「立て直しには試行錯誤を繰り返しました。その結果、今は、社員の満足度を上げる、ということに尽きると考えています。いろいろ会社の仕組みも作ってきましたが、それがしっかりと機能するかどうかは、社員が会社に満足して意欲的に取り組んでくれる、という『隠し味』が決め手となるのだと、今になってわかってきたのです」。
社長は、立て直しのために2つの取り組みを開始した。
一つ目は、社員評価基準を設けプロセス変化主義に切り替えたことだという。
例えば、課長以上のクラスは年俸制とし、社長に対して請求書を提出する制度にした。
請求書への査定基準は『どれだけ仕事を変化させたか』。
変化と成果には、相関関係があると考えています。無理に悪い方へ変化させようと考える社員は、まずいません。良い方へ変化させようとすれは試行錯誤しながら工夫をしていかなければならない。そういう社員は成果を出していくものです」。
また、全社員が対象の「改善提案制度」を設けた。
同社の特徴はその報奨制度にあり、月50万円の改善効果が見込まれる提案であれば、報奨として50万円を支払う。一見、大胆すぎる報酬額だが、社長曰く「コストダウン効果が1か月遅れるだけのことですよ」。大胆であるが、意欲的にならざるを得ない。ちなみに今までの最高額は100万円という。
どちらも“社員との面談を何度も行い納得がいくまで話し合う“という社長の姿勢があったからこそ、軌道に乗ることができたことはいうまでもない。
ニつ目は、社内にコミュニケーションの大切さを打ち出した点である。
同社は、フェイス・トゥ・フェイスを社内コミュニケーションの基本にしているが、補助する意味で、社内ネットを活用している。
ネットワーク掲示板には、お客様の声、営業の状況、生産現場の状況、出荷に関すること、タイルのトレンド情報、改善提案など様々な内容が、毎日50件以上書き込まれる。「クレームについて書き込みがあると、社員みんなが対応案の書き込みをしてきます。また、私自身も書き込みを見てフォローに走ります。ネットワーク掲示板により、社員から信頼感・ネットへの納得感を得ることにも成功しました」。
また、コミュニケーションを図る目的で、毎日午後1時に各職長が全員集合し“窯だし確認会”を実施している。窯出しのあとの「問題点」「対応策」「お客様への連絡」などについては翌朝7時から会議を行い、迅速に対応するようにしているという。
もちろんその会議の場には社長も同席している。
この二つの柱を基に“人が集まる会社”へ生まれ変わった日本モザイクタイル株式会社の社長の言葉は、「『存在価値がある会社』でありつづけること、その1点です」と、明快である。
取引先からも、顧客からも、従業員からも「存在意義がある」と思われる会社・製品。隠し味は「従業員満足」である。
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