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2006.2月号 No.46 通巻247 2月01日発行
名古屋大学 助教授 山田基成
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【時代の目】
日本のモノ造りと技能
昨年秋に、機会があって大リーグで活躍するイチロー選手や松井選手のバットを造っている(株)ミズノテクニスのプロバット・マイスター、久保田五十一氏の作業現場を訪ね、話を伺うことができた。
木製バットの製造は、回転する角材に丸ノミとカンナを当てて削るという一見単純なものであり、約15分でバットの形はでき上がる。もちろん、半世紀近い経験の積み重ねあってのことではあるが、作業自体は基本的に各選手の専用モデルを前にしてのカンによる作業であり、数カ所の太さを測りながら、求められる長さと重さのバットに仕上げていく。どうして図面を用いないのかと思わず尋ねたが、「バットの重さや形状は図面化できるが、その図面通りに削れば良いバットができるわけではない。素材が一つずつ微妙に異なることを考慮する必要がある」との答えが、久保田名人からは返ってきた。
バット職人に求められる技能
木製バットは木という生きた素材を扱うところに難しさがある。木は生えている場所によって1本ずつ異なる。ボールを当てて遠くに飛ばすために木目の正目(柾目)の面を確保する必要があるので、原木を十文字に四つ割りするが、四つに割ると同じ原木でも東西南北の向きに応じて、それぞれは全く違う素材となる。この異なる素材の中から、ボールを遠くへ飛ばすことを可能にする面を見つけ出し、バットに仕立てることが職人としての匠の技(ワザ)である。
他方、バットを削るのが職人なら、完成したバットを操るのもプロ野球選手という職人である。彼らはボールを飛ばすために、道具としてのバットに異常なほどのこだわりや繊細さを求める。バットのヘッドが気持ち重いとか、腰が少し弱いといった、およそ数量化できない感覚を言葉にして、さまざまな要望をする。この各選手の要望に合わせて適切な素材を選んで、その要求に応えるバットに仕上げることが求められる。
日本のモノ造りへの示唆
現代におけるモノ造りでは、あらかじめ定められた仕様や図面通りに作業を行い、これを反復して再現できることが技術の高さを証明する。ところが、バットに限らずゴルフクラブでも同様であるが、使用するユーザー一人ひとりの注文や体型に合わせて、一品ずつ個人にとって使いやすい最適な状態に仕上げることが良質の製品を造る仕事となる。そのためには、あらかじめ決められた品質のものを反復生産する技術に加えて、素材とこれを使用する顧客の両者を最適な状態で結びつけることを可能にする人の技(ワザ) ― 技能が不可欠である。
金属バットであれば諸外国でも技術を用いて容易に造れるが、技術と技能の融合が求められる木製バットには、短期間では辿り着けないモノ造りの領域が存在する。中国等との激しいグローバル競争の中で、日本のモノ造りが目指すべき手本の一例である。
PROFILE
山田基成(やまだ もとなり)

名古屋大学大学院経済学研究科助教授 1954年生まれ。77年名古屋大学経済学部卒業。85年同大学大学院経済学研究科博士課程修了後、同大学助手となり、91年10月から現職。日本中小企業学会常任理事他委員として活動中。専門は生産管理論、中小企業経営論。「トヨタ生産方式の研究」「中小企業21世紀への展望」などの著書多数。

連絡先
名古屋大学大学院経済学研究科
〒464-8601 名古屋市千種区不老町
TEL 052-789-2372
FAX 052-789-4924
E-mail:a40579a@cc.nagoya-u.ac.jp

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