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「役立つ喜び」が実現できる会社をめざして

代表取締役  野田 眞太郎

記事更新日.2020.12

有限会社 野田工業製作所

■問い合せ先
有限会社野田工業製作所
〒481-0039北名古屋市法成寺道久1番地

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一貫請負体制を強みに多様な産業へ

 有限会社野田工業製作所の創業は1946年。当時は繊維機械関連のプレス・製缶・溶接などを行っていた。工作機械需要の高まりとともに工作機械カバーの受注も増え、リーマンショックの直前2007年度には売上の半分以上を占めるまでになっていた。しかし、リーマン後は業界の再編も相まって受注が大幅に減少、その穴を埋めるためいろいろな仕事を受注したが、結局赤字は3年続くことになる。
 「この時、気づいたのです。安い仕事を取るということは、自社の大切な社員の価値を下げることだと。一所懸命働いてくれている社員に申し訳ないと考え、2012年に値上げ交渉をしました。価格が合わないなど失注するケースも増え、売上はさらに2割減少したのですが、逆に黒字化を実現しました。これをきっかけに独自の技術力で付加価値が確保できる製造業への転換を図っていこうと考えたのです」と野田社長。
 板金製缶加工を中心に設計・部品製作・塗装などの表面加工・組付・電気制御などの技術を内製化した一貫請負体制を強みに、治工具、工作機カバー、搬送装置の他、無人化・自動化装置の設計といったロボットインテグレーターの仕事まで対応。過去には機関車の車体や神社の鳥居や提灯塔といった特殊オーダーもある。
  



 「塗装設備まで持っている板金業は意外と少なく、一貫請負体制で塗装までできるということで製品化までできることが他社との差別化要因となるケースも多くありました。現在工業用熱交換器部材用のオイル乾燥機の生産も一貫請負体制の強みによるものです。当初は部品供給のみだったのですが、一貫生産で任せられる企業だということを次第にご理解いただいたようで、後に組立工程まで、今では設計も当社へお任せいただける関係になっています」。
 最近では自動車関連の治具、装置、無人化・自動化マシン等の依頼も増えている。
 「印象に残っているのは『無人缶バッチ製造機』です。安全ピンの位置と印刷原稿との位置を上下左右ピッタリ合わせなければ、ピンでつけたときに絵柄が傾くことになります。画像処理技術により位置決めの自動化をすることで無人ライン化にすることに成功しました。ただ、素材の違いや湿度の違い、印刷方法による仕上がり違いのため、想定よりもかなり苦労したが」と振り返る野田社長。





会社のターニングポイントとなった経営指針づくり

 経営指針を作り始めてから11年、今の業績は「経営指針づくり」のおかげだ、と断言する野田社長。
 経営指針は経営理念、経営方針、経営計画の3つで構成される。
 経営理念は、企業の目的やどのような会社を目指すかを定めたもので、経営方針ではその経営理念をベースに中期的な姿と目標とを具体的にし、さらに経営計画で利益計画を中心とした具体的なアクションプランに落とし込んでいくことで、一つの理念・目標のもと全社員でブレない経営の実現を目指す。
 「リーマンショックの時、仕事もなく愛知中小企業家同友会の経営指針づくりの勉強会へ行ったのがきっかけでした。リーマン直後は売上が大幅に減り、その後売上はなんとか回復できたのですが、従業員がこんなに苦労して働いてくれているのに、全然利益がでない。経営者としてはこの先どうしたらいいのかと悩んでいた時です。経営指針づくりを始めた当初は今から思うと稚拙な計画でしたが、今では経営指針書のうち、社長は毎年、理念の説明とビジョンの説明だけで、具体的な指針づくりは社員が全て作成できるまでになっています。一昨年までは指針づくりのベースとなるSWOT分析は管理職だけで行っていましたが、これだと方針という結果だけが社員に伝えられることになり、温度差が感じられるようになっていました。そこで昨年初めて全社員集めてSWOT分析から行ってみました。すると、指針書に対する意識も高まり、社員全体のベクトルが同じ方向に向き『カチッと嵌った』と感じる1年となりました。SWOT分析に使用する現状分析の項目は事前に社員アンケートで抽出・整理しておき、棚卸しされた会社の現状をベースに、方針作りのプロセスに参加することで会社指針が行き渡るようになったと感じています。社長と社員の距離があり、理念・ビジョンが共通理解になっていないと表面上の計画作りになってしまいます。全社のベクトルを合わせること、これが大切だと実感しています。最初の頃は社員も『忙しくて計画した内の1つしかできない』ということもよくありましたが、3ヶ月ごとにフォローし、うまく行かないようであれば計画の見直しをするなど、全社員で目標に向かっていくことを大切にしています」とベクトル合わせへの効果を実感している。
 経営指針づくりを始めて3〜4年で手応えを得て、11年経った今、社員全員で計画づくりができるようになった。こうしてできた経営指針は、毎年グループの社員70名弱と金融機関や顧客などを招いた経営指針発表会で年度当初に発表される。



