企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業
経営戦略レポート
海外支援
中小企業支援等レポート
技術の広場
あいち技術ナビ
あいち産業振興機構中小企業支援
海外駐在員便り
時代の目
特集(トピックス)
企業ルポ
翔 魅力ある愛知の中小企業
あいちの製品ProductsAppeal
経営革新に挑戦する中小企業成功事例集
創業企業に聞く
支援企業に聞く
お店訪問 繁盛の秘訣
科学技術は今
ホームページ奮闘記
スペース
スペース
経営相談Q&A
労務管理Q&A
資金調達Q&A
組織活性化Q&A
環境対策Q&A
省エネQ&A
経営革新Q&A
窓口相談Q&A
IT活用マニュアル
IT特集
どんどん使ってみようWindows Vista
IT管理者お助けマニュアル
ネットワークお助けマニュアル
セキュリティお助けマニュアル
お助けBOX
補助金助成金一覧
施策ガイド
「ネットあいち産業情報」更新をお知らせします!
  トップ > 企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業 > 株式会社名栄社
フィルム印刷+「超」高圧成形で、
      他にはない「商品の顔」を世界へ

代表取締役 山田 健雄

記事更新日.2018.10

株式会社名栄社

■問い合せ先
株式会社名栄社
〒452-0822 名古屋市西区中小田井4丁目271

印刷用ページ

印刷・同関連業(印刷産業)の事業所数は、製造業24業種中、「金属製品」「食料品」「生産用機械器具」「繊維工業」に次ぎ5番目に多く、全製造業の6.2%を占めている(「平成28年経済センサス 産業編」より)。これをプロダクトの視点で分けると、オフセット版、凸版、グラビア版、スクリーン版などの印刷原版や刷版を製造する「製版業界」、版をもとに印刷を行う「印刷業界」、印刷後の加工を行う「製本・加工業界」の3つの業界に分けられる。しかし、印刷物や手法のデジタル化により事業所数は減少を続け、中でも製版業はH24年の1,490事業所からH28年の1,099事業所へと大きく減少(▲ 20.5%)している(「平成24・28年経済センサス 産業編」より)。印刷業界は装置産業で、デジタル化やDTP(DeskTop Publishing:パソコンでデータを作成し、実際に印刷物を作成すること)に対応した設備投資ができず顧客の要望に応えられなくなるなど、経営環境の変化に対応できなくなったことが主な理由とされる。
こうした環境下でも、製版業としての強みを活用しつつ、オンリーワン技術としての「超」高圧成形技術による三次元フィルム印刷成形品やスイッチシート等の工業製品向け銘鈑各種を製造、製版・印刷・成形・加工の一貫製造体制を強みに、時代のニーズに対応した新しい市場の開拓に挑戦し続けているのが株式会社名栄社である。





製版業+印刷事業で時代のニーズに対応

現社長山田健雄氏の父親である秋幸(しゅうこう)氏が名栄社の前身となる名栄写真工芸社を創業したのは昭和34年。当時は工業製品向けのプレートの製版を行っていた。その後オフセット印刷機を導入、金属プレートや銘板の印刷・製造など主に工業製品向け印刷を開始する。
「先代は非常に挑戦的な人で、常にアンテナを張り新しい技術や事業の可能性を模索する人でした。新しい機械を買っては捨てを繰り返すといってはオーバーですが、それぐらいいろいろなチャレンジをしていました。こうしたチャレンジスピリットはこれからも継いでいきたいと思うほどです。業界は分業化が進み、製版業でありながら印刷も本格的に手がけるところは多くはなかったと思います。昭和56年には時代の変化や顧客の要望に応えるためにスクリーン印刷機を導入、本格的にスクリーン印刷による部品製造業へ進出しました」。

スクリーン印刷とは孔版(こうはん)印刷の一種で、版自体に穴をあけそこからインクを擦りつける印刷方式である。古くは謄写版、少し前なら「プリントごっこ」をイメージすると分かりやすいかもしれない。紙はもとより、ガラス・プラスチック・合成樹脂・金属・布等、ほとんどどのような素材にも印刷ができるため、家電のスイッチパネルや自動車メーター、電子回路など多様な用途に利用される。

「平成に入ると製版のデジタル化にも早くから取り組みました。今でこそパソコンでフォトショップやイラストレーターを使えば簡単にデジタル製版ができてしまいますが、当時はまだ黎明期でデジタル製版の先駆けとなった機械は1億2千万円もしました」と当時を振り返る山田社長。



