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「困っている人を助けたい」ゴム屋魂の挑戦

代表取締役社長 大藪 建治

記事更新日.2018.08

ダイワ化工株式会社

■問い合せ先
ダイワ化工株式会社
〒480-0104  丹羽郡扶桑町大字斉藤字山神45番地

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「ゴムパーツの試作をしたいけど話を聞いてくれる会社を探している。数個の試作ではどこも話を聞いてくれない。なんとかならないか」。
試作開発に取り組んだ企業であればこんな経験があるのではないか。また、個人でも“昔から使っている機器の部品が壊れてしまった。すでにメーカーでは廃番となり部品は保管されておらず、なんとかしたい”と考えたことがあるのではないか。当社にはこうした問い合わせが日本全国からが舞い込む。
自動車産業で鍛えられた品質と多品種少量生産に特化した生産体制で、こうした要望に「ゴム屋魂」で応えているのがダイワ化工株式会社である。2017年には中小企業庁から「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定され注目を集めている。


特殊車や高級車向けパーツを生産、1600日続くゼロクレーム品質

ゴム製品の商社として大藪和義氏がダイワ化工を創業したのは1981年。その4年後には、それまで営んでいた牛舎を改築しゴム製品の加工工場を建設する。あわせて法人化をし、製造業としてのスタートを切る。その後、洗濯機用ホースなど家電業界などからの受注に加え、現社長の大藪建治氏が入社した時期に自動車業界へ進出、防振ゴムの製造を開始する。現在では、インサート成形の技術などを強みに防振ゴムやブレーキパッドなど自動車業界が主力となっている。



量産にのらない自動車部品の依頼が中心で、月あたり、定番のオーダーが100種類、これに加え単発オーダーが20種類程度。多いときには1日に型を5回も変えながら、合わせて120種類の生産をこなす。その用途は消防車や救急車、福祉車両などの特殊車や1千万円を超えるような高級車部品である。特殊車両向けには重い車体重量に応じた特別な硬いゴムが要求されたり、10000ニュートンに耐える異素材との接着技術が要求されたりするなど、個々の車の特性に合わせた高い品質が要求される。

社員は29人。離職率は非常に低く、毎年新卒者の採用にも成功、技術の継承も進んでいる。また、検査担当は10名を数え、全員社内認定制度をクリア。中には30年を超えるベテランもいる。こうした人たちに支えられゼロクレームは1600日以上続いており、品質維持力には高い評価を受けている。




多品種少量生産に特化した生産体制を構築

多品種少量であっても高い品質を維持できる秘密は、それに特化した生産体制である。 生産面では、色やわずかな形状違いなど多様なオーダーを、小型のインジェクション射出成型機24台で混乱なくこなせるよう、独自のカンバン方式を導入。



資材管理面では、原材料がどれくらいの滞留で劣化をするかを予め検討し、生産内示などの生産見込みを勘案したうえで調達しなければならないし、先入れ先出しの徹底を図る必要もある。さらに、材料ロットが変わるたびに成形物の計測を受け品質に差異がないことの評価を受けることが必要となる。
「少量作ること自体は難しいことではありません。しかし細かい材料納入や在庫管理、小回りが利くマシンを揃え最大限稼働させるノウハウや段取り時間の管理など独自の管理手法が必要で、量産が主力の大企業が当社のような多品種少量生産を始めようとしても意外と難しいのではないでしょうか」と大藪建治社長。
量産型の部品生産は、日々工程見直しなどで秒単位の工程短縮や数十銭のコストダウンに対応しながら1個あたり数円・数十円の利益を確保するビジネスである。一方、こうした少量・単発の仕事は安定的ではないものの1案件あたり数万円の利益になる案件も多い。