 さらに、その締めくくりとして毎年「この1年で一番成長したのは誰か」を社員同士で投票し「今年のMVP」を選出・表彰している。単なる指針発表会にせず、最後は「人」にスポットライトを当て「人が主役・人を大切にする」経営を意識している。

人を大切にし育つ仕組みづくりで世の中に役立つ人づくりを

 経営理念は「役立つ喜び」。
 「社員が成長しないと会社も成長しません。経営理念の実現のため世の中に役立つ人づくりのために社員教育はもちろん、その他にもさまざまな取組をしています」。
 一つは、従業員各々が考えていることを知るために社員面談を年1回実施。
 「1年の振り返りと社長への要望を事前にアンケートに書いてもらい、それをもとに、私も同席してコンサルタントの方に柔らかくヒアリングしてもらいます。始めた当初は『給料が安い』『ボーナスが少ない』『機械がボロい』など、耳に痛いことを言われ放題。ただ、できることはすぐ対応しました」。
 「毎年続けていますが、今では社員全員から前向きな話が聞ける貴重な時間となっています。パートの方で正社員になりたいという話があればすぐ正社員として雇用、親の介護があると聞けば介護をしながら働ける制度を作った。優秀であれば設計の責任者にベトナム人を抜擢。今でこそダイバーシティと言われているが、すでに当社ではこのように多様な働き方を取り入れている。

 入社後、最初と壁となるのが加工スキル。スキルアップがスムーズになれば従業員も定着する。このため、人材育成には「マニュアル化」を進めている。
 「きっかけは私が板金の責任者に『1ヶ月で板金仕事ができる方法を考えてくれないか』と頼んだことです。最初は『そんなことできるはずがない』と怒っていましたが考えてくれることになりました。板金技術を要素ごとに分解し、その要素ごとに加工技術を徹底的に訓練できるマニュアルができました。今もこれはメンテナンスを続けていますが、これをきっかけに何かあるとマニュアル化していく風土ができました。そのおかげで外国人研修生の受け入れもスムーズになりました」。



 そして、最後に目指すのは社員の自立である。
 「自分で考え行動できるような環境づくりをすることが社長の仕事です。先日もお客様の都合で大きな装置の納期を3週間早めたい、という普通では無理な話が私の知らないうちに営業担当者にありました。物理的に前の装置が場所を取り、2週間の組立期間が確保できないので不可能に思えるような内容でした。関係する社員同士で相談し可能性を追求し『瑞浪工場でサブアッセンブリーをローテーションで指導しながら交代勤務し、前の装置出荷の翌日持ち込めば、5日で組立、電装工事可能』と計画を立て、私に事後報告しに来ました。
 私は初めて話を聞き社員の成長と自立にビックリしました。私のアドバイスは『毎日通勤するのは大変なので近くのビジネスホテルをとって、おいしいものを食べられるようにして下さい』とだけお願いしました。社員が主役ですから社長の仕事は黒子や大道具係でいいのです。こうした社員が自立し判断してくれる風土というものを今後も大切にしていきたいと考えています」。

 リーマンショック後、多くの受注を失う中「人を大切にする経営」で乗り切ってきた。
 「今回のコロナ禍が始まった頃、雇用も基本給も維持する、安心して働いてほしいと宣言しました。社員やお取引先のおかげで現在があります。社員の幸せや顧客志向を通じた社会貢献、人間尊重の経営を続けていきたいと考えています」と自信を持って語る野田社長である。





取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       
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