企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業
経営戦略レポート
海外支援
中小企業支援等レポート
技術の広場
あいち技術ナビ
あいち産業振興機構中小企業支援
海外駐在員便り
時代の目
特集(トピックス)
企業ルポ
翔 魅力ある愛知の中小企業
あいちの製品ProductsAppeal
経営革新に挑戦する中小企業成功事例集
創業企業に聞く
支援企業に聞く
お店訪問 繁盛の秘訣
科学技術は今
ホームページ奮闘記
スペース
スペース
経営相談Q&A
労務管理Q&A
資金調達Q&A
組織活性化Q&A
環境対策Q&A
省エネQ&A
経営革新Q&A
窓口相談Q&A
IT活用マニュアル
IT特集
どんどん使ってみようWindows Vista
IT管理者お助けマニュアル
ネットワークお助けマニュアル
セキュリティお助けマニュアル
お助けBOX
補助金助成金一覧
施策ガイド
「ネットあいち産業情報」更新をお知らせします!
  トップ > 企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業 > 株式会社ニノミヤ
西尾の鋳物、高難度製品で世界へ

代表取締役社長 二宮 英樹

記事更新日.2018.02

株式会社ニノミヤ

■問い合せ先
株式会社ニノミヤ
〒445-0052  西尾市横手長川東新田17-1

印刷用ページ
ターボ部品国内シェア40%

愛知県の銑鉄鋳物の生産金額は2,354億円で全国第1位(日本鋳造協会HPより)。続く栃木県、福島県の4倍以上である。中でも主要産地となっているのが西三河地域。
鋳物は鉄などの材料を熱して液体にした後、砂などで作られた型に流し込み、冷えて固まることによる造形方法である。砂型などを作る模型方案、緻密で均一な金属組織をつくるため凝固順序を予想し造湯方法を決める鋳造方案、加えてガス抜きの方法の検討など様々なパラメーターの調整はその企業ごとのノウハウであり、そこに企業の独自性が生まれる。
全国レベルでも主要産地である西尾市で、複雑形状のターボ部品の国内シェア40%、世界シェア4%を有し、アメリカやドイツの自動車メーカービッグ3へも部品供給する企業が株式会社ニノミヤである。



鋳物産地西尾で創業

創業者の二宮英夫氏がコックをしていた西尾市の平坂地区では、港がなべ・釜など鋳物の輸送ルートであったことから鋳物産地としても興隆し、その様子は小学校の校歌に鋳物づくりの情景が歌われるほどであった。これをチャンスと考えた英夫氏は鋳物職人に転身、戦後間もない1946年に独立をする。当初は水道関係部品製造をしていたが、やがて地元自動車メーカー向けのトラック部品が増え、事業を拡大していった。

1983年、社長就任の誠二氏(現社長の父親)の代には、自動化を積極的に進めたり、QCサークルなど改善活動を始めたりし、取引先からの信頼も得る。安定供給を目指し、業績安定のために設備稼働率を確保することを優先させ、付加価値の低い仕事も積極的に受けるようになっていった。


仕事の質を変えろ、覚悟の設備投資

現社長の二宮英樹氏が入社したのは1997年。中国をはじめとする海外調達の動きが大きくなり始めていた時期で、稼働率確保に重点を置きすぎた結果、付加価値の低い仕事が大半となり業績も右肩下がり閉塞感が漂っていた。

「鋳造は設備産業の側面があり、設備はその企業の戦略が如実に表れます。当時の4ラインあった生産設備は、よく言えば『融通が利く』もの、逆に言えば『特徴や強みのない』ものでした。『オーダーで出してもらえるものはできるだけ幅広く拾っていく』という受注形態がよく表れており、簡単だが付加価値も低い金属加工メーカーからの下請け仕事が大半でした。したがって、仕事の質を変えるには、将来を見据えた上での設備投資が必要だと考えたのです」と当時を振り返る。

折しも時代は「アウトソーシング」が進みつつあり、自動車メーカーも自社内での鋳造を社外で生産する体制づくりを始めていた。「自動車メーカー側のアウトソーシングの動向を調べてみると、実際に鋳造の移転を検討していることがわかりました。すでに移転先の想定もされていたようですが、その企業の設備ではうまくマッチせず、再度移転先を探すことになる可能性が高いことがわかったのです」。
移転が検討されているのはトランスミッション部品とターボチャージャー部品。


トランスミッションは、回転数に応じた最適なシフトチェンジを実現することで燃費の向上につながる。また、ターボ部品は、酸素を通常よりも多く取り込むことで強い燃焼をおこすための部品で、同じ燃料消費でより強い動力・加速をもたらすことで、燃費向上につながる部品である。



「ターボ部品は、国内のトラック向けだけでしたが、環境規制が厳しくなりつつあることから、将来性の高い部品であるとにらんだのです。今後はこうした将来性の高い、他社にはできない鋳造難度の高い仕事をしていかなければ、と考えました」。



