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価格競争を回避し品質と納期とを武器に受注を狙え

代表取締役 迫田 俊一

記事更新日.2017.6

株式会社エスティー

■問い合せ先
株式会社エスティー
〒444-2135  岡崎市大門4丁目21番地8

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「品質の高いプロダクト」は雄弁な営業マン

製缶業とは、工業用タンクやドラム缶のように板金を溶接・折り曲げるなどする金属加工業を指す。今ではそうした技術をもとに鉄骨、金属フレーム、橋梁のように「金属の板を切断・曲げ・溶接などにより立体的な構造物をつくる」技術全般を指す。大きな構造物になるほど材料の自重で歪みが発生するため、どうやってそれを極力少なくするのかが、曲げの精度や溶接の仕上げ技術などとともに重要となる。

その歪みを1mあたり1mm以内に抑え、溶接による変形量を勘案して溶接する技術、溶接時の飛散物をなくすゼロスパッタ技術などにより完成品質に高い評価を得ているのが、迫田俊一社長が創業した株式会社エスティーである。

例えば、高張力鋼板が使用されたトラックフレーム。エンジン、タイヤ、トランスミッションなどの主要部品が取り付けられるトラックの「土台」ともなる構造物である。通常、そのフレーム長から十数ミリの誤差が出るのは仕方がないと諦められていたが、当社では歪みをほぼゼロにすることに成功。発注メーカーでは「なぜ歪みがないのか」と不思議がられるほどで、指名業者を勝ち取った。

エレベーターやクレーン等の架台、土木・建設に使用されるベースフレームやベース枠、産業機械設備等のベースフレーム、コンベアーの搬送機フレーム等の大物製缶加工により、食品、ハウスメーカー、製鋼炉、産廃プラント、鋼材、自動車など多くの業界から受注を得ている。




「溶接加工技術や歪み取りによる高い精度をもつ高品質プロダクトが当社の営業マン」と迫田社長。

バブル崩壊直後の船出

迫田社長が育ったのは長崎の炭鉱町。時代の流れとともに炭鉱は閉山となり離職、父親が自動車部品メーカーで働くため7歳で愛知へ引っ越す。

「父の面倒見が良かったこともあり多くの人が集まる家で、その中で自然と生きるすべを学んでいきました。母がお金に苦労しているのを見ており、定時制の高校へ通いながら父が働いている会社で自分も働き始めました。当初から独立ということが念頭にあり、19歳で製缶業界へ転職、ある程度の基礎的な技術を手にした段階で、創業へ向けての資金準備などを目指し再度職人として中堅企業で勤務することになるのですが、ここで後の共同経営者となる竹下氏と出会うことになります。」

平成4年、33歳の時、迫田氏と竹下氏の頭文字を取ったエスティーを創業、SとTとがつながったロゴマークは二人が手を取り合っていることを表している。

創業時はバブル崩壊直後で、当初の思惑とは異なり、仕事が少ない中での船出となった。 「景気の下降局面で仕事が少ない上、後発企業ですので選んでいては仕事がありません。他社がやりたがらない、納期が短かったり難しかったりするオーダーを積極的に取りに行きました。そのため、夜になってから加工物が納入されることも多く、0時までに会社を出たことがありませんでした。」

それに加え、設備の取り付けや改修工事など、現場での「常駐外注」などをすることで売上を確保していた。常駐外注は3年ほど続けたが、自社の将来像を考えた時に、自社技術を大きく高めることができないため製缶事業一本に絞ることにした。やめることで仕事量が確保できなくなる不安があったが、技術の積み重ねにより品質の良さで評判を得ることができた。



後発企業が「高い価格」で受注できる理由

何故、後発企業である当社が安定した受注を得られたのか。
「大手企業では、発注する製缶業者はすでに複数社あり、例えばそれが5社あれば、当社は6番目の立場となります。そんな中でも決して技術の安売りはしないと決めていました。

当社の技術を知っていただくために『初回価格』を提示することもありますが、価値のある技術は相応の価格で見積もりを出していました。他社が受けたがらない難しいオーダーを積極的に攻め続け、ある時は他社がすべて『できない』と降り最終的に残ったのは当社だけ、ということもあります。価格競争のみが主戦場となるようなやりやすい仕事は断るようにしていましたし、当社の繁忙状況によっては相見積もりと知った段階でお断りすることもあります。徐々に当社の高い品質と納期の管理力をご理解いただけるようになると、仮に価格が3番目だとしてもトータルで安くなるという評価もいただくようになりました。」

