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愛知の酒蔵がつくる「愛知のリキュール」で市場を開拓せよ
常務取締役 小野 尚之 記事更新日.2015.02
丸石醸造株式会社  http://www.014.co.jp/

■問い合せ先
丸石醸造株式会社
〒444-0015 愛知県岡崎市中町6−2−5
Tel  0564-23-3333

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国酒ともいえる清酒の製成数量のピークは昭和48年の1,421千kl。その後、長期下降傾向が続き平成24年には439千klと1/3以下にまで落ち込んだ。創業以来320年以上の歴史を持つ丸石醸造株式会社も例外ではない。焼酎ブーム、ワインブーム、発泡酒ブームに加え、若者の酒離れ、さらには大手メーカーの低価格商品などとの競争に直面し、打開策を求められていた。


創業320年の老舗酒蔵が磨く本醸造酒

丸石醸造鰍ヘ1690年(元禄3年)に岡崎で創業。本醸造酒や味噌、しょうゆを製造した。後に灘で普通酒を製造。当時「灘の酒が飲める」と好評を得た。しかし、太平洋戦争による戦災で酒造蔵を消失。1925年(昭和20年)には清酒のみで復興する。

戦後の高度成長の終焉とともに、日本酒マーケットも縮小傾向は続いた。それに対抗するため、「特定名称酒」と呼ばれ原料・製造方法などの条件が定められている付加価値の高い酒類(純米酒、吟醸酒、本醸造酒など)へと生産をシフトする。

平成13年〜23年の全国新酒鑑評会では9回金賞を受賞、当地域ではトップクラスの受賞歴も誇るなど、その取り組みについては高い評価を得ている。
創業以来守り続けた「三河武士」、明治33年に誕生した「長誉」銘柄に加え、高級銘柄「徳川家康」と、現在は3銘柄のラインナップを持つ。

「徳川家康」は主に贈答品を想定した高級銘柄。酒造好適米「山田錦」を使用し、米を35%までに精製した純米大吟醸は最高級品である。





愛知産の米や果実でリキュールづくりを

こうした、従来品である「清酒」の他にも、新たな挑戦を行い、今、国内だけでなく海外でも大きな反響を呼ぶ製品がある。愛知の果実を使ったリキュールである。
リキュールの開発で中心的役割を果たしたのは常務の小野尚之氏。

「清酒を『特定名称酒』にシフトし高付加価値化を図りましたが、日本酒自体の落ち込みが大きく、補いきれない状態でした。
そこで平成23年から、新たなラインナップとしてリキュールづくりを始めたのです。ただ『老舗の清酒メーカーがリキュールを始めました』というだけではお客様に選んでいただけません。
ではどうするか。
リキュールは、ベースとなるアルコールに果汁などを混合することで作られます。そこで、極限まで愛知県産品を使ったリキュールづくりをしようと考えました。
ベースとなるアルコールは愛知県豊田産の米を使用。また加える果実についても、愛知県では全国屈指の生産高を誇る農産物がたくさんあるところから、こうした地元産の果実を『果実の味を実感していただける』ということにこだわって作っていこうと考えたのです」

一般に伝統的分野の老舗のメーカーというのは『伝統の味』を大切にするあまり、畑の違う分野への挑戦は二の足を踏みがちである。

「当社の場合、開発担当者の私は発酵技術を使った調味料メーカーに勤務しておりましたので、業界の既成概念がほとんどなく、新しい挑戦に取り組むことができたという面があったのではないでしょうか」と小野常務。



商品開発の正念場、味と安全を確保せよ。県のファンド助成が後押し

「果実については、JA愛知に知り合いがいましたので相談したところ、興味を持って下さり『猿投の桃』『蒲郡のみかん』『三好の青梅』『豊川・田原のトマト』『一宮いちご』など多くの愛知県産品を紹介されました。味の面でも、のどごしの面でも他社と差別化するため、それぞれの果実の食感を残せるような果汁にすることにこだわりました」。

例えば、一宮いちごではペースト状にした状態のものを使用し、リキュールの中にはツブツブした果実があふれ、いちごを果実として食べた時の風味や食感を損なわないような仕上がりとなっている。

しかし、果実を丸ごと使用するようなリキュール製造には大きな問題があった。 殺菌状態にしなければボトルの中で腐敗が始まってしまう。

では目一杯加熱すれば良いかというと、殺菌はできるものの、加熱をしすぎ一定以上に温度が上昇すると、糖とアミノ酸とが化学反応をおこし、甘みだけでなく苦味も生じるため、果実本来の味を出せなくなってしまう。

そこで、詳細な「温度と加熱処理時間のマトリックス」を作成し、どのような条件で殺菌できるのか、どのような条件で化学反応がおこってしまうのか、ということを調べあげた。 「果実内の菌だけをいかに殺し、安全で果実のままの味と食感を再現するか、そして、その閾値に収めるためにどのパラメータを調整すればよいかを検証。

さらにその再現性の保証確保までが必要でした。こうした点については愛知県の食品工業技術センターの指導を得ることで、安全性を確認しながら進めることができました。また平成24年度の『あいち中小企業応援ファンド助成金』に採択されたことも、開発や販路開拓面で大きな後押しになりました」



フルーツ丸ごと食感で一気にブレイク、海外でも高評価

こうして完成したこだわりのリキュールは、大手スーパーのリキュール売り場責任者の目に止まり、店頭に1000本並べ販売されたことをきっかけに一気にブレイクする。

現在では7%アルコールをベースにした「魅惑」シリーズと、3%アルコールをベースにし、地元産品比率100%、果汁比率を50〜60%にまで引き上げたシリーズとの2ラインナップで展開を行なっている。最近では、県内の生産農家からの認知度も上がり「うちの作物を使えないか」と提案をうけることも多くなった。



販売も好調で全国のバイヤーから声が掛かる。昨年「フーデックス(国際食品・飲料展)」への出展以降は、台湾、中国、シンガポールなど海外からの受注が300%増となり「対応が追いつかない状態」とのこと。


日本酒についても挑戦を続けている

地産地消にも力を入れる。

「平成27年に行われる六ツ美悠紀斎田100周年事業を期に復刻した、大正天皇の大嘗祭に献納された稲品種『萬歳』を使用した日本酒づくりを行っており、2月7日の蔵開きに合わせてお披露目、販売を開始します。これにより長年の企画でもあった『岡崎の米による、岡崎の水を使った、岡崎の蔵元の手による清酒』が実現します」





「今後も地元産品を活用し、当社の独自性をアピールした商品づくりを積極的にしていきたいですね。愛知県産品でつくられた商品を国内だけでなく、海外へも積極的に展開し『愛知県の農作物』をPRする後押しもできればと思っています」
と将来を見据える小野常務である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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