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直接貿易ABC(第2回)
飯田 博 記事更新日.08.02.06
(財)海外職業訓練協会 国際アドバイザー
(有)七栗村 代表取締役
■PROFILE
1939年 三重県生まれ。
総合商社兼松で長年にわたり貿易実務に従事す。
また欧州駐在をふくめ、海外経験を積む。
近年は、アジアを中心とする国際物流の場で活躍。
2004年より、三重県津市在住。

連絡先
有限会社 七栗村
三重県津市庄田町1208番地
TEL/FAX: 059-255-4833
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前回は貿易ということと、直接貿易の全般的なことについてお話をしました。
今回は実際に貿易を行うに当たってのポイント、貿易実務について述べます。
4.貿易のしくみ
1)市場調査
輸出は売込みで汗をかき、苦労します。輸入は買付けに情報を集め、工夫をこらします。

輸出では、自社の商品を売込もうとする海外市場をまず知らなければなりません。見本の配布、見本市への出展、相手国に足を運ぶことを重ねて市場を知り、取引相手を絞込み、商談につなげます。相手国の市場の特性を読み取ることは大切で、たとえば製品の色ですが、中国では赤や金が喜ばれる、イスラム圏では緑、青などですが、相手国の常識を知らずに色付けをすると大変なことになります。

市場の開拓には、海外見本市を利用することがよく行われています。このような場では、自社製品の売り込みだけでなく、業界全体のトレンドが一度でつかめるし便利な機会です。世界中で多くの見本市がひらかれており、インターネットで検索できるし、日本貿易振興機構(JETRO)でも専門の部署をもうけて対応しています。見本市への出品は、ただサンプル展示を行って反応をみるということではなく、海外ではバイヤーは買付け予算をもって見本市に来ます。魅力ある商品が見つかれば、すぐ商談となります。したがって、価格、数量、納期などの条件をあらかじめ整えて、見本市に臨むことが大切です。日本流の「検討しまして後ほど」、「帰国後の返事」では、商機をのがします。国際ビジネスでは、何事も即時即応です。

市場調査は、一般的には在日の外国公館、在日貿易事務所、JETRO,銀行関係、業界団体などひろく利用できるところに問い合わせることから始まります。取引相手の選択も、JETROなど貿易促進機関、海外企業ダイレクトリー、見本市、商談会、銀行の紹介などから始めることができます。また信用調査としては、ダン・レポートなど信用調査機関、銀行筋への問い合わせなどがあります。しかし、基本的には自分で相手国市場に足を運び、取引相手のところを訪問し面談するという現場主義がもっとも大切です。そのために貿易では、海外出張費用というコストは必要経費です。

2)取引交渉、契約
@ 引合い(Inquiry)
取引は、引合い(Inquiry)から始まります。売主(Se11er)から買主(Buyer)ヘカタログ、商品見本、価格表(Price List)などを提示して売り込みを行います。買いの引合い(Inquiry)が取り付けられれば、見積書(Quotation)の提示となり商談が進んでゆきます。

A オフアー(0ffer)
商品の明細、規格、数量、単価、金額、納期、受渡し条件、支払い条件など商談の細目がまとまると、正式な売り申込み書(0ffer Sheet)を呈示します。貿易商談の基本文書はこの0ffer Sheetとなり、重要なものです。いまでは、たいていはメールのやり取りですが、メールの手軽さが命取りになることがあるので、オファーメールは間違いのないように、発信する前に確認、確認、気をつけましよう。

またオファーには、かならず有効期限を入れておかねばなりません。期限のないオファーをだすといつまでも有効とみなされ、忘れていた頃に注文がきたが、原材料が値上がりしており大損ということがあります。

また、売手のオファーにたいし、買手から数量、納期などの条件変更や指値(Bid)があり、それを受けて再度オファーをだすことをカウンター・オファー(Counter 0ffer)といいます。

B 承諾(Acceptance)
オファーやカウンター・オファーのやり取りの結果が承諾(Accept)されて、契約成立です。取引交渉の最後に待たれる言葉が、“Accepted"や“Accept"です。しかし、"Accepting your offer..."と来たら気をつけることです、「貴方のオファーを受ける用意がある...」といっているだけで、受けた(Accepted)わけではありません。

C 契約
そして、商談が成立した証として契約書を交わします。売主が用意する書式として、売約書(Sales Note,Confirmation of Sale),買主側が用意するものとして買約書(Purchase Note)があります。どちらを使うのかという規則はありません、売手と買手の力関係などで決まります。

記載される内容は、表面は大体はこれまで交渉してきた商談の結果ですが、裏面には一般諸条件(General Terms & Conditions)で印刷されています。

クレームの処理のこと、不可抗力条項、仲裁について、準拠法(どの国の法律に従うか)などですが、当然書式を用意した側に有利なようになっています。

このような時に、貿易を開始したばかりでまだ会杜の書式はありませんということでは、土俵にもあがれないわけです。貿易はモノとカネのやりとりと同時にカミ(書類、文書)のやりとりです。したがって、貿易を始めるにあたっては、英文レター用紙、見積書、売買契約書、インボイス、パッキング・リストなど自杜の書式の準備も大事なことです。

