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環境に配慮した製品を開発したいのですが、環境問題はあまり詳しく分からないし、市場にどんなニーズがあるのかも、よく分かりません。
何かヒントになることがあれば、教えてください。
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地球温暖化など環境問題が深刻な状況になっており、化石資源の枯渇も危惧されています。社会的にも環境に対する不安感が広がっていますね。環境に配慮した商品(以下、エコ商品と呼びます)は、まさに時代の要請に応えるもの
です。企業としてはそこに商機を見つけることこそ、社会的使命といえるのかもしれません。
さて、今回はご質問にお答えするためにエコ商品の事例を紹介して具体的なイメージをつかんでいただいた後に、エコ商品を開発する時の考え方をまとめます。
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1.エコ商品の成功事例
エコ商品の成功事例を(1)発想の転換、(2)ストーリー性、(3)表示の工夫の3つのパターンに分けて紹介します。エコ商品のイメージをつかんでいただければ、まずは成功です。
(1)発想の転換
『シャワークリーンスーツ』(コナカ)
「シャワークリーンスーツ」は汚れを水だけで洗い流せるスーツ。ドライクリーニングで使用する溶剤の使用を削減できる効果があり、クリーンであるというエコ商品
です。シャワーで毎日でも洗える利便性やクリーニング代を節約できる経済性もあり、どちらかといえばエコ商品であることの訴求より、機能性・経済性を訴求しています。店頭では斬新なコンセプトを来店客に伝えるために、実際にスーツを洗い流す実演映像を映して訴求してい
ます。
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(2)ストーリー性
『風で織るタオル』(池内タオル)
自社の使用電力の100%を風力発電でまかなって、タオルを製造しているため「風で織るタオル」という愛称がつけられています。風力発電で製品を製造すると、タオルを作るときにCO2を発生させません。同社のバスタオル1枚は約370gのCO2発生を抑えたことになるのです。さらに、オーガニック綿を原料にしているタオルは、幼児が口に含んでも安全とされるレベルで、贈答品として渡すほうも、受け取るほうも品質はもちろん、地球温暖化に影響を与えない製品というストーリー性をも楽しむことがで
きるのです。今やこの「風で織るタオル」は、国内のみならず、欧米の高級ショップでも高い評価を受け、世界的水準のブランドになりつつあります。
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(3)表示の工夫
『サッポロビール』
原料を栽培し、ビールを製造し、輸送し、お客様が飲んだ後の容器をリサイクルするまで。そのすべての段階において、CO2がどれだけ排出されているかを数字として算出して、広告表現したのが、サッポロビールの取り組みです。サッポロ生ビール<黒ラベル>で2003年と2005年の実績を比較したところ、350ml缶で1本
あたり10%のCO2を削減したという結果が見えるようになっています。テレビCMでもこのCO2排出量について表現しているのをごらんになっている方も多いと思います。
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これら3つの事例はエコ商品の成功事例だと思いますが、それぞれさまざまなことを物語っています。「シャワークリーンスーツ」ではエコ商品であることは間違いないのですが、機能性や経済性
を前面に出し、あわせて環境性を表現しています。また大胆な発想転換をした商品ですから商品説明のために映像を使ってお客様に伝わる工夫を凝らしています。どんなに良い商品であっても、その良さを伝えきることは容易ではありません。
その点、「風で織るタオル」はそのブランド名ですでにさまざまなコンセプトを物語っていますし、「サッポロビール」は数字で物語っているため、明快です。商品の環境性の見える化の工夫は、とにかく、環境に関する情報を分かりやすく、見えるようにすること
だと言えそうです。マーク、数値情報、キャッチコピー、映像、パンフレット、ディスプレイ等、さまざまな表現を使って伝える努力をする必要があります。
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2.買い手はどんな思いをもっているか?
