【翔 魅力ある愛知の中小企業(51)】
新たなガラス用途を切り開け  
− ガラスのトータルコーディネータ −
眼を輝かす設計事務所からの訪問者
週末、川村工業株式会社への訪問客が続いている。訪問客は建築設計事務所の設計士、デザイナー。お目当てはショールームだ。さまざまな色・形状に加工されたガラスタイルやモザイク、ガラス食器が並び、訪問した「プロ」たちは宝の山を見るように眼を輝かせる。リピート訪問者は「来るたびにレベルが上がっている」と高く評価する。
板ガラスを加工し、製品を作る。一口に加工といっても、色付け、切断、研磨、曲げ、切り欠き、孔あけ−さまざまな工程が必要。手作業の芸術品であれば一人でもできるが、これが量産の必要な工業製品となると話は別。トータル技術で高い評価を受けているのが川村工業株式会社である。
技術の源泉はガラス食器製造
川村工業株式会社は1959年ガラス・陶磁器の食器製造を目的として設立される。以後45年間技術を積み重ね、有形無形の技術資産を築き上げてきた。
創業時のガラス食器製造技術のうち、絵付け技術は、ガラスタイルやガラス食器への多色印刷技術として受け継がれ、透明感や深みのある表現を可能にした。また、ガラス加工技術は強化耐熱ガラス蓋、工作機械向け安全ガラス、ガラスタイル分野への精密曲げ・強化・溶着加工技術として生き続けている。
日本初、強化耐熱ガラスブタ 
180℃の高温と2mの高さからの鋼球の落下にも耐える、耐熱性と耐衝撃性を備えた強化耐熱ガラスブタ
強化耐熱ガラスブタとは、アルミ・ステンレス・鉄・ホーロー鍋のガラスブタで、フタをしたままで調理状況が見られることから、煮物の調理に便利なため、読者の方も一家に一台はお持ちであろう。実はこのガラスブタを日本で最初に作ったのが 同社である。

「なべ」が主役であるので、丸・楕円・四角、さらには深さもさまざまで、それぞれになべにあわせたバリエーションが必要となる。また機能上、高温・割れに強いことが求められる。それぞれに安全基準をクリアする必要があり、高度な加工技術が要求された。高い耐熱性・強い耐衝撃性に対し、180℃の高温と2mの高さからの鋼球の落下にも耐えるレベルをクリア。普通ガラスの5倍の耐衝撃性を実現させた。 

驚きの耐衝撃性レベル
クリアしたのは日本でたった2社

この耐衝撃性技術は工作機械に使われる「安全ガラス」でさらに磨きがかけられる。

工作機械には加工状況を外部から見るための窓がついている。こののぞき窓には耐貫通性が要求される。これが弱い場合、加工時のトラブルで金属材料やドリルなどの加工用刃物が破断し飛び散り、のぞき窓から貫通、人身事故につながる可能性がある。近年はドリルの回転速度が高速化しており、より強いガラスが求められている。

世界最大の工業製品規格検査会社の「テュフラインランド」の耐貫通試験では、重さ2.5kg、直径5cmの弾丸を圧縮空気により時速300kmでガラスの中心へ衝突させ、弾丸が貫通しなければ合格となる。ちなみに新幹線「のぞみ」の700系車両は東海道区間で270kmが最高速度であるから、その衝撃たるや想像を絶する。

日本でこの認証を受けているのはわずかに2社。同社の他には一部上場の超大手企業のみである。同社が高い技術力を誇る強化ガラスと、樹脂・ポリカーボネートを張り合わせ加工する技術を開発することで厳しい基準をクリアすることができた。これは工業製品である以上、コスト面から厚みとの闘いでもあった。厚ければ強度は確保できるが、コスト面で厳しい。強度を確保しつつ、どうやって薄いものにしていくか。川村社長いわく「45年間の積み重ねです」。現在市場の3割ほどのシェアを確保している。

強化ガラスと、樹脂・ポリカーボネートを張り合わせ加工する技術により
工業製品規格検査会社の「テュフラインランド」の耐貫通試験をクリアした「安全ガラス」

装飾用建築資材新素材として期待される
「ガラスタイル」は透明感と温かみ・柔らかさが特徴

実はガラスタイルは現在のところ、国内では同社で製造されるのみである。色付技術とプレス・強化という板ガラス加工技術が伴わないと、商品提案・展開力を持てないためである。生み出した商品アイテム数は実に1,000を超える。陶磁器タイルや石材では表現できない透明感・深みがあることから、こうした装飾用建築資材の新素材として大きな期待を持っている。
全員がデザイナーでありつづける
冒頭のように、建築の最前線のプロである設計士やデザイナーが目を輝かせる商品を生み出し続けるには、「設計も営業も製造も、全員がデザイナーでなければならない。スキルを磨き、おのおのの能力を引き出すことが必要だ」と川村社長は語る。「全員がデザイナーになれ」とは社員全員がどうしたらよりよい製品ができるかを思い描き、自分には何ができるかを考え抜くということだ。陶磁器・ガラス食器工場として歩を始め、独自技術により「ガラスのトータルクリエータ(創造者)」として評価を得ている理由はここにある。
                     (取材 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久)
 
川村工業株式会社
代表取締役社長 川村卓巳
問合せ先
川村工業株式会社/川村硝子工芸株式会社

〒465-0002 名古屋市名東区引山3−502
TEL 052-771-1111
FAX 052-771-0522
http://www.kawamuraglass.co.jp/index.htm