3)貿易にかかわる法律、規制
貿易という事業を営むこと自体には、許認可は要しません。銀行業や証券業のような許認可事業ではないわけです。

しかし、モノの国際的な動きである貿易には様々な法律の関与、規制、国際的取決めがあり、また各国の国内規制があります。貿易に関する法律や規制をまず知り、事前確認することは、とても大事でありおろそかにできないことです。
貿易にかかわる主な法律、規制は下記のようになっています。

@ 輸出入に関する基本的な法律
     外国為替及び外国貿易法(外為法)、輸出入取引法、
A 通関に関する法律
     関税法、関税定率法、関税暫定措置法
B その他の輸出入管理に関する法律
     植物防疫法、家畜伝染病予防法、薬事法、食品衛生法、種苗法、
     化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、文化財保護法など
C 国際条約や協定など
     GATT,WTO条約、IMF協定など国際包括取決め
     ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の保護)、
     モントリオール議定書(オゾン層の保護)、バーゼル条約(有害廃棄物の国外流出防止)など

輸出では、外為法により武器・大量破壊兵器の関連部品や関連汎用品等は全地域への輸出が規制されています。この安全保障貿易管理が輸出貿易管理の主たるものです。貿易管理令に定められた貨物(管理令別表1)や外国為替令別表に定められた技術による「リスト規制」と、それ以外の品目、技術でも大量兵器の開発などに使われるおそれのあるものを管理する「キャッチオール規制」があります。ほとんどの一般産業品目を規制していることから、キャッチオール規制といわれています。

輸入貿易管理については、外為法により特定の貨物、たとえばタラコ、のりなどが「非自由化品目」として輸入割り当て品目(IQ品目)となっており、また北朝鮮からの全貨物は輸入承認を要するなど、輸入公表に従い、承認、確認を要する貨物が定められています。

輸入貨物はワシントン条約など国際条約による規制の対象になるものも多く、また上記Bのその他の輸出入管理に関する法律、国内法で規制されるものが多くあるので、個別に輸入品目に即しての事前確認が欠かせません。

4) 貿易条件(インコタームズ)
つぎに、売手と買手間の取引、代金決済に関する条件、決め事は貿易商談を進める上で重要な事項です。取引条件には、モノの移動とリスクの移転にかかわる貿易条件とカネの支払いにかかわる決済条件があります。この2つの条件は、貿易取引を構成する車の両輪のようなものであり、また貿易というものを料理するナイフとフォークのようなものともいえます。このナイフとフォークの使い方を知らなければ、怪我をしたり消化不良を起こすことになります。

貿易条件(Trade Terms)は、受渡し条件ともいわれます。受渡しの時点、リスクの移転について国により解釈の違いがあると困るので、国際的に共通の了解事項や合意事項を国際商業会議所(ICC)がとりまとめて、インコタームズ(INCOTEMRS)として貿易条件をまとめています。

@FOB,C&F,CIF
海上輸送が在来貨物船の時代にながらく使われてきたのが、FOB,C&F,CIF条件で、代表的な貿易条件として今日でもなおなじみ深いものです。

FOB=Free on Board 本船渡し
(工場渡し価格に積出港で船積するまでの費用を加算した価格)

C&F=Cost and Freight 運賃込み
(FOBに揚港までの海上運賃を加算した価格)

CIF=Cost,Insurance and Freight 運賃保険料込み
(C&Fに海上保険料を加算した価格)

売手から買手へのリスクの移転については、この3つの条件はすべて積地条件といって、積港で船に積んだ時点でリスクは買手に移転します。たとえば、CIF条件で海上輸送中に事故があり貨物が損傷を受けた場合に、買手は売手にクレームしても筋違いです。船積が完了した時点でリスクは買手に移っており、買手は売手から買い取った船荷証券、保険証券をもって船会杜、保険会杜にクレーム手続きをとらなければなりません。

Aインコタームズ2000
インコタームズは、貿易取引の変化に合わせて改訂を重ね、また受渡しの実情も、在来船からコンテナ船や航空機の利用拡大により大きくかわりました。これらを踏まえて改訂された「インコタームズ2000」が、現在もっともひろ く利用されている貿易条件です。(別表参照)

インコタームズ2000は、積地の工場渡し条件から揚地の指定場所までの持ち込み渡しまでの13の貿易条件があります。それらは、Eグループ(出荷条件)、Fグループ(主要輸送費抜き条件)、Cグループ(主要輸送費込み条件)、Dグループ(到着条件)の4つの基本パターンに分類されます。リスクの移転については、E,F,Cグループは積地条件です。Dグループは揚地条件で、売手は貨物の到着までの責任を負います。

