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世界のプラモデルマニアが注目するMade In Japan
鈴木 邦宏 記事更新日.07.06.07
有限会社ファインモールド 代表取締役
■問合せ先
有限会社ファインモールド
〒441-3301 豊橋市老津町字的場53-2
TEL 0532-23-6810(代)  FAX 0532-23-6811
http://www.finemolds.co.jp/
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■プラモ好きが高じて歴史にのめりこむ少年

年配の男性と、兵役時代のことについて対等に語り合う中学生。後の、超精密スケールモデルメーカー「ファインモールド」社長鈴木邦宏氏の若かりし頃である。

戦争好き、という訳ではない。小さい頃からの「プラモデルマニア」。戦艦やゼロ戦を作るだけでは飽き足らず、図書館などで模型の実機が活躍していた様子や戦況、時代背景などをとことん調べる。すでに同級生では自分より詳しい人間はおらず、機会を見つけては、軍隊経験者の体験談を聞いて回り、新しい情報を仕入れてはイメージを膨らませていた。

■アマチュアによる初の金型製模型誕生

工業高校卒業後、家業の建具屋の修行を始めたが、父親から「お前は職人に向いていない」と言われ、建築事務所へ勤めるも、「模型の仕事がしたい」。しかし、模型関連の仕事といえば、自分で「模型店」を経営することしか思いつかず、開業資金を貯めるためコンクリート会社へ勤務。その後、模型サークルの仲間から社員3人の模型金型メーカーの紹介を受ける。金型は素人だが、模型はマニア。図面の見方を徐々に覚えるようになると、オーダーから成形後の模型を想像できるようになり、よりリアリティのある模型ができる金型への修正を提案できるまでになった。

こうなると模型好きの虫が動き出す。自分で模型を作りたくなり、模型サークルの知り合いを通じて「ドラゴンボール」や「Dr.スランプ」で著名な鳥山明氏へデザインを頼み込み、自作の金型で模型を製作した。金型を自作したいと勤務先の社長へ申し出たときは「自分で使う金型を自分で作るなど聞いたことがないと言われましたが」。

これが「アマチュアが金型を使って作った模型が始めて世に出た」(社長談)瞬間である。

鳥山明氏デザインの模型第1号

■独立・清算・再出発

85年これを機に友人と独立するも、経営はうまくいかず、1年半ほどで廃業の憂き目に会う。

再出発は6畳部屋のコタツの上で始まった。模型メーカー等からプラモデルの製作代行をしたり、会社を清算して残った10万円で購入した卓上旋盤を使いながら小ロットの部品を作ったりしながら、徐々に設備投資を行い、ようやくフライス盤、立体彫刻機、放電加工機等の工作機械を購入するまでになり、96年には現在地に自前の工場を持つこととなった。

■3次元精密模型+時間軸を加えた「4次元」モデル

主力商品は太平洋戦争の日本やドイツの戦闘機・戦車。そして、生命線は「リアリティ」。 まず、モデル化する対象を決めるところから製作は始まる。

「他の人がすでに作っているなら当社ではやらない。売っているものを買えばいいから。でもね、実は、あまりにマイナーだとお客さんがいなくなっちゃう。この辺のサジ加減がすごく難しいんです」。

対象が決まれば、正確にモデル化するために徹底的な調査を行う。

「形状の正確性はもとよりですが、形状を再現するときには、何故こういう設計をしたのか、当時の技術レベルはどのレベルだったのか、時代背景はどうだったのか。これらを詰めていくと設計思想が見えてくる。背景の文化や歴史を知らないと、ここまでは出せないですね。でも、何か嘘がある、間違いがある、手抜きがあるということがわかると、買った人は一気にしらけちゃうんですよ。かく言う私がそうでしたから」。

調査をもとに金型を設計、製作する。金型はほぼ100%自社製である。
「外注へ出すと『こうして欲しい』というニュアンスがうまく出ないんです。ですから、内製化を基本としています」。

