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自社製品開発は、
      経営、販売、技術の全てを変えた「大転換点」

代表取締役 近藤 安社

記事更新日.2019.02

豊橋木工株式会社

■問い合せ先
豊橋木工株式会社
〒441-3302 豊橋市杉山町字知原12-1052

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平成29年度の木製家具製造業の製造品出荷額は約8,400億円。ピーク時の約2兆2,000億円(平成3年度)の4割弱となり大きく減少した。生産の多くはベトナムやマレーシア、タイなどへ流出してしまった。そうした市場環境にあっても、自社ブランド製品を持つことにより大手企業からの発注頼りを脱却し、経営を安定させることに成功したのが豊橋木工株式会社である。良い姿勢を習慣づけ成長とともに大人になるまで使える椅子「UPRIGHT」は発売から10年を経過、累計2万脚超を販売し、現在でも納期2ヶ月待ちの状態である。




数少ない成形合板を一貫生産する企業

豊橋木工鰍ヘ1948年12月、現社長の近藤安社(やすたか)氏の父親が設立。戦後間もなくモノがない時代に地域の家具職人が集まり、近隣の人が必要とする家具を一品一品つくっていた。10年後の1958年には「安くて品質が良い」と評判をとりアメリカ向け組立家具の木地を輸出、1961年には河合楽器のピアノ部品を手がけるなど業容を拡大していった。
しかし、1$=360円の時代に始まった輸出も円高とともに受注量が減少してしまい、国内市場に専念せざるを得なくなってしまう。これを救ったのが、1963年に始めた成形合板技術である。
成形合板とは木材を薄くスライスした単板を何枚も重ね合わせ、圧力と熱とを加えた型にはめながら接着し形作る技術である。軽くて丈夫、無垢材ではできないような難しい形状を実現できる。
「当時は蒸気で材料を温め、手締めのプレスを使い簡単な椅子のスツール(脚)などを成型していました。それ以降成形合板技術を高め、現在では短時間成形が可能な高周波成形によるプレス機や専用のNC加工機を保有するまでになりました。型により多様な造形美ができることが最大の特徴で、今まで使用した木型は貴重な財産でもありますので大切に保管してあります。型づくりから成形、研磨、組み立て、塗装、張り仕上げまで全工程を自社工場で行っていることは当社の大きな特徴でもあります。国内で成形合板を一貫生産している企業は数少ないようです」と近藤社長。




転機となった自社製品開発

大企業からの受注によるOEM生産は新年度に向けて毎年1月頃からピークとなるが、夏頃は閑散期で1週間に2日も休業せざるをえないほど受注がなくなるなど繁閑の差が激しく、経営的にも厳しくなる。
「自社製品を立ち上げるまでは、売れるものも決まったものがなく、稼働率を確保するために受注をかき集めている状態でした。当社の強みである成形合板の造形性の高さを活かせる市場はないかと模索していました。そんな時、カタログハウス社の通販生活から『子供の姿勢をサポートし、大人になるまで使える椅子の商品企画がある。しかし姿勢のサポートに重要な役割を担う背もたれ部分には、3次元方向の高い成形技術が必要となるものの受けてくれる企業がない。何とかならないか』という打診がありました。企画をしたデザイナーの朝倉芳満氏は豊橋のご出身というご縁からお声がけいただいたようです。それまでお子様向け製品としては専用の小さな椅子を作っていた程度で、かなり挑戦的な取り組みとなりました。その後、試作を繰り返すものの背もたれ部分の成形が難しく、失敗の積み重ねとなります。苦労の末、1年かけようやく成功するのですがこの間に当社の成形技術は大きく成長しました。また、企画段階ではデザイナーやディレクターの方から『大切なのは商品でお悩みを解決すること。子供の姿勢を正しく守りたいという親御さんや学校、先生方のニーズを実現することです』という今までの自分たちにはなかったマーケティング視点からのモノづくりも非常に刺激になりました」と当時を振り返る。





販売の勝負は「体験会」

2009年「UPRIGHT」事業スタート。
『成長する子供の姿勢を守りながら大人になっても使える椅子』という新しいコンセプトに共感してくれる販売店を増やすことから始め、協力を得られる販売店では商品を知ってもらうために「体験会」を開催した。
「販売店で扱う椅子の種類は、少ないお店でも30〜40脚、多いお店では200〜300脚に及びます。それぞれの商品に想定顧客や想定用途があるはずなのですが、これだけの種類となると全てを記憶し提案することも難しくなってきます。そこで体験会ではお客様に試してもらうことと併せ、お店の方にもUPRIGHTの特徴を知ってもらおうと考えたのです。実際に使用するお子様や購買権を持つ大人の方に試していただくと、正しい姿勢になりやすいことを体験していただけます。そうすると、もともと子供の姿勢に関心の高い方が体験されるのですから、親御さんの関心は非常に高まり、ご購入へとつながりやすくなります。そうすることでお店の方にもこの商品のアプローチ方法も実感していただけるのです。当社もお店に訪問することで、どのようなお店でどのようなスタッフがおられるかということも情報共有することができます。体験会では何台売るかが問題ではなく、売り方のプロモーション方法をお伝えする場と考えています」。
こうやって開拓した販売店の数は、インテリアショップや地域密着店を中心に6年間で全国各地100店舗に及ぶ。
「販売に関してはご購入者のブログなどSNSの影響の大きさも感じています。喜びの声や効果などを掲載されているのを見て体験会への参加やご購入につながったというお話もよく伺います。また、販売店からは、UPRIGHTのおかげでお客様とつながるきっかけができた、とのお話もいただきます。子供椅子を選ぶ場合は家族全員で来店するケースが多く、その際、家族が使用するダイニングやリビングセットへの成約につながるケースもあるようです」と思わぬ波及効果に喜ぶ近藤社長。



長く使っていただけるビジネスを目指して

2018年の11月には累計2万脚を達成し、最近は体験会とともにユーザーに対する効果確認をする「確認会」を開催している。
「発売後10年を経過し、どのようにお使いいただいているかを知りたいと思っています。中には『姿勢が悪いままで、あまりかわらない』とおっしゃるお客様もみえます。お子様の身長や座面の高さ、机との距離などを確認させていただき、効果的な使用方法をご提案すると『そういえば、購入時に聞いていたが忘れていた』とフォローに感謝いただくケースもあるなど満足度を高めるアプローチを続けています。お子様が大人になるまで使い続けていただくために18年保証をしていますので、使い方についても売りっぱなしではないビジネスを心がけています」。
現在、「UPRIGHT」は年5,000〜5,500脚を販売、売上の約半分を占め、今も納期は2ヶ月待ち。
自社製品が増えることによりOEM生産中心のときに苦しんだ生産量の波を減らすことに成功、付加価値も大幅に向上するなど経営は大幅に改善、増収増益基調となった。
「『UPRIGHT』のような名刺代わりの商品ができると、『こういうことができないか』とそれまでお付き合いのなかったような大手企業からお声がけを頂く機会も大幅に増えました。子供向け椅子の受注も増えましたし、自社製品についてもいろいろな発想が生まれるようになりました。UPRIGHTの設計思想を引き継ぎ同じデザイナーに設計をお願いした、学校や塾、図書館向けの『マナビノイス』も発売しました。自宅用のUPRIGHTとの相乗効果を狙っていきたいと考えています」と今後の展開を考える近藤社長である。




取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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