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「時間」以上の価値を提供できる時計を
成瀬拓郎 記事更新日.09.07.01
ナルセ時計 株式会社 代表取締役社長
■問合せ先
ナルセ時計 株式会社
〒453-0828名古屋市中村区中村本町四丁目27番の2
TEL 052-482-5071 Fax 052-482-5071
http://www.naluse.co.jp/
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■日本唯一のゼンマイ式置時計メーカー


2005年愛知万博。ここに4m四方ほどの巨大な時計が展示された。「千年時計」と名づけられた巨大時計は秒・分・時・日・月だけでなく、年・十年・百年・千年の文字盤までを備え、人間とからくり人形が一緒におもりを巻き上げると、歯車が回りだす。この時計を組み上げたのが日本で唯一のゼンマイ式置時計メーカー、ナルセ時計株式会社の成瀬拓郎社長である。

ナルセの時計はゼンマイ式で、美しさを意識した部品構成とデザインが特徴である。大きさ・形状ともに全て独自設計の歯車はピカピカに磨き上げられ、その動きを楽しむことができる。
1ヶ月に3〜4台しか製造されないこの時計は、一台20万円〜100万円と高価であるが、百貨店や高級時計専門店で販売される。
■古時計を分解した「ワクワク感」が独立の引き金

成瀬氏は大学卒業後、自動車生産設備や精密部品のメーカーで開発の仕事などに携わる。
「ものづくりが好きで、中でもメカが大好き」で、仕事にはとことんのめりこんだが、経営者の決断如何でプロジェクトの動向が決まってしまうことにサラリーマンの限界を感じ、好きな製品開発で独立できないものかと考えるようになる。そんな時、古道具屋で見つけたのがゼンマイ式の古時計だった。どうやって動くのかと分解し始めると、「少年時代の『ワクワク感』がよみがえって」くる。自分がこれだけワクワクするのだから、同じように魅力を感じる人も多いはずだ、ならばゼンマイ時計を仕事にできないかと考えた。
「仕事にするという視点で分解した部品を見てみると、ここはこういう素材をこう加工して、という『生産のプロセス』をえがくことができたのです。であれば、今まで培ってきた技術を活かせば、自分でも作れるのではないか、と思ったわけです」と成瀬社長。
そして、サラリーマンと二足のわらじで時計づくりの勉強を独力で続け、名古屋の大手雑貨店で自作の時計を取り扱ってくれるメドがついたところで独立、2002年に開業する。
創業当初は今ほど単価の高くない時計を作っていたこともあり、そこそこの売上はあるものの、収益がなかなか上がらない状態が続いた。自分の目指す道はシチズン、セイコーという国内の企業でなく、海外の高級時計メーカーなどと戦わなければならない。付加価値の高い製品とは、そうした「強敵」に挑んでいく商品である。
自社が埋没せず、生き残る道を求め、付加価値の高いものを作らなければ、と模索を始めた。

■「価値」とは何か

ハイテクや効率性の追求ではとても大企業に太刀打ちできない。そこであえて量産・効率に背を向け、少量・高付加価値の時計に特化することを決意する。
成瀬社長はこれを「時計の『道具としての価値以外を買ってもらう』」と表現する。
では、「価値」とは何か、と成瀬社長は立ち止まる。
「『文字盤に宝石をつけたら』と言われたこともありますが、それは宝石の価値であって、時計の価値ではないのです。価値というものを考え続け、時計全体のデザインだけでなく、歯車の配置の美しさ、ゼンマイを巻く音や感触、歯車などのパーツ一つ一つが光るまで磨きこむなど細部にまでこだわり続け、ようやく、付加価値が高くても受け入れられる時計にすることに成功しました。この頃になると雑貨店での価格帯を大きく上回り、取り扱いは百貨店へ、そして銀座の高級時計店などの専門店へと変わっていきました。しかし、ある価格帯にまでなると、売上の伸びが止まってしまいました。私としてはもう少し上位の価格帯を狙いたいと思っていたので、いろいろな取引先でリサーチを行ないました。すると、ナルセの時計を気に入っていただいているようなお客様に『この価格でしたら、本場のスイス製の時計でもお買いになれますよ』とお勧めしている光景を目にしました。結局、ナルセの時計をお買い上げいただいたのですが、これはくやしかったです。でも冷静に考えてみると、同じカテゴリーで同じ値段の商品であれば、本場の商品を勧めるのは仕方のないことですよね」と成瀬社長。 
こうした出来事を繰り返しながら『価値とは何か』ということについて、ついに自分なりの答えに行き着く。
それは、その商品にお国柄、地場を感じること、大量生産でない(マスではなくパーソナルな商品である)こと、作り手の顔・スピリッツを感じることができること、そして、歴史がある、本場のイメージがあること、の4点に集約される、とのこと。
実際、商品ラインナップの中では、「刀」と名づけられた、分針が刀を連想させる動きを持つ時計が、高額な50万円弱という価格にも関わらず、「作ればすぐ売れる状態」とのこと。海外への贈答品に使われることも多いようで、やはり「日本」というお国柄、「サムライ」の本場が感じられる、という「付加価値」が評価されているということであり、成瀬社長の価値観は的を射ているといえよう。

「これらの4点を揃えようとすると、少量で手間がかかり、細部まで目を届かせるため、効率性とは対極の世界になってしまいます。つまり、大企業ではできない、中小企業ならでは、中小企業にこそチャンスがある世界ではないかと考えているのです」。
■日本が本場の「和時計」復活

この4点に照らして、どうしても弱いのは最後の「本場であること」という点である。スイスやドイツには、どう転んでもかなわない。では、日本が本場になれる商品は何か、と考えた時に浮かんだのが「和時計」であった。
「国産初の和時計は尾張藩の時計師が家康の時代に作ったものでした。価値のないものであれば、3百年たった今も残っているはずがありません。こうした先人のものづくりを敬い復活させようと考えたわけです」。
和時計とは、その日その日の昼(日の出から日の入り)と夜とを、各6等分して時間を知らせる「不定時法」がとられている。昼と夜との長短のまま、昼を6等分、夜を6等分するこの方法では、昼が長く、夜が短い夏では、夜の一刻(いっとき)は昼よりもずっと短くなる。
「和時計では日々おもりを調整(正確には15日毎の変更)することで、昼夜の長さの違いを修正していました。これを西洋式の時計にそのまま置き換えようしても、針が進む速さを昼夜で変化させるのは難しい訳です。そこで、文字盤の幅を1年周期で自動的に調整する仕組みを組み込むことで実現しました。つまり、夏であれば昼の間の文字盤の幅を広げ、夜を狭くするわけです。こうすることで、同じ速度で針が進んでも、時計上では昼の一時(いっとき)は長くなるわけです」。
■価値ある日本を世界へ発信したい

「和時計の復活に取り組んで、気がついたことがあります。人間が起きている(太陽が出ている)時間と人間が寝ている(太陽が沈んでいる)時間とに区分し、それをそれぞれ6等分するというルールは、太陽が出たら畑に出て、日が暮れたら家に帰る、という自然の中での農耕民族的な発想から作られた時の刻み方で、とても日本人らしいものだということです。このような先人が積み上げてきてくれたものづくりを受け継いで、価値ある日本の時計を海外へ出していきたいと思っています。日本のものづくりの価値がわかってもらえ、自分の時計もまた次世代へと受け継いでもらえるような、ものづくりをしていきたいのです」と語る成瀬社長である。
取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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