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売りは「少量多品種・短納期塗装」。二度の転機でつかんだ成長市場

代表取締役 古久根 賢博

記事更新日.2016.12

株式会社太陽塗装

■問い合せ先
株式会社 太陽塗装
〒444-0303   愛知県西尾市中畑町小井戸44−1

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少量多品種の多様な塗装ニーズに高い技術力で対応

部品の塗装は通常最終工程。つまり、塗装工程の不良はそれまでの工程が全てムダになることを意味する。それだけに塗装業者は厳選され、また塗装業者も神経を使う。

しかし、実際の『塗装時間』は塗装工程の中で一番短く、仕上がりは、その前後の処理が適切かどうかに左右される。前工程であれば、チリなどが塗装面につかないための準備と工夫、塗装しない箇所の適切なマスキング、そしてマスキングテープを取ったあとの塗装バリの処理など、高いレベルの仕上がりを実現するための準備と後処理が大切になる。被塗物が大量生産品で材料が一定であれば予め決められた方法に従い処理するだけでよいが、少量多品種の塗装となると、それぞれに被塗物の材料によっても異なり、対応力が求められる。こうした少量多品種の多様な塗装ニーズに高い技術力で対応するのが、株式会社太陽塗装である。

3Dプリンター造形品・医療機器・光学機器・産業用ロボット・航空機関係・新エネルギー関連設備・レジャー用品・店舗什器・自動車関連の試作等の部品等、幅広い業界の塗装ニーズに対応、被塗物も鉄・アルミ・ステンレス・非鉄金属・各種樹脂・ガラス・ゴム等多様に対応する技術力を持つ。




一度目の転機で量産品から多品種少量塗装へ


株式会社太陽塗装は現在の社長古久根賢博(こぐねまさひろ)氏の父、現会長の剛氏により1966年に設立された。

創業者は、塗料メーカーに勤務していたが、その経験を買われ、歯科医で患者が座る「歯科治療イスユニット」メーカーの塗装部門を任され塗装技術を磨いた。

独立後、当初は元の職場の仕事を受注していたが、高度成長下で自動車やミシン関連部品の受注が大きく拡大し、自然と量産塗装が増えていった。

最初の転機は塗装技術の高度化・機械化の進展とともに訪れる。
塗料槽に被塗物をどっぷり浸けて、引き上げて乾燥させる「ディッピング」と呼ばれる当時主流であった塗装方法から、被塗物と電極を水溶性の電着塗料に浸け電圧をかけることで被塗物に塗料成分を溶着させることで化学的に塗装をする「電着塗装」へ移行しつつあった。電着塗装では化学変化により塗装をするため設備があれば、決められた手順を守ることで安定した品質の塗装ができるようになり、価格競争が激しくなることは容易に想像できた。

量産型で売り上げが確保できる電着塗装か、売り上げは落ちるが付加価値は高い多品種少量塗装か。
「当時すでに入社してしばらくたった頃で、悩んだのを覚えています。折しも、工場の海外移転が始まりかけた時期であり、いずれは取引先の仕事も海外移転していくのではというイメージが強く、規模を追わず「難しい」とか「短納期」という技術や小回りが利く当社の強みを活かした選択をしました。そこで創業当初から続けていて父親のパイプもあった医療機器の仕事に力を入れることになりました」と当時を振り返る古久根社長。



二度目の転機は年賀状から。医療機器部品塗装へ進出、ナイロンコートの提案

二度目の転機は一本の電話で突然訪れる。電話の主は地元で急成長を続ける眼科医療機器メーカー。部品塗装の依頼だった。

「実は、一面識もないのですが、こちらから一方的に眼科医療機器メーカーに年賀状を送っていたのです。送り始めてから10年経ったでしょうか。あるとき、この企業の購買から連絡があり、少しずつ取引が始まりました。急成長していた時期なので新たな塗装会社を探しておられたのかもしれません」。

少しずつ仕事が増えていたある時、「別の会社から納品された塗装部品に不具合があったので至急何とかできないか」という依頼が舞い込む。詳しく聞くと、不具合となった部品の色は黒。同じ機器につける複数種類の黒色パーツの色がパーツごとで微妙に異なり、機器の外観が非常に悪くなり頭を抱えていた。