「経営的にどちらの仕事をすることが正解なのかはわかりません。しかし、少なくとも資本力も設備もある大手企業が得意な分野で競合しても勝てないことはわかっています。したがって、大手企業が不得手とする多品種少量生産で、付加価値が確保できる仕事の進め方や顧客獲得を目指すことが当社のような小さい会社にとって存在意義があるのではないでしょうか。そもそも、ものづくりとは、困っている人に狩りや農具の道具を作ったことが始まりだったと考えています。つまりものづくり企業の存在価値は『困った人にものづくりで貢献できること』だと。であれば、困っている人たちに自社の特徴でもある多品種少量生産で貢献することこそが当社の存在意義となります。実際、自分たちを必要としてくれる人たちはたくさんあることがわかってきています。他社は量を追ってくれているから、こうした多品種少量の領域を自分たちの独壇場にしていければと期待しています」。


「メール見積り有料」、満足できるプロダクトのため現場へ向かう

メールや電話など見積もり依頼を受けることもしばしばである。しかし「社長が現場にお邪魔できなければ見積もりは有料です」と答えている。
「多様な業界向けの多様な用途でお声がけをいただくのですが、単に図面を見ただけではどのような使われ方をするのかがわからないことが多くあります。意図を十分に把握しないまま受注すると後々想定していたものと違う、などのトラブルのリスクが生じてしまいます。ゴムは難しい素材で、同じ材料を使用しても形状が少し変わるだけで想定の機能が出なかったり、形状が同じでも材料が変われば想定の効果は出なかったりします。『どの形状でどのゴム材料がいいか』は、実際にお邪魔してサンプルや使われ方を見ながら話しをし、お互い納得する必要があります」。


場合によっては自社の仕事にならないけれども、ゴムではなく軟質樹脂の方が向いているという提案をする場合すらあるとのこと。
「生産量が少なく価格面で折り合いがつかない時に、たくさん作るので安くならないかというお話をよくいただきます。しかし使い切るまで数年かかるような量を作るぐらいであれば、多少単価が高くなっても当面必要な量だけにされてはどうかと提案します。専用機で大量生産するぐらいのボリュームであればともかく、単に多く作るだけでは単価が多少安くできるだけです。また、ゴムは徐々に劣化していきますので、数年後には使えない品質になっている可能性もあり、結局は高い買い物になりかねないからです」。


「困っている人を助ける」試作品製作モデルが強みに

問い合わせの中でも多いのが「試作品を作ってみたいが型代が高くて手が出ない、型が作れないのでどのゴム素材が適切かの確認もできない」というもの。
「お客様に費用負担少なく少量をつくることに特化していくにはどうするか、どのような設備を揃えればご要望を実現できるかを考えた結果、昨年3月に3D切削機とCAD/CAMを導入し少量生産用のアルミ型を自社で製造する体制を整えました。



これにより数万円程度でアルミ製の簡易型を内製化することができるようになりました。簡易型でも100ショットぐらいは可能ですから複数種類のゴム素材でそれぞれ10ショットぐらいの試作ができます。そうすることでお客様は使用感がピタリとくる材料をピックアップすることができるのです」。
お客様の望んでいるものと自分たちの得意な領域とを突き詰めた結果、他社にはない強みとなっている。

2017年12月に開催されたメディカルメッセ。当社も技術サンプルとして、自社の試作型で作成したオリジナルのゴム成形物やインサート成形加工を展示。アイデア段階のものでも当社では試作ができますよ、とPRしたところ、手術の現場では血液などですべり力が入りづらいことがあるので器具にゴム加工をして滑り止めができないかなどたくさんの反応があった。
「『アイデアをとりあえず形にしたい』というニーズを感じ取りました。すでにアルミの簡易型から成形する体制を整えていますが、型を作るためには形状がはっきりした段階でなければ試作はできません。しかし、まだ形状も漠然とした段階の『まずはゴムでアイデアが実現できるのか』というゼロからイチにする部分のお手伝いも必要ではないかと思っています。3Dプリンターを導入し、仕上がりがゴムのようになる材料で金型レスにより試作品を作るようにすれば試作成形のハードルをより下げられるのではないかと思っています」と「『困った人を助ける』ゴム屋魂」の将来の姿を見据える大藪社長である。

 

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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