尖閣問題以降その勢いは衰えたものの、多くの日本の製造業の方が「工場」ではなく「マーケット」としての中国への進出を目指しています。
AARIでも、いくつかの中小製造業の中国進出をお手伝いしていますが、皆さん最初につまずくのが価格です。これに関して言えば、中国側とはまず100%、最初の段階では折り合いがつきません。日本の高い技術力には興味を示すものの、そこまでの高品質を必要としているわけではなく、品質レベルを落としてでも、日本企業の予想をはるかに下回るレベルまで価格を下げれば取引ができるかもしれないと、中国側は淡々と告げてきます。
この時点で「やってられっか!」となって、交渉をやめてしまう企業の方も多くいます。長年培ってきた「最高」の技術を想像だにしなかった低価格で売れとか、品質レベルを下げろとか言われるわけですから、怒って当然です。特に自らが開発者だったりする経営者の方にとっては、中国側から提示される条件は我慢ならないもののようです。やめるのであれば、決断は早い方がいいです。自らの半生をかけて築き上げた謂わば人生の作品を、そう簡単に安売りする必要なんて全くないわけですから。
しかし一方で、うまい具合に日本の空いたラインを使ったり、現地企業とタイアップして現地化を進めたりして、廉価版の生産によって中国マーケットへの進出に成功した企業もあります。
日本側から見れば廉価版でも、中国では十分に高品質なものとして通用するケースもあるわけですから、中国側からみればそもそもの製品が過剰品質だったということになります。
もちろん、廉価版を生産するまでの過程も、そこから中国マーケットに浸透させるまでの過程も、簡単なものではありません。生産しかり、販売しかり、生産現場での気の遠くなるような試行錯誤を経験したり、経営者自らが中国事業にどっぷり入り込まざるをえなかったり、或いは信頼できるパートナー探しに奔走したりと、成功までには相当な苦労を余儀なくされます。
そんな皆さんの事例を見るにつけ、我々のスタンダードが実は過剰品質なのではないかと疑ってみることの重要性を、私は強く感じます。
日本人はやはり「真面目」な人たちですから・・・。
その「真面目」さが中国では通用しないケースが多々あるという視点を持っておかないと、中国マーケットでの成功は無いような気がしています。
日本にとっての「最高」は、中国では「最高ではない」のかもしれない。
常州市の中小企業経営者が「そこまでの設備」を必要とする日は訪れるかもしれないし、訪れないかもしれない。
今後の対中ビジネスにおいて、当たり前のことですが、独りよがりになってはいないか、日本での常識にとらわれてはいないか、そんなことを常に自問し続けることが成功のための大きなポイントになってくるのではないでしょうか。
対中ビジネスに限らず、これが意外と難しいのですが・・・。 |