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脱賃加工へ全技術力をつぎ込んだ40日間、世界トップクラスのシェアへの道
大羽良晴 記事更新日.11.04.01
大羽精研 株式会社 代表取締役
■問合せ先
大羽精研 株式会社
〒441-3124 豊橋市寺沢町字深沢170番地
TEL 0532-21-3121 Fax 0532-21-3165
http://www.ohba-seiken.co.jp/
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■チップマウンターヘッド部品の約3割のシェア
チップマウンターとはプリント基板に様々な電子部品を配置する装置で、供給された電子部品をノズルが吸着し、それを目的の場所へ搭載(マウント)する。細かい部品を高速でマウントするために、ノズル等のヘッド構成部品は高い精度が要求される。携帯電話やタブレットPC用チップマウンターのノズル等ヘッド部分の精密重要部品を製造し、世界シェア30%(推定)に達するのが大羽精研株式会社である。


■賃加工仕事に流された15年間
大羽精研株式会社の大羽良晴氏が独立を志し、会社を辞めた日。「これで誰気兼ねすることなく、自分で感じたまま、やりたいことができる」と感激に浸っていた。機械工具の研削で創業する昭和48年4月のことである。
「当時はしっかりとした研削加工を行なっている企業が少なく、収益性も高かったためこの分野で事業を始めました」と大羽社長。
当時は仕事が充分にあったが、次第に競合や工具の性能向上などで仕事が減少し始める。「そこで始めたのが自動車部品の研磨加工でした。仕事は非常に多かったのですが、当時の当社のレベルでは、収益を出すことが難しく、15年間ほどは従業員の3倍働いたものの業績は楽にはなりませんでした。創業時の『これから自分たちの考えた事業を好きなようにできる』という感激とは反対に、ただ日々の仕事をこなすのみでした」。

■「明日の飯のタネ」のために人材投資
そんなジレンマの中、他社が断った精度の求められる自動車用特殊ベアリングの受注が舞い込む。
「当社の得意な技術分野だったことは幸いでした。特殊な部品ということで収益性が高く、資金的にも少しゆとりができました。そして何より『こういう難しい加工で困っているお客様に応えるような仕事こそ、我々がやりたいと思っていた仕事だ』と感じました」。
この機を逃さず、社長が会社の将来を見据えて行ったのは人材投資であった。
「営業を任せられる人材を採用し、技術を任せられる人材を内部で指名することで、自分が全てやらなくとも組織として動くような体制づくりをしました。それにより、自分が会社の将来の『飯のタネ』を探す時間が作ることができました。ようやく『自分たちの考えた事業を好きにやる』という創業時の想いを実現できる体制ができたわけです」。
こうして社長が積極的に将来のための取り組みとして『難しい加工で困っている企業はないか』と営業や提案活動を行う中、大きな転機がやってくる。

■チップマウンターのユニット部品の試作に成功、大きなチャンスを全力でつかむ
ある時、チップマウンターでの重要部品で困っているという話を聞きつける。
「そのチップマウンターの設計コンセプトは非常に良いものだったのですが、精度的には大変難易度が高いものでした。当社も是非トライしてみたかったのですが、そのような重要部品を自動車部品の下請をしているだけの中小企業では無理だと思われたのでしょう、後回しにされてしまっていました。他メーカーで随分検討されていたようですが、うまくいかなかったということで、精密研削をPRしていた当社にようやく声を掛けてもらうことができました。こうして対応をスタートさせてから試作品をつくるのに40日間かかるのですが、この40日間は当社にとって勝負どころでした。収益性のよくなかった賃加工仕事から脱出するために精密研削加工で培ったあらゆる技術を全力でつぎこみました」。
40日後、試作品を10台完成させ納品した。メーカー側ではすぐにマシンに取り付け夜通しでテストを行った。翌朝、朝一番で受けた電話で「全く問題ありませんでした。すぐに100ユニット分お願いしたい」と受注を得た。しかし当時の当社に100台のオーダーをこなす生産能力はなく、外注などを活用しなんとか納品に漕ぎ着けた。
現在では、電子部品を吸着・搭載するノズルとノズルを取り付けるヘッドユニット及びスライドシャフトなどを手がけ、売上の90%を占めるまでになっている。

■難研削案件、新材料への取り組みで技術力を磨く
「マウント精度と耐摩耗性を向上させるため、ノズルの材質もステンレスなどから機能性セラミック等の硬い材料へと変化しています。また、マウントの高速化に対応するためヘッド部分の軽量化も進み、アルミニウムの3分2の比重であるマグネシウム合金が使用される場合もあり、その削り出し加工にも対応しています。このように、高精度化や高速化に向け、新しい素材の加工技術への対応も必要となってきています」。
ミクロン単位の精度を出すために恒温工場化も行い、精密研削・加工・組立をベースとしたコア技術に磨きをかけている。25台の設備を有する穴の内側を研削加工する内面研削を始めとした円筒研削・平面研削・ジグ研削などの研削加工、付加2軸を持つ5軸加工機20台を含めた70台のマシンを有する切削加工、難形状・高精度・難削材等へ対応する放電加工など、全200台超のマシンが、複雑形状品、高精度を求められる案件、他社で断られた難加工品等に対応している。

■加工設備を充分に使いこなす人材育成の必要性
しかし、こうした精密加工は加工装置や検査装置を設置すればすぐにできるというものではない。
「200台の加工機械のそれぞれに持っているポテンシャルをしっかり引き出すまでにはそれぞれの機械のクセをしること、そして治工具の追求が欠かせません。チップマウンターに求められる速さや精度、扱う部品の超小型化への要求はどんどん高くなっている中、ヘッドユニットを作っている当社へ求められるハードルも当然どんどん上がっています。高くなるハードルをクリアするには、設備のポテンシャルを活かせる技術を持つ人材の育成は不可欠です。しかし、当社もそうですが、多くの中小企業では育成といっても実際は『育つまで待つ』ため3年ぐらいはかかっているのが実態ではないでしょうか。しっかりとしたカリキュラムを作ったりOJTをうまく活用したりすることで育成のシステムをつくり、1年ほどで戦力化できるようにしていくことが今後の大きな課題です」。

■新加工技術をメーカーの設計担当者へ売り込め
「マウンター市場はスマートフォンなどの普及を追い風に好調ですが、今後はますます実装されるチップ数は増え、求められる技術はどんどん高度化しています。マウント装置メーカー側から加工技術の打診をいただくよりも、どんどん先に技術を磨いて『こういう加工技術ができるようになりました』と当社から提案していく必要があると考えています。新たな加工技術が機械設計に反映され、より高精密で競争力のあるマシンを作るお手伝いができれば、当社ならではの貢献になると考えています」と将来像を描く大羽社長である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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