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佃煮の新たな可能性を売れ〜「食材」そして「新たな付加価値」へ
平松賢介 記事更新日.12.06.01
株式会社平松食品 代表取締役
■問合せ先
株式会社平松食品
〒4410155 豊橋市梅藪町字折地2-1
0532-31-0301 Fax 0532-31-4625 
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■「町の佃煮屋」からスタート、先進的設備導入で「メーカー」へ脱皮
のりの養殖や魚貝類に恵まれた三河湾の漁場を持つ愛知県豊橋市。大正11年、この地であさりやはぜの佃煮加工を始めたのが、株式会社平松食品の創業者平松安治氏である。


戦後の昭和23年には合資会社として法人化し、昭和30年代後半には近隣の漁港で水揚げされるようになるメヒカリ(学名アオメエソ)を佃煮にすることが盛んになり、それをきっかけとして地元佃煮業界では昭和40年代後半までにはメヒカリの甘露煮(製品名沖はぜ)が業界において一定のポジションを得ることになる。しかし、生魚を素材とするため、生産性は不安定だった。
工業製品型の安定生産となるのは昭和50年代はじめにに冷凍原料を利用しはじめたことからである。得意の地場産のメヒカリに加え、冷凍さんまを原料とした「さんまの蒲焼」もラインナップに加えることで、その日の水揚げに左右されることなく安定操業が可能になった。業績は拡大し、年末などはおせち料理用で忙しさはピークとなった。
昭和62年に同業他社へ修業に行っていた現社長の平松賢介氏の入社を機に、鮮魚加工処理ラインや低温解凍機、遠赤外線セラミックローターなど先進的な設備ラインを導入する。
「当時3億円そこそこの売上でしたが、5億円の売上を想定してラインを作りました。結局、その後9億円になるまで少し手直しするだけでこのラインで操業することができました」と平松社長。

■OEM生産から、より消費者へ近い販路を開拓
この業績拡大を牽引したのは、それまで業務用の2kgパックから1kgパックに変更したことであった。修業時代に1kgパックがどんどん売上を伸ばしていたことから、今後の展開を見据え、新工場では1kgラインを中央に据えた。
「1kgに変えたことにより売り先が大きく広がりました。それまでは業務用として佃煮問屋のみのルートだったのですが、水産市場ルートを開拓することができ、より消費者に近い販売ルートが大きく広がりました。トレーパックと合わせてこうしたルートへの売上は45%ほどを占めるまでになりました。実は、生魚を素材にする佃煮メーカーにとっては、消費者に近い販路を開拓するのは難しいのです。佃煮の原料にはちりめん等のような乾燥素材と当社が扱うような鮮魚素材との2種類があります。乾燥素材を使うメーカーでは鮮魚素材に比べ生産性が安定しており、その分販売に力を入れられるのに対し、当社のように鮮魚を素材に使うメーカーは、原料を処理するまでは仕事が終えられず、作ることに重点を置く必要があるため販売まで手が回らず、OEM生産に留まってしまう傾向があります。まさに1kgパックやトレーパックへの拡大により、念願の消費者に近いルートを開拓することができたのです」。
この時期、「水産加工たべもの展」で当社製品が「水産庁長官賞」「大阪府知事賞」「大阪消費者大賞」などを受賞、次第に評判となり200g程度の小パックにしたお土産品などにも取引が広がる。
「お土産品ルートの開拓には、袋の中の魚の頭の向きを揃えて包装することを求められました。そこで業界で先駆けてフィルムを張り合わせる技術を導入し、さらに消費者へ近く、加えて付加価値の高いお土産品ルートを開拓することができたのです」。

■HACCP取得、衛生管理技術が武器に
平成12年現社長が就任すると同時期、現在地の東三河臨海工業団地へHACCP対応の新工場を建設する。
「その2〜3年前にO157が流行し、HACCPへの関心が非常に高まっていた時期でしたので、工場新設時からHACCP対応工場にしました。翌13年にはコンビニから取引のお話をいただき品質管理の方が来られたのですが『管理体制が取引基準に達していない』と言われてしまい、取引に結びつけることができませんでした。成長マーケットを逃したことが非常に悔しく、HACCPの認証取得を目指すきっかけとなりました。同時にHACCP基準の衛生管理を達成すれば、安全安心な日本製品という観点からも海外市場との取引にもつながるのではないかとも考え『HACCPを取得して海外を目指そう』をスローガンに導入の機運も盛り上がりました。ただ、自分たちが今までしてきたことを単純に否定するのではなく、現状を是とした上で、さらにHACCPのような管理基準までレベルを引き上げようということを、常に言い、モチベーションを下げないように配慮しました。これは非常に効果的だったようで、管理手法にせよ、製造手法にせよ、新たな手法を導入するときに、こうした姿勢を経営者が示すことは、成功のために必要なことだと実感しました」。
こうして平成15年にHACCPの認証を取得、さらに平成17年にはISO22000を国内で初めて取得するまでになった。こうした『ものづくり』に対する独自の努力が認められ平成16年には愛知県より「愛知ブランド企業」に認定された。


