって不用と評価されたタンパク質が認識され、続いて分解されます。これが、何らかの原因でスムーズに行われなくなると、分解されない異常なタンパク質が細胞内に蓄積し、細胞にダメージを与えます
― なるほど、ごみで細胞がやられてしまうのですね
山根 こうして分解されないタンパク質が病因のひとつとなって、アルツハイマー病やパーキンソン病など、さまざまな成人病を引き起こすことになります。私たちは、こうした病因に関連するタンパク質の分解を行う酵素の構造や機能の解明を進めています。
 

■D-アミノ酸だけを選択的に生産する酵素
山根 次に糖・アミノ酸の生産に関連する酵素の研究ですが、これは、D-アミノ酸を例に取りましょう。
― D-アミノ酸ですか
山根 タンパク質の基となるアミノ酸には、L体とD体と呼ばれる光学異性体(右手と左手のように、形状は同じでも鏡で映した像の関係)が存在します。
― Lグルタミン酸ナトリウムとかのLですね
山根 そうです。体内に存在するアミノ酸のほとんどはL体なのですが、最近D-アミノ酸も発見され、その役割が注目されています。また、工業的には、糖尿病や高血圧向けの医薬品、農薬、食品(甘味料)の合成原料として、D-アミノ酸の用途が拡大しています。
― なかなか世の中にない、鏡の世界の分子ですね
山根 化学合成では、LとDが50:50できてしまいます。Dだけを作り出すことが難しいのですね。いろいろな酵素をスクリーニングしてみた結果、D-アミノ酸を選択的に生産できる酵素が発見されました。私たちは、この酵素の構造や反応機構の解明を進めています。
 

■シンクロトロン光施設が医療、産業にもたらす恩恵
― 先生のご研究では、シンクロトロン光をご利用されると聞きますが
山根 1982年に日本では最初に筑波に放射光科学研究施設ができましたが、その当時から、シンクロトロン光(放射光)X線のユーザーとなってタンパク質の構造研究をしています。この光は、タンパク質を研究するにあたって、欠くことのできないツールとなっています。
― シンクロトロン光というとSPring-8のほか、今、愛知県での建設が計画されている小型シンクロトロン光施設ですね
山根 そうですね。SPring-8が利用できるより前は、タンパク質の結晶が1ミリくらいに成長しないと分析できなかったのですが、SPring-8のような強力なX線が得られるようになると、小さな結晶でも構造や働きがわかるようになってきたのです。
― 小さな結晶でも解明できることのメリットをお教えください
山根 たとえば、病気や創薬の研究では、人のタンパク質が重要になってきますが、なかなか量が生成できず、結晶化させるのも、それが研究テーマになるほど難しいという問題があります。強力な放射光であれば非常に小さな結晶でも構造が決定でき、結晶を成長させるための時間が節約できます。
― なるほど
山根 また新薬の開発では、たとえば、新薬の可能性がある数百種類のリード化合物をスクリーニングする際にも、シンクロトロン光を利用することで、分析の時間が何十分の1に短縮できる可能性があります。開発は、時間との競争ですから、このようにシンクロトロン光は研究や開発を進める上で大変な恩恵をもたらします。
― 科学技術交流財団で開催している「小型シンクロトロン光源とその医療・産業応用に関する研究会」についてお教えください
山根 この研究会では、今後、愛知県が進める「知の拠点」で、建設が計画されているシンクロトロン光実験施設を利用して、医療に貢献するタンパク質の構造研究だけでなく、メカニクス、エレクトロニクスや材料等の開発など、広く産業に応用することを検討しています。
― 幅広い産業や企業から期待される装置なのですね
山根 このシンクロトロン光実験施設は、大学の研究者や企業の開発者がかかえる、先端的な研究から、現場で直面しているテーマまで、幅広い応用が期待される中心的な施設になるでしょう。また、筑波や東京には、こうしたシンクロトロン光施設を技術的に支える企業が見られますが、この地域でもそうした企業が育つことを期待したいですね。
― タンパク質研究と医薬品開発、また放射光施設の重要性がよくわかりました。ありがとうございます。
 
 

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