『熱処理』とは、金属を加熱・冷却することで、耐久性、耐磨耗性、耐疲労性、耐熱性を持つ金属素材や金属製品を作る加工技術である。日本刀を鍛える技術としてわが国では古くから知られている。焼きならし、焼きなまし、焼入れ、焼戻しなどの過程があり、求められる硬さや精度を実現するには、熱処理炉内の温度コントロールが非常に重要なノウハウとなる。
しかし、空気内で高温で熱すると、金属中の成分が空気の中の酸素と結びついて酸化してしまい、表面に焦げ、錆、スケール(酸化膜)を生じさせ、微妙に寸法に誤差が生じてしまう。したがって、より精度が求められる金型や金属部品については、真空状態で高温に熱することが必要となる。これを実現したのが真空熱処理炉である。
では、大きな熱処理炉ほど多くの金属が処理できるため、効率的かというとそういう訳でもない。形状の異なるものを同時に処理炉に入れると、金属温度の上昇具合・冷え具合が形状ごとに異なるため、温度コントロールが非常に難しくなる。そのため、形状の変化を想定した仕上げシロも多くなり、コストアップにもつながる。逆に、形状の異なるものごとに炉に入れることにすると、温度コントロールは楽になるが、1回あたりの処理数も少量になり、大きな熱量を必要とする大型炉ではコストパフォーマンスが極めて悪い。つまり、炉については『大は小を兼ねず』、生産量に合った適切なサイズの設備が求められるのである。
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