■佃煮、海外へ
HACCP取得の2年後の平成17年、ついに海外マーケットへの具体的な行動が始まった。
佃煮というものを海外ではどう評価するのか、ということを知るべく、食品分野を中心とした製品の技術的水準を審査する「モンドセレクション」へ出品。
「出品にあたっては、日本にしかない佃煮をどう表現するかも頭を悩ませました。醤油+砂糖で独特の旨み・風味を出すことから『TERIYAKI(てりやき)』と表現し、『さんま蒲焼』『いわし甘露煮』で出品しました」。 さて、モンドセレクションの結果はというと、見事どちらも金賞を受賞。 「最初は銅賞や銀賞から始まって2〜3年で金賞、というのが普通と聞いていましたので、この知らせには驚きました。審査項目の一つに「衛生」があり、HACCP取得も受賞に大きく貢献しているのではと思っています。まさにHACCPで海外進出をという狙いが当たった形となりました」。
この年以降『さんま蒲焼』は2年連続金賞、3年目と5年目に最高金賞、『いわし甘露煮』は金賞を受賞し続ける中、4年目に最高金賞を受賞、それぞれ5年金賞以上を受賞した後、平成22年からは『あゆ甘露煮』で2年連続最高金賞受賞となるなどモンドセレクションの常連となる。


この受賞で自信を得たことや、愛知万博へ出展した際の外国人の反応が良好であったこともあり、平成18年より本格的に海外マーケットへの展開を開始する。
「ニューヨーク、香港、台湾、上海と各地を回りました。当初は直接佃煮を試食していただき、評価を伺っていました。日本では「ご飯に佃煮!」で文句のつけようはありませんが、おいしいご飯の無い海外では、その方程式は成り立ちませんでした。彼らの食文化に入り込むにはどうしたらよいのか、ご飯のお供ではなく『食材』として存在するにはどうしたらよいかを考えるようになりました。すると、生魚を食べる習慣のない地域では「すしネタ入門用」など簡単に日本食が提供できるアイテムとして使えることがわかり、また、あるシェフからはオリーブオイルやトマトソースとの相性が抜群であることも教えられました。併せて、海外で得られた経験は国内にフィードバックすると、とても新規性の高い発信力を持つことも発見しました。ただ、食材として存在するためには『佃煮』という名称にとらわれてしまい、軸を変えられないこともありました。そのため商品名も『TERIYAKI FISH』としてシリーズ化し、売り場の陳列もしやすくするため瓶詰め型にするなどパッケージング面でも工夫をし、形にした商品もありました」。


今年の2月には、ニューヨークで20人ほどのバイヤーを招待した商談会では「おいしい。特にフレーバーが素晴らしい」と高い評価を受けた。
「のり巻きはアメリカへ行って、現地の食文化と融合し、カリフォルニアロールとなって日本へ戻ってきました。佃煮も『TERIYAKI FISH』として帰ってきてくれるよう、まだまだ海外展開を強化していかねばなりません」と平松社長。

■地元高校とのコラボで新たな付加価値創造
海外展開では「食材化」することで佃煮の新たな価値を見出す展開を狙うのに対し、国内では「地産地消」をキーワードにした展開を行っている。
「きっかけは地元の三谷水産高校で佃煮作りの講師を頼まれたことでした。実技として佃煮はできたのですが『ただ、つくっただけ』でした。それがマーケットへ出たときの達成感を味わせたいと感じ、校長へお話を致しました。すると『実は同じようなことが実習船でもあるのです。実習船でカツオ漁をしても、大きさがバラバラなため地元で水揚げしても引き取ってもらえず、やむを得ず、よその漁港へ持って行っているのです。そういう事情ですから価格も抑えられてしまいます。地元で水揚げをして達成感を味わせてやりたいと常々考えていたのです』というお話がありました。それなら実習船で釣ったカツオを地元で水揚げし、若い感性の佃煮をつくって、実際に売ってみようということになったのです。そこで「製造部」という部活動のメンバーに担当してもらい去年の4月にスタートしました。夏休み明けには第一号の試作品を作ったのですが、学生さんからの評価は『辛すぎる』などさんざんでした。そこから何度も学生さんたちと会議を開き、量販店をターゲットにすること、そのためには売値が380円〜450円になるような原価にしなければならないことから始まり、味はもちろんのこと、流行のジュレタイプにするといいのではないか、ラベルやデザインはどうするか、商品名は…など商品化に向け様々な打ち合わせをしました。こうしてできあがったのが『愛知丸が釣ったかつおとしょうがのごはんじゅれ』を始めとする4種類の【愛知丸ごはん】シリーズです。発売するや2ヶ月ほどで9000個が売れるヒット商品になりました。商品の目新しさやおいしさに加え、ストーリーがはっきりしているため地域でもバックアップしてくれ、地元スーパーなどでも置いていただけます。こうしたコラボをきっかけに情報発信を続け、地元が活性化するのに一役買えればと考えています」。


佃煮のマーケットは縮小傾向にある。いつまでもご飯のお供では、ご飯のおいしい日本国内でしか存在し得ない。その状況をブレイクスルーすべく、「佃煮を食材として売る」ことで量的に伸ばす「海外市場」、そして佃煮の技術を使った新たな価値マーケットを創造する「国内市場」の2つを開拓するのが今後の戦略である。
「2100年、日本の人口は5000万人になると言われています。その時にもなお『佃煮』が残っているために、どのような工夫や準備をしていくのか、これを考えるのが私の仕事です」と遠い将来を見据える平松社長である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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