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業界オンリーワンタイルメーカー 成長の『隠し味』
伊奈 憲正 記事更新日.06.12.08
日本モザイクタイル株式会社  代表取締役社長
■問合せ先
日本モザイクタイル株式会社
常滑市椎田口51番地 (本社)
TEL:(0569)35-5776  FAX:(0569)34-8920
http://mozaiku.co.jp/
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■業界オンリーワンの薄型湿式タイル

モザイクタイルとはJIS規格で規定される50平方センチメートル以下のタイルである。主に、内装・外装用タイルとして用いられる。

モザイクタイルは大きく分けて2種類ある。乾式と湿式である。

乾式とは乾燥させパウダー状にした土を数百トンの圧力でプレスにて固め、成形する方法で、寸法精度が極めて高いという長所を持つ。一方、湿式とは一定の水分量(20〜25%)を含んだ練土により成形する方法で、形状や、肌合いに土の柔らかさや自然な感じが出る特徴がある。

しかし、湿式には乾燥時間を要する、厚物しかできない等の問題があり、生産性・価格・施工性の面から用途に制約があった。

この湿式タイルの薄型化、生産効率化に成功し、業界オンリーワンの薄型・軽量の湿式土ものタイルを製造しているのが日本モザイクタイル株式会社である。

■開発成功の秘密は「原料調達力+乾式タイル製造ノウハウ」

日本モザイクタイル株式会社のルーツは、創業者(現社長の祖父)が設立した、有限会社丸安にさかのぼる。丸安では主に陶器原料の採掘・ブレンドを行っていたが、モザイクタイルの製造を行う目的で昭和34年に日本モザイクタイル有限会社を設立(その後昭和38年に株式会社化)、乾式タイルの製造を行う。原料調達を丸安で、以後の製造は釉薬部門に至るまで同社でと、グループでの一気通貫生産が可能な体制を構築した。

湿式タイルの薄型化、生産効率化にあたっては、乾燥室の改造、薄型成形ラインの開発、乾式タイルの製造ラインノウハウを活かした新たな発想の薄型成形ラインの開発、および、丸安社の持つ「原料配合のノウハウ」により、同社独自技術を作り上げ、平成3年、薄型湿式タイルの商品化に成功する。

薄型湿式タイル

現在は、ユニット化するなど製品の改良も進み、同社売上の25%を占めるまでになっており、今も年10〜20%で売上を増加し続けるヒット商品である。

■薄型湿式タイルの特徴を活かし、戸建・リフォーム市場を開拓

成長の理由は、乾式タイルには出せない『風合い』を持ち、かつ、薄型であること。

従来の厚型湿式タイルでは、その重量ゆえに建物に大きな負荷がかかることになり、「風合い」は惜しまれつつも、戸建物件やリフォーム物件では、建物への負荷が増加してしまうため敬遠されてきた。

しかし、同社の薄型湿式タイルであれば、建物に負荷をかけず、乾式にない『風合い』を持つ外装が可能になるため、厚型ではターゲットにできなかった戸建新築やリフォーム市場をターゲットとすることが可能になった。

また「薄く・軽く・ユニット化」は施工面から大きなメリットある。職人が少なくなってきている現場では、軽量で、熟練技術を持たなくとも工事が可能な“ユニット化”がされていれば、工期も人件費も軽減できる。外観にこだわりを持ちたい施主にとって、湿式タイルはグッと身近になった。

工ユニット化により工期も人件費も軽減された

■乾式タイルの生産性と多様性を共存させる取り組み

従来、モザイクタイル業界は特注商品の多い業界で、それ故、生産性が悪く「あまり儲からない」業界であった。

国内でも有数の能力があるプレス機を所有する同社では、そのポテンシャルを引き出し、生産性を確保するため考案されたのが「フルチョイスシステム」と呼ばれる、セミオーダーメイド支援システムである。

これは、ユーザーが200色くらいの色と質感見本を見ながら、自分の好みにあるよう自由に組み合わせることにより、さながらオーダーメイドと同様の満足感を提供する仕組みである。