そこで、願ってもないチャンスと判断、設備を自動車メーカーと同一のものに一新し、一躍移転先候補に名乗りを上げる。


アウトソーシングの受注で技術力が飛躍的に向上

「幸い、アウトソーシングの打診を受けることができたのですが、それからが大変でした。設備を一新したものの、昔からいる職人さんは及び腰でしたし、私はといえばまだ入社して数年しかたっておらず、技術のことはまだまだという段階でした。そのような状況で打ち合わせとなっても、先方の技術の方は熟知された方ばかりで、質問を受けてもチンプンカンプンでした。当然、質問は持ち帰りとなるのですが、当社の職人さんへ新しい設備に関連して質問しても回答を得られず、徹夜で知り合いの同業社長に聞いたり書籍を調べたりして、回答をするという日々でした。しかし、様々なことを調べたりトライアルをしたりしていくうちに、鋳造の奥深さというか、理論と実際とでは違う局面が多いこともわかってきました。製造現場の温度・湿度などの環境条件だけでなく、様々なパラメーターが影響を及ぼしており、こうした経験値を積み上げることで他社ではできないノウハウに、さらには、他社からの大きな参入障壁にしていこうと考えたのです」と語る二宮社長。

こうした努力が実を結び、アウトソーシング先として指名を受ける。 「移管決定後、同じ設備ということで、それまで使用していた金型がメーカーから送られてきたのですが、これは非常に勉強になりました。それまで簡単な仕事が主流で、難度の高いものは少なかったため、技術力が飛躍的に向上しました」。


ターボ、トランスミッション部品、欧米ビッグ3へ

アウトソーシング先としての仕事を通して技術やノウハウ積み上げるものの、まだまだターボ部品の生産量は国内では伸び悩んでおり、日系のターボメーカーとの取引を開始する。その過程で2004年にISO9001、2006年にISO14001を取得。

「ISOの取得後は考え方を現場に反映させており、要求事項に仕事のやり方を合わせて定着化させていきました。そのかいあって、1回でパスすることは非常に難しいとされているドイツ車メーカーの納入前現場監査も、1回でパスすることができました。こうした積み重ねが2017年の、欧米自動車メーカーが、サプライヤーに対して取引条件として要求する、ISO/TS16949認証につながっています」。


当初こそ伸び悩んだ生産量であったが、ヨーロッパではダウンサイジングの動向が進み、ターボ部品、トランスミッション部品ともに増加、その流れを追うように国内からの発注も増加。
一方で、形状は複雑化や薄肉化が進み、高度な製造技術が求められた。ことに、部品内の空洞部分を10万個単位で安定した鋳造を実現するのは容易ではなく、品質保証を行うため全品検査を実施している。


「複雑形状ですので不良のリスクが非常に高く、同業からしてもあまりやりたくない仕事ともいえます。量産部品の品質保証は、いかに検査工程を効率的に間違いなく行うかも大きなノウハウとなります。検査装置も内製化しており、部品を買ってきて専用機を組み立てています。一旦不良が発生すると、車の生産現場まで選別に行くことになり、実際、オランダまで選別に行った時には、改めてリスクの大きさを実感しました」と苦笑いする二宮社長。


技術の継承と人材育成

技術を継承し、品質を保証するには人材育成は欠かせない。 教育面はQC、TPM( Total Quality Management)を活用したOJTに加え、全体計画に基づいた部門計画、さらには個人別に目標管理によりスキルレベルの設定をしている。個人スキルをレーダーチャート化することでレベル向上を図り、レベルに応じてISO/TSの要求事項で決められたスキルを保持する者が担当することで品質の安定につなげている。

「こうした教育制度と合わせて、女性の採用・活用を積極的に進めています。生産ラインは自動化をすすめていますが、検品にはまだまだ人手がかかっています。今まで見ていると、細かいものの検査に向いているように感じています。昨年の創業70周年を期に本社を新築、静脈認証システムの導入や女性専用の休憩スペース設置など働きやすい環境づくりをしています。さらに、冷暖房完備の女性専用の検査工場の建設もすすめるなどしており、今年の新卒でも女性の採用をしています」。


多様な業種から技術力が評価

現在では、ターボ部品、トランスミッション部品で売上の85%を占めているが、当社の技術力を求め、産業機械や建設機械の国内主力メーカーから鋳造部品オーダーの声がかかる。 中には冷蔵・冷凍コンテナのエアコン向けに、小型化によって増加する負荷に耐えるために、自動車部品の3〜4倍の強度を実現させている部品もある。

硬い鋳物は鋳造時に中に空洞ができ易く、鋳造時だけでなく設計段階からノウハウが要求される。当初量産試作をしていた部品メーカーでは、製品直前になっても品質が安定しなかったことから、急遽数社の鋳物メーカーが集められ提案コンペを開催、その場で当社の案が採用となった。


また、産業機械向けのコンプレッサー内の心臓部に使われる刃型のスクロール部品では、わずかな隙間で2本のローターを回す精密鋳造部品として機械メーカーとの共同特許を取得するなど、当社と連携することで独自の技術を実現させているメーカーもある。


鋳造の新たな可能性を求めて、多様な分野への展開を進める二宮社長である。

あなたのご意見をお聞かせください
この記事を友人や同僚に紹介したいと思う
参考になった
参考にならなかった
 
Aichi Industry Promotion Organization
財団法人あいち産業振興機構