さて、冒頭の「瀬戸を『焼物とガラス』で街おこし」である。
なぜ、「焼物とガラス」なのか。かつて隆盛を極めた「ノベリティ(陶磁器製の置物や装飾品などの総称)」作り。明治時代中期に始まり、昭和後期の円高で衰退するまで、瀬戸のノベリティは「精巧さ」と白色の発色のよさがヨーロッパから高く評価された。このノベリティ製造で使われた「石膏型成形」という、原型から石膏型を作り、土を流し込んで焼成することで陶器成形を行う製造法は、瀬戸に「粘土で原型を作る職人」「石膏型で型取りをする職人」「粘土を石膏型に詰め、焼成する職人」とうい分業体制を根付かせた。
李代表が狙うのは、今もかろうじて残るこの分業体制を活かし、かつてのような精巧なノベリティをガラスで製造する「パートドヴェール」という新たなものづくりの試みである。
「焼物では衰退したこうした技術を、陶器からガラスという素材に変え、復活させていきたいと考えています。これが成功すると、恐らく世界でも類を見ないガラス工芸の産地になるのではないでしょうか。なぜなら、ノベリティで世界から高く評価されるほどに培われた高い技術集積と分業体制が今なお残っている瀬戸でなければできないことだからです」。
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