生産面では、大型自動ラック倉庫とリンクし、ユニットタイルの中間生産品である「タイル」を適正在庫分だけ計画的に生産を行うことで、生産性の維持を実現できる。デリバリー面でも、在庫タイルをピッキングしユニット化することで、オーダーから3日以内の出荷を可能にした。

立体自動ラック製品倉庫

■リストラ、世代交代が悪影響、現場が混乱

「最近ようやく人が集まる企業になってきました」。多くの中小企業が採用に苦しむ中、意外な社長の言葉である。

しかし、数年前は相当厳しい状況であった。

「人が集まる企業は口コミで広まります。実は数年前、経営環境の変化からリストラを行いました。ちょうど世代交代の時期と相まったこともあり、やり方も悪かったのでしょう。反動で人が集まらなくなってしまったのです」。

本当の苦労はここから、である。

厳しいやり方が社員に対しボディブローのように徐々に影響し始め、意識レベルが低下していった。しかし、そのことに気づかないまま、工場を拡張し、生産量を拡大したことが引き金となり、一気に顧客からのクレームの嵐となって噴き出した。

「現場力は低下し、コスト優先のツケがお客様からのクレームを生み、受注量が減るなど、当時は寝られない日が続きました」。

■顧客満足立て直しの決め手は、『従業員満足』という隠し味

「立て直しには試行錯誤を繰り返しました。その結果、今は、社員の満足度を上げる、ということに尽きると考えています。いろいろ会社の仕組みも作ってきましたが、それがしっかりと機能するかどうかは、社員が会社に満足して意欲的に取り組んでくれる、という『隠し味』が決め手となるのだと、今になってわかってきたのです」。

社長は、立て直しのために2つの取り組みを開始した。

一つ目は、社員評価基準を設けプロセス変化主義に切り替えたことだという。

例えば、課長以上のクラスは年俸制とし、社長に対して請求書を提出する制度にした。
請求書への査定基準は『どれだけ仕事を変化させたか』。
変化と成果には、相関関係があると考えています。無理に悪い方へ変化させようと考える社員は、まずいません。良い方へ変化させようとすれは試行錯誤しながら工夫をしていかなければならない。そういう社員は成果を出していくものです」。

また、全社員が対象の「改善提案制度」を設けた。
同社の特徴はその報奨制度にあり、月50万円の改善効果が見込まれる提案であれば、報奨として50万円を支払う。一見、大胆すぎる報酬額だが、社長曰く「コストダウン効果が1か月遅れるだけのことですよ」。大胆であるが、意欲的にならざるを得ない。ちなみに今までの最高額は100万円という。

どちらも“社員との面談を何度も行い納得がいくまで話し合う“という社長の姿勢があったからこそ、軌道に乗ることができたことはいうまでもない。

ニつ目は、社内にコミュニケーションの大切さを打ち出した点である。

同社は、フェイス・トゥ・フェイスを社内コミュニケーションの基本にしているが、補助する意味で、社内ネットを活用している。

ネットワーク掲示板には、お客様の声、営業の状況、生産現場の状況、出荷に関すること、タイルのトレンド情報、改善提案など様々な内容が、毎日50件以上書き込まれる。「クレームについて書き込みがあると、社員みんなが対応案の書き込みをしてきます。また、私自身も書き込みを見てフォローに走ります。ネットワーク掲示板により、社員から信頼感・ネットへの納得感を得ることにも成功しました」。

また、コミュニケーションを図る目的で、毎日午後1時に各職長が全員集合し“窯だし確認会”を実施している。窯出しのあとの「問題点」「対応策」「お客様への連絡」などについては翌朝7時から会議を行い、迅速に対応するようにしているという。
もちろんその会議の場には社長も同席している。

この二つの柱を基に“人が集まる会社”へ生まれ変わった日本モザイクタイル株式会社の社長の言葉は、「『存在価値がある会社』でありつづけること、その1点です」と、明快である。

取引先からも、顧客からも、従業員からも「存在意義がある」と思われる会社・製品。隠し味は「従業員満足」である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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