価格競争に苦しむ企業が多い中、なぜ「高い価格」が通るのか。
そこには「工程ごとでどう安くするのか」ということだけではなく「工程トータル」での安さを実現する当社の技術力がある。

「オファーをいただくお客様には『うちは高いですよ』と最初にお伝えしています。ただ、その価格に見合う品質であることは自信があります。例えば、高い精度をだす必要があれば材料の歪みをとるなど手間をかけており、こうしたことから価格が高くなってしまいます。しかし、本当に必要な手間をかけることで、後工程が、例えば研磨が3回必要だった工程が材料の歪みがぬけているため無理なく加工できることから2回に減らせるなど、トータルで考えたときに『早く・無理なく・きれいに』プロダクトができるので、結局は安くなるんです。」




加工前に「トータルで安い」価格は決まっていた

こうした加工技術の高さだけではなく、加工に入る前段階にも秘密がある。
当社が受け取るのはプロダクトとしての完成図面。ここから「材料バラシ」が始まる。これは、完成図面を見ながらパーツごとに分解し、どのような材質でどのような精度でどのような加工をするのか、ということの分析工程である。発注元も、どのようなパーツが必要になるかをわかっていないケースもまれにあり「この図面からすると、話は出なかったのですが、こういう部品も必要になってくると思うのですが」と発注元に相談すると「・・・そうですね。」とそこで初めて認識するということもある。相互の認識共有とともに「こういう詳細な分析をしている」という当社の技術アピールにもなる。

この分析に基づいて、材料調達や加工データの作成を行ない、納期面での必要があれば、協力会社へその技術力に応じた加工を手配することになる。
こうしたトータルコストの安さ・納期を実現するノウハウは、VA的な視点の取組として取引先からも高く評価され、取引先が当社を参考としVAに取り組む場合もあるとのこと。

併せて行っているのが、ローテーションや定年を迎えた人材による技術指導などでの「社員間の技術の平準化」である。
「多くの社員が、同じ技術レベルで仕事ができるように引き上げることで、皆が忙しいときにお互いが手伝う事ができ短納期が実現します。経営者としては、できる人にやってもらうことが安心で楽もできるのですが、そこをあえて他の人に任せることで全体の技術も向上していきます。『皆で協力して働く』ということを強く意識している当社においては大変重要な事だと考えています。」


品質と納期を武器に、さらなる事業分野へ

このような「品質と納期」を武器にした取引先の開拓も余念がない。
「地元の商工会、法人会、鉄工会などの商談会などへ積極的に参加しています。あいち産業振興機構のマッチングフェアで紹介を受けた大手企業からは、最初は10万、20万円という取引額でしたが、それが100万に、さらに500万になり当社の大きな割合を占めるお客様になっています。大手企業ほど口座をいただくまで時間もかかりますが、長くおつきあいをさせていただける場合が多く大きなチャンスになります。」

現在、一般的な製缶業としての売上は 全体の8割程度。残りの2割は当社の技術を見込んで多様な要望が舞い込む。時には、ニューヨークやドバイなど海外で開催される高級車展示会向けの、ブースディスプレイの製作依頼も受ける。展示車の部品全てを壁面や床面に溶接展示するオーダーで、大まかなパーツの配置の指定はあるものの求められるのは、「どのような角度でそのパーツを見せるか、そのためにどう溶接したら良いか」という見せるためのセンスとそれを実現する溶接技術。3人がかりで1ヶ月をかけ完成させた。

未来を見据えての投資として新たな場所への工場移転を検討中である。
「当社の歴史を振り返ってみると、10年毎に自然に脱皮するように工場を拡大・移転してきたのですが多くは手狭になっての拡張でした。しかし今回の工場移転は、競合の多い2t〜5tクラスから競合の少ない5t〜20tクラスでの事業展開を狙ったものです。ワンランク上の重量クラスで、より難しく、他社ができない、付加価値の高い仕事へ挑戦することで、新たな独自のポジションを切り開いていければと考えています。」と将来像を描く迫田社長である。


取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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