インコタームズ2000における貿易条件
Eグループ
(出荷条件)
EXW Ex Works 工場渡条件
Fグループ
(主要輸送費抜き条件)
FCA
FAS
FOB
Free Carrier
Free Alongside Ship
Free On Board
運送人渡条件
船側渡条件
本船渡条件
Cグループ
(主要輸送費込条件)
CFR
CIF
CPT
CIP
Cost and Freight
Cost,Insurance and Freight
Carriage Paid To
Carriage and Insurance Paid To
運賃込条件
運賃保険料込条件
輸送費込条件
輸送費保険料込条件
Dグループ
(到着条件)
DAF
DES
DEQ
DDU
DDP
Delivered At Frontier
Delivered Ex Ship
Delivered Ex Quay
Delivered Duty Unpaid
Delivered Duty Paid
国境持込渡条件
本船持込渡条件
埠頭持込渡条件
関税抜き持込渡条件
関税込持込渡条件
5) 決済条件
商売は、代金の決済がなされてはじめて完了するわけです。しかし、貿易取引では売手と買手はお互いに離れていて日常の交流も少ないし、信用に不安を覚える場合も少なからず、また相手国の動乱などにより送金不能の事態も起こりかねず、代金回収、円滑な決済はもっとも留意しなければならないことです。それには、どのような決済条件を選ぶかは大切なことで、まず様々な決済条件の内容を知らなければなりません。

決済条件を大きく分けると下記の3種類になります。

@送金、クレジットカードなどによる決済
もっともよく行われるのは、銀行経由の海外送金で、電信送金(Te1egraphic Transfer=T/T送金)が通常です。他に普通送金(Mail Transfer)や送金小切手(Demand Draft)があります。

送金決済の場合、送金の時期により前払い(Advance Payment)と後払い(Deferred Payment)条件があります。輸出業者には、船積み前に代金を受け取れる前払いが有利になり、輸入業者には、貨物が到着して検品後に支払う後払いが有利となります。

個人輸入や少額取引などでは、クレジットカードによる決済もよく行われています。

A信用状つき荷為替手形による決済
銀行が売手と買手の間に立って、買手の依頼により信用状(L/C)を発行して、売手の信用状に合致した船積書類の呈示と引き換えに代金の支払いを保証する決済条件です。海外取引においてこのような銀行が介在する信用保証、決済のシステムがなければ、貿易は拡大しなかったともいえます。信用状取引は、多様な決済手段がある今日でも、貿易取引の基本をなすものです。また信用状取引に関する国際的なルールとして、国際商業会議所(ICC)が「信用状統一規則」(UPC)を制定して、解釈などの統一をはかっています。

B信用状のない荷為替手形による決済
売手と買手との間に信頼関係が構築されれば、信用状なしの荷為替手形決済を行うことも普通に行われています。この場合は、銀行の支払い保証はなく、売手が呈示した荷為替手形は、買手から代金を回収できれば支払う「取り立て扱い」が原則です。

買手が輸入地の銀行で代金を支払うのと引き換えに船積書類を受け取る決済条件をD/P(Documents against Payment)といいます。一定の期間をおいた後に支払う約束で船積書類を受け取る条件をD/A(Documents against Acceptance)といいます。

なお、貿易代金の決済に関する保険としては、貿易保険があります。一部を除き民間の損害保険会杜では対応できかねるリスクがあり、公的な貿易保険制度が独立行政法人「日本貿易保険」(NEXI)により運営されています。

6) 通貨、為替
通常の輸出では、国内製造費用およびその他の国内費用はすべて円コストであり、円建て輸出(FOB)であれば為替リスクは起こらないことになりますが、ほとんどの場合の決済通貨は米ドルやユーロとなります。また、輸入の場合は、商品の仕入れ価格は外貨建てとなり、海上運賃、保険料も外貨が普通です。したがって、貿易には為替リスクは避けて通れないものです。

日本が1米ドル360円の固定相場から決別し、変動相場に移行して35年になります。その間の相場の変動は激しく、たとえば円高のピーク1995年4月の1米ドル=80円は、約3年半後の1998年8月には147円と84%も円安になっています。このような激しい相場変動に対処して貿易での利益を確保するためには、為替リスクの予防に知恵をしぼり、相場への目配りを怠ってはなりません。為替でのロスは、製造現場でのコストダウンや販売努力では容易にリカバーできないほど大きく、貿易には通貨、為替相場のリスクがあるということが、国内取引との決定的な違いです。

為替相場の変動による損失を防ぐ為替リスク対策の選択肢は、数多くありませんが、下記します。

@為替予約
輸出も輸入も成約から貨物が船積みされるまで、代金が決済されるまでに時間がかかります。その間の為替変動のリスクを為替先物予約をして防ぎ、契約時の採算を確保します。為替予約がもっとも一般的にとられる手段です。

A円建て取引
円建てが通れば、為替リスクは相手側に移るわけです。売手と買手の力関係いかんによります。したがって、常に期待できるわけではありません。

Bその他
代金決済を早めたり(Leads)遅らせたり(Lags)することで為替リスクを軽減させるリーズ・アンド・ラグズ、外貨建ての債権と債務を相殺すること(マリー)、取引企業間で輸出入資金を差額決済(ネッティング)などの方法もとられます。

以上、直接に貿易を行うに当たってのポイントを2回にわたり述べました。これは概論にすぎず、現実にはさまざまなことにぶつかりながら進まれることと思います。各論が実際には大事なわけですが、個別に貿易相談も行っていますので、ご利用ください。

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