こうして綿密な調査を経て設計された模型ができあがる。

これに加え、模型の詳細な情報が詰まった解説書がつけられる。解説書はその模型の実機が活躍していた姿に思いを馳せるための重要なツールである。それだけに、調査に手間ひまを惜しまない。

例えば、硫黄島第26聯隊(れんたい)所属の戦車を手がけるときのこと。硫黄島は「いおうとう」か「いおうじま」か、ということまで史実を調べ上げる。文献の二次資料・三次資料では誤った引用も多いため、一次文献にまで遡り確実に調べる。

調査を担当している社員の言葉もふるっている。「よく蚤の市へ行きます。高齢者のご家族が亡くなられ、兵役時の手記や資料、写真などが出品されているケースがよくあるのです。実体験ならではの貴重な記録が収集できる貴重な機会なのです」。模型の背景を浮き上がらせるため、こんなことまでしているのだ。

模型+解説書。詳細模型という『3次元』製品を、思いを馳せるための解説書という「時間軸」をプラスすることで、隙のない『4次元』コンテンツに仕上げている。
これが当社製品の最大の特徴であり、他の模型にない価値である。

■アニメ「紅の豚」戦闘機は実際に飛ぶのか?

当社の名が世に広く伝わったのは、98年、宮崎駿監督の手による「紅の豚」の飛行艇を模型にしたことである。

社員から「紅の豚」の飛行艇を模型にできないか、との提案があり、模型雑誌出版社を通じて宮崎監督の紹介を受ける。ところがこの二人、版権交渉の話はそっちのけで、飛行機談義で約束の1時間が過ぎてしまった。最後に監督から「ま、損しないようにやってよ」。あまりのあっけなさにジブリ事務所へ尋ねても「監督がいいとおっしゃっているなら、お願いします」と、クリエイター同士ならではの波長があったということなのか、とにかく版権を許可される。このニュースに業界はアッとおどろいた。「愛知の中小企業がなぜ?」。もっとも、「すでに有力メーカーが版権交渉するも許されていなかった」という事実を後に知った鈴木社長の方がもっと驚いたのだが。

ただ、ここからが「ファインモールド」のものづくりに対するこだわりである。 二次元のアニメーションを、まず三次元にする。すると、航空理論からするとエンジンの大きさで矛盾が生じる部分がある。しかし、アニメーションの形状イメージを大きく逸脱することはできない。アニメのイメージを損ねることなく、かつ、航空理論にもかなっていなければ、「作り物の飛行機」になってしまう。何度も設計をし直し、作り直しを繰り返し、「飛行機のスケールモデル」として完成したのは1年後。現在まで3シリーズで10万セットを売るロングセラー商品になった。

■「一番の出来だ」ルーカスフィルム担当者、唸る。

スターウォーズは、登場するキャラクター・メカなどの「グッズ」を初めて本格的に製造・発売した映画だと言われている。このスターウォーズに登場する宇宙船や武器を模型化する権利を日本で有しているのは、当社一社だけである。

きっかけは日本で版権を持っている出版社を通じて、ルーカスフィルムへ打診したことに始まる。戦車模型を送付し、いかに当社が精密なモデルを作っているかを説明。反応は上々であったが、まずは原型見本を見せろと言う。通常プラモデルは、図面はあっても原型はない。それなら、と社長自らが原型を仕上げ、持参する。一目見た担当者は「素晴らしい。今まで私が見た中で一番の出来だ」。通常、こうしたビッグネームの版権を得ようとすれば、相当数のリテイク(やり直し)が発生するものだが、当社に限っては一発OKであった。

■マニアのハートをくすぐり「買うしかない」商品を

「うちの商品はね、マニアにとっては『買うしかない』商品なんですよ。他ではないんですから。極端にマニアックにならず、しかし、「こんなのがあるのか」とハッと潜在的なニーズを気づかせる、そういう企画を狙っているのです。企画も技術面も常に新しいチャレンジをしています。秘密ですが、アッと驚くようなことも考えていますよ」。

「最高傑作ですか?キザなようですが『次の商品です』」。
 
取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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