経営計画にISOを組み込み「人を動かす仕組み」を

後継者である健雄氏が現社長として就任するのは平成17年3月。
「後継者候補として入社し、経営が身近になりだした頃考えていたのは『銘板だけでやっていけるのか?』ということでした。製版をベースに印刷設備を持つ一貫生産体制があるため融通が利くメリットから仕事の引合いも多く、経営は安定していました。しかし、当時の銘板の主力は家電産業で、海外メーカーの台頭や生産拠点の海外移転などにより生産量の下降期に入っていました。ただ、遊戯機の加飾パネルやスロット機のリール(回転する部分)のフィルム製造の仕事が増えており、それほど顕在化はしていませんでした。しかし、会社の将来像はどうあればよいのかを考える日々が続きました。恵まれていたのは業績が好調で勉強できる時間があったことです。何とか会社を一つのベクトルにまとめていく仕組みを作りたい、何とか新たな独自性のある強みを持ちたい、ということばかり考えていました」。
そんな時出会ったのがISOという管理手法であった。
「代替わりが視野に入っていた平成13年頃のことです。それまでいろいろなセミナーを聞く機会があったのですが、なかなかピンとくるものがありませんでした。しかしISOの説明を聞いて、これこそ自分が求める会社のシステムだ、と納得して積極的に取り組むことにし、ISOの導入を年度初めの経営計画発表会で表明しました。とはいえ自分一人でできるものではありません。そこで、将来を見越して父のブレインにキーマンになってもらい、ベテラン社員を中心として組織づくりに取り組んでもらいました。最初は嫌々な面もあったと思いますが、決めごとや文書管理を自分たちで決めてもらうことにしました」。
こうして平成14年6月にISO9001・2000を取得。
「ISOは取得するだけではなく、それを維持し続ける必要があります。つまり、ある種の強制力があるため、経営計画にISOの取り組みを組み込むことで、計画の実行性の一部を担保することができると考えたのです。「決めごとを実行する」という仕掛けにより人を動かす仕組みができ、安定した品質目標の達成につなげることができました」。





自社の固有技術が全て活かせる「超」高圧成形技術との出会い

現在の大きな強みとなっている「超」高圧成形技術に出会ったのは平成16年。
翌年の社長就任を控え、将来に渡って育てていけ、他社との差別化にもなる事業を探していた。そんな時、商社から「超」高圧成形を紹介される。
従来工法の真空成形や圧空成形と違い、超高圧成形はフィルムに最大150気圧の高い空気圧と最低限の加熱で成形をするため、熱によるフィルムの膨張や変形が少なく非常に高い位置精度の立体成形となる。型の凹凸に合わせて引き伸ばされ+18mmから−40mmまでの深絞りも可能。


「この工法は、型の立ち壁など、側面ほど大きく伸ばされます。そこで、この伸び方を逆算し、予め文字が潰れた縮尺で印刷することで曲面への漢字配列さえも歪みなく表現できるようになります。また、凹凸部と印刷位置とがズレてしまっては不良となりますので印刷の位置精度も非常に重要になります。これを実現するには当社の高い製版技術を活かすことができますし、フィルムの印刷にはスクリーン印刷技術が活かせます。従来の強みを活かして今までと全く違うものができるため、まさに『当社のためにあつらえたような技術ではないか』と感じました。あまり迷うことなく設備導入を決断し、商社や先行企業からの指導も受けながら、技術確立を行っていきました。自社内に技術相談できる人がいたことも幸いしました」。




しかし、技術の確立までには時間を要した。フィルムを超高圧で伸ばすため、形状によっては破れやすかったり、2ヶ所に山がある形状ではその間の谷部分が型どおりに充分に凹状にならず正確な谷の形状に成形されなかったりした。位置精度の向上も大きな壁となった。フィルム固定のためのガイドの穴あけは楕円形にすることが当時の常識であった。これはフィルムの伸びに追従する「遊び」がなければフィルムの破断につながるためだった。しかしこれだと追従による移動で位置精度がでない。そこでヒーティングや成形法を工夫し、穴を円形にしてあえて動かないようにしたところ高い精度を実現。今では当社の方式が他にも採用されている。
「技術を確立後、遊技機メーカーへ提案しました。新しい加飾技術ということで採用になり、3年目には大ヒット機種にも採用され、折しも発生したリーマンショックも3割減程度で何とか乗り切れることができました」。
その後今に至るまで10年近く様々な業界で採用され、成形機は3台となった。
近年では、自動車の内・外装部品にも採用され始めている。
「基本はフィルムの裏側に射出成形まで行うフィルムインサート工法なのですが、樹脂成形メーカーからは一体成形をするためのフィルムだけほしいという要望も多くあり、フィルム供給をおこなっています。3台の成形機は2台が量産機、1台は新たなニーズに対応するための試作機として使っています。1日あたり1,000枚/日、繁忙期には24H操業で3万枚/月以上を1台で加工することが可能です」。
現在では立体成形品が売上の30%、付加価値の点ではそれ以上に収益に大きく貢献する事業となっている。
「最近ではメーカーの開発部隊に来社いただき、試作評価を行うなど開発時点から双方が関わるケースも出てきました。お客様に新しい技術や成形品を提供できるよう、大型品への展開やプレス力の高い設備による新たな成形技術も確立したいと考えています。また、海外の仕事にも目を向けていかなければならないと思っています」と将来を見据える山田社長である。


取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
あなたのご意見をお聞かせください
この記事を友人や同僚に紹介したいと思う
参考になった
参考にならなかった
 
Aichi Industry Promotion Organization
財団法人あいち産業振興機構