次に買い手の目線からエコ商品を見てみたいと思います。購買意欲をかき立てる環境情報の伝え方についてのアンケートによると、「店頭で目立つように大きく掲示」、「店頭で見たり触ったりして環境への配慮を実感できる」が上位1位、2位となっています。商品の購買判断は
「店頭で商品を選ぶ」まさにその瞬間に行われていて、そこで環境要素を伝えなければ、そんなに環境にいい商品とは知らなかった、伝える努力が足りないと消費者に判断されることにな
ります。また3位の「数値情報などを使って詳細に説明」という回答から分かるとおり、イメージだけではなく中身をきちんと作りこみ、それを伝えることが消費者の購買にも影響を与えることがわかります。
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一方、BtoB商品の場合、グリーン購入という考え方が参考になります。すでにグリーン購入法という法律によって、国等の機関は環境に配慮した商品の購入を義務づけられています。地方公共団体や事業者・国民にもグリーン購入に努めることを求めており、すでに大手企業では当たり前の取り組みとなっています。これらの購入条件を考慮に入れて商品開発を行えば、販路が開けることになると思います。ただし、費用が高くても購入してもらえるというわけではない点は考慮しておかなければなりません。グリーン購入
法では基本方針としてシャープペンシルやはさみなど個別の物品について、再生材料の使用率や交換可能であることなど詳細な基準も規定されています。
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グリーン購入基本原則 |
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1 |
必要性の考慮 |
購入する前に必要性を十分に考える |
2 |
製品・サービスのライフサイクルの考慮 |
資源採取から廃棄までの製品ライフサイクルにおける多様な環境負荷を考慮して購入する |
1 |
環境汚染物質等の削減 |
環境や人の健康に影響を与えるような物質の使用や排出が削減されていること |
2 |
省資源・省エネルギー |
資源やエネルギーの消費が少ないこと |
3 |
天然資源の持続可能な利用 |
再生可能な天然資源は持続可能に利用していること |
4 |
長期使用性 |
長期間の使用ができること |
5 |
再使用可能性 |
再使用が可能であること |
6 |
リサイクル可能性 |
リサイクルが可能であること |
7 |
再生材料等の利用 |
再生材料や再使用部品を用いていること |
8 |
処理・処分の容易性 |
廃棄されるときに適正な処理・処分が容易なこと |
3 |
事業者取り組みの考慮 |
環境負荷の低減に努める事業者から製品やサービスを優先して購入する |
1 |
環境マネジメントシステムの導入 |
組織的に環境改善に取り組むしくみがあること |
2 |
環境への取り組み内容 |
省資源、省エネルギー、化学物質等の管理・削減、グリーン購入、廃棄物の削減などに取り組んでいること |
3 |
環境情報の公開 |
環境情報を積極的に公開していること |
4 |
環境情報の入手・活用 |
製品・サービスや事業者に関する環境情報を積極的に入手・活用して購入する |
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出典:グリーン購入ネットワーク(GPN) |
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一般消費者向け、企業向けどちらの商品についても買い手のニーズをきちんと理解した上で、商品開発や販売促進を図る必要があります。そのときに、先述したデータや基本原則は参考になるでしょう。
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3.開発の考え方
つぎに、開発の考え方をあらためて、整理してみたいと思います。エコ商品の開発のための手法として、エコデザインという考え方があります。エコデザインでは、省資源・省エネ・有害物質などさまざまな環境に関する要素技術の検討と、製造・流通・使用・廃棄等のどの段階で環境負荷を減らすことができるのかという検討を行います。エコデザインの視点、発想の例を次に整理しましたのでご覧下さい。自社のエコ商品を開発するときに、縦軸の「視点」を追加するなど独自に工夫して、表の中身を作り直してみてはいかがでしょうか?
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エコデザインの視点、発想の例 |
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製造 |
流通 |
使用 |
廃棄 |
資源の有効利用 |
・使用材料の低減
・希少材料の低減
・再生材料の利用 |
・梱包在の削減 |
・消耗品が少ない
・廃液、排水の削減 |
・分解しやすい
・材料の分別が容易
・材料の劣化が少ない |
省エネルギー化 |
・資源(電気、ガス、用水等)の削減 |
・積載効率の向上 |
・消費電力の削減 |
・分解が容易
・部品が再利用できる |
有害物質の削減 |
・工程内での有害物質の削減
・有害物質を含まない材料の利用 |
・クリーンな輸送手段の選択 |
・廃棄、排水がクリーン
・廃液が少ない |
・有害物質の分離回収が容易 |
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4.売れなければ意味がないエコ商品
どんなに環境を追求しても、商品としては売れなければ社会に影響を与えることができませんし、企業としても商売にならないため意味がありません。反対に環境に良い製品だからといって、とにかく大量に売りまくればよいというのも、結局大量の資源を消費することに
なってしまっては本末転倒だと思います。ただ持続可能な社会を作るという一点を見据えて、その視点に立てば無限にアイデアは広がるのではないかと思います。
毎年12月にエコ商品の展示会、エコプロダクツ展が開催されています。今年は2008年12月11日から3日間、東京ビッグサイトにてエコプロダクツ展2008が開催されます。日本最大の環境見本市で、多くのエコ商品が出展しています。エコ商品の開発をするための参考になると思いますので、
訪ねてみてはいかがでしょうか? また自社でエコ商品を開発したあかつきには、出展も計画してみるとよろしいのではないでしょうか。
今回はエコ商品の事例や買い手のニーズ、開発の考え方を整理してみましたが、ご質問のヒントになり、エコ商品開発のきっかけになればうれしく思います。
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