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水耕栽培のパイオニア、「野菜文化」の開拓へ
村井 邦彦/ 村井 智子 記事更新日.12.02.01
株式会社エム式水耕研究所 代表取締役会長/ 代表取締役社長
■問合せ先
株式会社エム式水耕研究所
〒490-1414 弥富市坂中地一丁目37番地
TEL 0567-52-2401 Fax 0567-52-0597
http://www.gfm.co.jp
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■伊勢湾台風で見た浮き草でヒント
1959年9月26日愛知県で5,000人以上の被害者を出した伊勢湾台風。名古屋市南部と隣接する海部郡南部(蟹江町、飛島村、弥富町、十四山村(現弥富市))まで水没、水没地がなくなるまで半年かかった地域もあるほどの大きな被害をもたらした。
株式会社M式水耕研究所の会長、村井邦彦氏も自分の農地が水没したのを目の当たりにし、呆然としていた。そこで見つけたのが浮き草の「ホテイアオイ」。
「浮き草は水だけで生きています。またそれを持ち上げると根まで全て持ち上がる。持ち上がるということは動かすことができるということです。作物は土地に根付き「不動産」であるという概念がありましたが、こうすれば「動産」になる、ということに気がつきました。これが全ての始まりでした。「動産」としての農業はできないか、と考えたのです。」と村井会長。
1967年から研究・実験を開始し、1970年に「M式水耕プラント」を発表する。
当初は「農業は土だ」という農家がほとんどで、水耕栽培は奇異の目で見られもしたが、作物によっては年10〜15回転するのを見て、目を見張った。

■「デザイン農業」で新しい農業を
M式水耕プラントの特徴の一つは60cm×90cmの発泡スチロール板。この板には、作物の育つ大きさに応じて12個ないしは18個の穴が開けられ、そこに苗が植えられる。この板を縦長のプール状の水耕ベッドの一番手前に浮かべる、その後少し成長した後、その水耕ベッドの手前から新たな板を浮かべる。これを繰り返すことで、一番若いものが手前側に、向こう側に行くに従って成長したものが並ぶ、という「ベルトコンベア」のようなイメージで作物が出来上がっていく。まさに「動産」としての農業の実現である。出荷できるまでに成長した作物は、発泡スチロールを供給する側の反対側へ回って、ボードごと回収するため、従来の収穫時の立ったり座ったりという重労働からも開放され、作業性も大幅にアップする。

水耕ベッドは、水深が深いプール型のタイプと水深が浅くわずかな勾配があることで絶えず水流と酸素が供給されるタイプとの2タイプあり、作物の性質に応じた最適で均一なな栽培方法が得られる。これにより、通常の栽培では30%ほど規格外品として廃棄されるものがほとんどなくなり、回転率の高さともあいまって圧倒的な収穫量を実現した。
「作物の回転数」「不良率の改善」「定量的に植えられる苗」「ベルトコンベアー」「作業性のよさ」という言葉はおよそ農業のイメージとは遠く、製造業の数値目標のようにすら思われる。
「自然任せの生産でなく、水耕でコントロールしながら年中生産でき、投資効果もある農業という意味で『デザイン農業』と名づけています。デザインとは『計画的』という意味合いで『農業は脳業である』という考え方から、水温・室温・肥料濃度・PHなど複数のパラメーターを調整しながら最適生産を行うのが当社の水耕栽培プラントです。農業をアグリビジネスにしていこうと考えたのです」。
こうした「新しい農業」としての取り組みが認められ、沖縄海洋博、神戸ポートピア、名古屋デザイン博、愛知万博などでも設備展示が行われる中、現在では全国1500ヶ所に導入され、三つ葉生産高の80%のシェアを占めるまでになっている。その他、リーフレタス・トマト・ネギ・小松菜・ハーブなどの葉物の栽培に導入されるケースが多い。
近年、植物工場の話題が多くなった。災害、異常気象、環境汚染などの地球的背景が その根本であると思われる。 無農薬、衛生、環境コントロールされた中での野菜生産はどこでも、どの様にでも 安全に、安定して出来るというメリットを生かして話題となっている。
M式は30年前から手がけているがコスト面から普及は進まなかった。 しかし、ここへきて新しいアグリビジネスの拡がりの中で普及が進んでいる。

■植物工場の話題の影に当社あり
2005年2月に、大手人材派遣会社の株式会社パソナが東京・大手町の本社地下2階に オープンし、当時の小泉首相も訪れたことで大きな話題となった地下農場「PASONA O2」(現在は、大手町パソナビル)。そこに導入されているのも、当社の水耕栽培農場システムと植物工場である。

また、2010年7月に植物工場併設型店舗を丸ビル地下1階にオープンしたサンドイッチファストフードの「サブウェイ」。この店舗の最大の特徴は、店舗中央に設置された植物工場。水耕栽培で無農薬のレタスを栽培しており、この設備も当社のものである。
「水耕栽培」されることでアク味やエグ味が減り、採って生のまま食べられることから、栄養分が低下せず新鮮な食材として提供が可能である。サブウェイの「毎日に野菜をはさもう」というコンセプトと一致するため採用された。

■「つながり」をキーワードに新たな野菜ビジネス、野菜文化を
今後は、こうした水耕栽培野菜の出口戦略、つまり販路開拓をつくる戦略に力をいれたいとのこと。
「今後のビジネスのキーワードは『つながり』(コミュニケーションマーケティング) だと考えています」と村井会長。
第一に、農商工連携での「農」の存在感を高めること。
「今、国でも力を入れている、農商工連携や六次産業化事業などの取り組みはまさに、生産から販売までのつながりをつくることで、ビジネスにして行こうという取り組みです。しかし、現状、その多くは「農」の役割は材料の仕入先としての役割に過ぎない連携が少なくないのではと考えています。もっと「農」が主役になるような取り組み、当社の関連で言えば『もっと野菜をスターにしたい』ということです。サブウェイさんの取り組みのように、目の前でサラダを採り食べる、その他にも、ジュースにする、サラダバーにするなどのような、採り立ての栄養のあるおいしい野菜を主役にした事業を構築することで、当社の水耕栽培・植物工場が生きてくるのではないかと思っています」。
第二は、自然のつながりの中での食を意識し、世代間でも「食育」として脈々と受け継いでいくこと。
「水耕栽培であれば、どのように根を拡げ、どうやって大きくなっていくかという過程を見ることができる。そこで、当社では水耕野菜だから出来る、根つきの状態の『活菜』という商品を用意し、各家庭へネットなどを通して販売しています。この活菜を家庭の ガラスの花瓶やペットボトルで育てていただくのです。お子様たちと、作物の命である根が伸びることで葉が育っていく様子を観察しながら、食べごろになった頃に葉を採り、新鮮な状態で自分がどのように育った、どんな形の、何という野菜かということを意識しながらサラダとして食べる。このように作物が『見える』形でふだんの食事の中で、小さい頃から教えていくことが食育だと考えています。こうすることで、安全安心な食材への関心や食べ物のありがたさ、さらには自然のなかでの食・環境・生命というものに拡げていくことができます」。

「アグリビジネスは生命の循環の中で成り立っています。これが『つながり』なのです。生産するだけではなく、販売するまでのビジネスとしての流れを作ることであり、食べる方々の食に関する関心を高め伝えていくことでもあります。今こそ、日本人が自分で自分の健康を考え、良い食料を自分たちで作り食べる文化を作っていくべきで、そういうお手伝いができればと考えています」と自らの行き先を語る村井会長である。
取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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