「黒は同じ塗料で塗っても、被塗物の素材の違いはもちろん、塗装環境の変化でも微妙な色ブレがでる難しい色なのです。お客様もたいへんお困りでしたので、何とか納期までに色ぶれなく納品致しました。このことがあってから、様々なご提案をさせていただくことができるようになりました」。

提案の一つが、視力検査機のあご当て、ひたい当ての部分の塗装。これらの部分は使用ごとにアルコール消毒をするため1年ぐらいで塗装がはげてきてしまっていた。そこでアルコールや薬品に強い『ナイロンコーティング』の提案を行った。この提案は採用となり、受注量は一気に増加する。

ナイロンコートはコーティング表面が柔らかく金属緩衝を防ぐことができる他、耐久性が大きく向上するなどの大きなメリットがある。当社の提案は高い評価を呼び、広く業界で知られるようになった。今では、手術時に金属アレルギーの患者にダメージを与えず臓器をつかむためにナイロンコーティング仕様の器具が使用されるなど、広く採用されている。





医療機器塗装で培ったノウハウで成長産業へ。意匠性塗装、短納期の独自性も

現在では医療機器部品、航空機部品、ロボット、新エネルギー関連機器部品など成長産業とされる分野など120社からオーダーを受ける。
「最近では特にロボットや新エネルギー関連のオーダーが増えています。ロボット分野では多関節化が進んだため可動面が増え、それに伴い関節部の内側になる『塗装をしない部分』の数が飛躍的に増加しています。こうした部分では塗装の境界面をキレイに出さなければ塗装の膜圧のために精密な動きに支障が出かねません。ここでは、精密さが求められる医療機器の塗装で培った、マスキングの仕方、テープの粘着度・種類の最適な選択といったマスキングノウハウが活かされています」。




これらの分野の中でも試作部品や1個〜5000個程度の少量生産品など、幅広い塗装技術を求められる塗装が中心だ。工業部品だけでなく、デザイン性の高い店舗什器も手がけ、時には映画やテレビのスタジオセットの塗装依頼もある。

「当社はいろいろなオーダーをいただくと同時に、こちらからもご提案できるように塗装技術の開発をしています。こうした提案から生まれたのがパチンコ台の据え付けイスです。大理石が床に使われている店舗で、それに合わせた色合いのイスを探しておられました。当時半ば遊びで石目調の塗装をしていたサンプルをお見せしたところ、ぜひこれを使いたいとおっしゃっていただきました。この一件から様々なデザイン性の高い意匠塗装を提案していこうと開発をつづけており、HPでサンプルを紹介しています」。



こうした独自の取り組みもあって、今では月に少なくとも5件程度の新規の問い合わせがあり、通算ではHPからの問い合わせで東北から九州まで70社程の取引先が増えている。 問い合わせの中でも多いのが短納期ニーズ。多様な被塗物を短納期で塗装するケースでは塗装方法の即断が求められるため、経験値の有無がモノを言う。

「図面が送られて来て『今から発送するといつできる?』というオーダーも多くあります。こうした場合などでは、どのような被塗物にどのような塗装をするのかを短時間で『目きき』しなければなりません。その上で対応可能ならば『明日の午前中に当社に着けば、明後日には御社のお手元にあるようにできます、そのかわり特急料金で価格はこうなります』などの打ち合わせでお引き受けすることになります」。

今後は、表面処理業者のネットワークを拡げていきたいとのこと。
「表面処理は塗装や印刷、メッキ、アルマイトなど様々な方法があります。しかしお客様は『必要な表面処理や塗装』ができればよく、どのような表面処理方法でもよいのです。そこで表面処理のネットワークを構築し、お客様の必要とする表面処理についてどの方法が最も適しているかを一括して当社で受け付け、それをネットワーク内の会社にお願いするということができないかと考えています。そうすれば、お客様は最適な表面処理を探し回ることなく、完成品を手にすることができます。表面処理を一つの業界として考えて、こうした取り組みを目指していきたいですね」と将来を語る古久根社長である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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