このような工作機械向けの歯車にはミクロン単位の加工が要求される。日本人の髪の毛が80μ程度とされることから、その10分の1以上の精度である。
「歯車にミクロン単位の精度が要求されるということは、それを研磨する砥石も同等の精度が要求されます。これを手作業で形状加工していますが、経験がモノを言う仕事です。以前はマニュアルも作成したのですが、最後のところは感覚でしか伝えられないものがあり、習得には10年以上かかってしまいます。また、数個単位の小ロットの場合ですと、砥石を作る時間やコストは受注面での大きな課題となります」。そこで、切削加工でも研磨並みの精度を出す『スカイビング加工』を確立している。
スカイビング加工とは、今から100年ほど前に理論確立した歯車を圧倒的に短時間で切削加工する工法であるが、加工マシンの剛性と加工ツールの耐摩耗性などが必要であったことから近年ようやく実現化され始め、注目を浴びている加工法である。
「切削加工のメリットは加工時間の短縮だけでなく、焼入れ後に固くなった状態でも加工が可能となることです。焼入れ後の研磨は研磨工具の摩耗が激しく、研磨時間もコストもかかっていましたが、切削のみでミクロン単位(1/1000ミリ単位)の加工精度が実現することにより、素材の高硬度化にも対応ができるようになりました」。セッティング技術が非常に重要なノウハウとなるため、マシン性能にたよらない他社への優位性を確保することができる。 |